2 京都編

 



「えー、2回目を迎えました、【お笑い!!quiz王】、前回は、全問正解者が出ませんでしたので、今回はなんと、賞金が20万円になります。おいしい話ですね。

 えー、わたくし、司会進行を務めさせて頂きます、渡辺ヒロミと申します。よろしくお願いします」


 パチパチ……(見物人の拍手)


「ご存じの通り、飛び入り参加のクイズ番組ですので、どんなハプニングが起こるか分かりません。

 今回も、どんな珍解答が出るか楽しみですねっ!

 本日は祇園ぎおんで収録しています。チャレンジャーはズバリ、舞妓まいこさんです。お着物がお似合いですね」


「おおきに」


「お名前は?」


冷奴ひややっこ言います」


「これからの季節にピッタリのお名前ですね」


「おおきに」


「失礼ですが、おいくつで?」


「18どす」


「18歳と言うことです。前回のおっさんとは大違いですね」


 ハハハ……(見物人の笑い)


「どうして、舞妓さんになろうと思われたんですか?」


「雑誌で見て、チョー! きれいやったさかい」


「……なるほど」


 押しっ! (ADの声)


「では、冷奴さんへの問題です。


 第1問。冷奴さんはキレイな髪をしてますが、髪を英語で言うと?」






「……どっちのカミやろ……ペーパー?」


「ブー! 残念! ヘア。紙と間違えたのかな?」


「なんや、髪のほうやったん? 悔しいわ」


「第2問。『ハムレット』での、ジュリアス・シーザーの有名なせりふ。何は投げられた?」






「……ゲタ?」


「ブー! 残念! さい。どうして下駄だと?」


「ゲタを投げてな、何かを占う話をおばあちゃんから聞いたことあったさかい」


「……ははーん。たぶん、天気ですね。片方の履いてる下駄を投げて、地面に落ちた下駄が表なら晴れで、裏なら雨という、明日の天気を占う奴だ。折角、いい話をおばあちゃんから聞いたのにね? 残念。それでは、


 第3問。五里霧中ごりむちゅうの類語になる四字熟語は、何もさく?」






「桜? ……桜も咲く」


「ブー! 残念! 暗中模索あんちゅうもさくの暗中でした」


「アンチュウって、どんな花どす?」


「花の名前じゃなくて、四字熟語どす」


 ハハハ……(見物人の笑い)


「もさくって言うさかい、花も咲くやと思たわ」


「……ウッホン! 日本語は奥が深いですね。続いて、


 第4問です。ことわざ。キュウソ、何を噛む?」






「パーソ」


「ブー! 残念! 猫です。麻雀と間違えたのかな?」


「そうどす。覚えたてなんどす。キュウソ言うたから、ソーズが頭に浮かんだんどす」


「ソーズらか? なんちゃって」


 ハハハ……(見物人の笑い)


「ウッホン! えー、


 第5問です。早口言葉。隣の客はよく、何食う客だ?」






「ひじてつ!」


「ブー! 残念! 柿でした。どうして肘鉄だと?」


「うちの隣に座りはるお客はんは、皆はん、いけずやさかい、いつもひじてつを食らわすんどす」


「……なるほど。ウッホン! ここで中間発表です。うむ……まだ、正解はありませんが、惜しい答えばかりでしたね。

 では、ここで、チョー簡単な問題を大サービスしちゃいましょう。冷奴さん、頑張ってくださいね」


「へぇ、おおきに」


「第6問です。怖いものの順番で、地震、雷、火事とくれば、次は?」






「オバケ!」


「ブー! 残念! オヤジでした。冷奴さんは、お化けが怖いの?」


「へぇー。地震よりオバケが怖いわ」


「怖いときはご一報ください。すぐに駆けつけますので。ウッホン!」


「おおきに」


「第7問です。馬はホース。では、牛は?」






「ビーフ!」


「ブー! 残念! カウ、またはオックス。牛肉と間違えたのかな?」


「へぇ。牛はビーフや思うとったわ」


「冷奴さん、ほら、カウボーイって言うでしょう?」


「……牛少年って言う意味どすか?」


「ウッホン! ……ジェネレーションギャップを痛感する今日この頃です。では、


 第8問です。有耶無耶うやむやと似たような意味の四字熟語。アイマイ何?」






「ミー」


「ブー! 残念。曖昧模糊あいまいもこの模糊でした」


「なんどす、モコって」


「うむ……。モコモコ、なんちゃって。ウッホン!


 第9問です。“のれんに腕押し”と似たような意味のことわざで、ヌカに何?」






「……ミソ?」


「ブー! 残念。釘。どうして、味噌だと思ったの?」


「おばあちゃんが言うてはった。ヌカミソ臭そうなったら、あかんどすえって」


「うむ……。いいおばあちゃんですね。冷奴さんは、おばあちゃん子なの?」


「へぇ。おばあちゃん、大好きやわ」


「おばあちゃんは幸せ者ですね、冷奴さんにそんなに好かれて。ウッホン!」


「えらいややこしおして、分からへんのばっかりやわ」


「あれっ、ちょっとお冠かな? じゃ、最後にめちゃめちゃ簡単な問題で、機嫌を直してもらいましょうね。


 第10問は、なぞなぞです。赤信号なのに、渡っちゃう虫は?」






「アッ、これは簡単やわ。絶対、テントウムシやわ!」


「ブー! 残念! 信号無視。急いでて、転倒するから転倒虫? プッ」


「ムッ」


「……トホホ、横を向かれてしまいました」


 ハハハ……(見物人の笑い)


「えー、残念ながら、今回も正解がありませんでしたので、20万円は次回に加算されます。では、次回をお楽しみに!」


 パチパチ……(見物人の拍手)


「冷奴さん、今度飲みに行きますから」(こそこそ話)


「えー! ほんまに?」


「ほんまに。これ、参加賞のポケットティッシュです。底に私のメアド付きの名刺が入ってますので、間違って捨てないでくださいよ」(こそこそ話)


「ほな、うちも。これ、名刺どす。待ってますさかいね。おいでやして、おくれやして、おくれやす」


「必ず、行くからね」(こそこそ話)


「ほな、待ってますよってに」


 ポックリ! ポックリ! (歩く冷奴のポックリの音)


「クッ……かわいいな~」


 アッ! こ、声、入ってます!(慌てるADの声)


「ゲッ! ピンマイク外すの忘れてた!」


 ハッハッハッ……(見物人の笑い)






―OK!―

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