第134話 着エロ

イキリ君はまんまと僕の口車に乗っている。


しかし、今までの人生でここまで「口車」が上手く作用したことなんてなかったな。僕は本来はコミュ障気味だから、相手の心理をコントロールするとか上級向けのスキルを扱うなど夢の夢だったからな。

もしくは、天秤にかけるモノがはした金やチンケなプライドとかではなく「命」であるならば、僕程度のハッタリでもそれなりに効果があるということだろうか。実際に何人か殺してるのも説得力があるのかもしれないが。


まあそれはさておき、イキリ君を拘束してお話を聞かなければならない。最後まで油断せずにハッタリをかまし続けなければならない。


「……よし。今から交渉役をひとり、そちらに向かわせる」


「交渉役、だって?」


「ああ、そうだ」


ハッタリでは、こちらは複数人いることになっている。

本当に複数人いるならば、一斉に姿を見せたほうが心理的効果は高いのであろうが、実際にはこちらは僕しかいない。

交渉人は苦肉の策として思いついたものであるが、考えてみればこれは意外と良いアイデアだと思う。もちろん、僕しかいないことを誤魔化すということもあるが、万が一イキリ君の仲間がまだどこかで潜んでいた場合の牽制にもなるからだ。


「あ、交渉役を人質にとか、悪あがきはやめてくれよ。どんなことがあっても、俺たちはお前の要求を聞くつもりはないから」


「……」


「お前が何かしでかしたら、交渉役に当たることになったとしても、容赦なく撃つ」


「……わかってる」


……ふう。

過剰かもしれないが、これだけ念押ししておけば大丈夫と思いたい。

イキリ君本人の動きはもちろん、伏兵がまだいたとしても動きを封じることができるはずだ。こちらの人数と位置を把握できていないうちに動き、位置を知らせることは自殺行為であるからだ。まあ、状況やイキリ君の態度からして伏兵の可能性は限りなく無いとは思っているが、いくら超有利な状況とは言え、僕だって「命」をベットしてるんだ。リスクはできるだけ減らしておきたいのだ。


そして、こちらも忘れてはいけないな。


「あー、そこのお嬢ちゃん。君も動かないでくれると助かるのだが」


おっぱいちゃんである。


彼女は突然の展開に理解が追い付いていなかったのであろう。

レイプ未遂現場から一歩も動いてなかったのだが、ここに来て我に返ったのか、いそいそと動きが見られたのだ。

隠していた武器とかで行動に出られることを考えれば本来はキツく忠告するところであるのだろうが……うん、まあいい。

パンツくらい履かせてやるのが武士の情けでろう。


おっぱいちゃんは立ち上がり、ゆっくりと手を挙げた。

よし。いい子だ。

皮ジャンの前は開けっ放しなのがいい。トップは隠れて見えないが、逆にソレがまたエロいのだ。わかってるじゃないか。


……なんて、言ってる場合ではないな。


「ゴホン。宜しい。では、動かず、少し待ってろ」


行動開始。

僕はライフルを脇に抱えると階段に向かい、そして小走りで降りるのであった。

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