第62話 コミュニティについて
日本全国には、何十もの生存者コミュニティが存在するらしい。
今日は3月25日。
”あの日”から4カ月弱が経過し、名古屋は春の片鱗が見受けられるようになってきた。そろそろ桜も花を咲かせることであろう。
こんな陽気になってきて人も活動的になるからであろうか。全国に散見された生存者コミュニティは、合流を繰り返してより大きなコミュニティが形成されるようになってきたらしい。
ただ、それでもいちばん大きなコミュニティでも2万人程度。
分かっているだけで、日本全国の生存者の合計は50万人程度ということらしい。
1億3,000万人いた人口は、”あの日”以降二百分の一以下まで落ち込んだということか。数的には”全滅”と言っても差し支えないレベルである。とんでもないな。
分かっているだけで、海外も同様な状態らしい。やはり、地球規模の災害であったようだ。
そうでなければ、救援隊とか派遣されてきてもおかしくないし、また救援隊とは名ばかりの侵略行為が行われたであろうことは容易に想像がつくからな。
各国の生存者コミュニティとは連絡が取りあえる状態ではあるそうなのだが、世界レベルで復興協力ができるのはまだまだ先のことのようだ。各国……と言うより各人、目の前の対応で精一杯なのであろう。
そうそう、僕にとって朗報があった。
例の富山コミュニティ発のラジオ放送なんだけど、富山コミュニティ内の生存者の名前を延々と並べていく回があったのだが、そこで富山に住んでいた弟と甥っ子の名前が続けて発表されていたのだ。家族単位で発表しているとのことだったので、親子揃って同姓同名とかの可能性は低いであろう。ようするに、ほぼ本人たちに違いあるまい。あまり交流がある兄弟ではなかったが、身内が生き残っているというのは非常に喜ばしいことだと思ったよ。
いつか、再開できたらいいと思う。……こちらが生きてるということを伝える術がないところがもどかしいところだが。
そう、他のコーナーでも述べてたけど、生存者は不思議なことに家族単位で生き残ってる場合が多いらしい。逆に全滅してる家族は全滅してるし、それが圧倒的多数らしいのだ。
これについては様々な説が出ているらしいけど、まだはっきりした理由は分からないらしい。素人考えだけど、遺伝的な問題なんだろうか。
なお、名古屋からいちばん近い大規模コミュニティは三重県の端の離島だった。
そのコミュニティは情報発信してないらしく、無線でいくつかのコミュニティと情報交換している感じらしい。その情報では生存者の受け入れは普通に行っているそうである。将来的にいちばん現実的な移住先かもしれない。
ちなみに、同様に離島でコミュニティを形成しているパターンはそこそこあるらしい。理由は、離島のほうがゾンビ駆除や死体処理に都合がよいってところだろうな。
外から野良ゾンビが入ってくることもないし、食料事情として海産物も手に入るだろう。
……でも、直線距離で200㎞弱か。
次に近いコミュニティは富山で250㎞だから、迷うものはある。
どちらにせよ、半径数百mと一部の経路のみしか安全確保できていない僕において、いまはまだ絶望的な距離であることには変わりはない。
最近はゾンビを見かけることは稀なので忘れそうになるのだが、ちょっとでも縄張りを出れば奴らはウジャウジャといるのは間違いないのだ。
現在、コミュニティ同士の物理的な交流はほぼ無いとのことらしい。
ただ、コミュニティを繋ぐ主要幹線道路の確保はもう少し落ち着いたら始まるとの情報もあったので、それから行動したほうが間違いはなさそうだ。
「……はあ。いったい何時になることやら」
まだ僕の人生の先には希望はあった。
だが、それ故に自分の力ではどうにもできそうもない事がもどかしく感じるのも事実であった。
【作者より】
ここで第二章は終わりになります。如何でしたでしょうか。
最近のトレンドではないジャンルなのか(作者がショボいのか)、
なかなか苦戦しています(笑
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