第61話 ぞんびのせいたい
ラジオでは、ゾンビの生態や昏睡状態の感染者たちのことについても述べられていた。
おもしろいのは、「ゾンビ」だの「感染者」だの「生存者」だのはゾンビ映画あるある表現で僕が勝手に呼んでいただけにも拘わらず、ラジオ上でもさも当たり前のようにそう呼ばれていたことだった。
それほどまで今回の事変はゾンビ映画っぽく、そしてゾンビ文化は我々に広く浸透していたということかもしれない。
意思疎通には統一された認識というものは大切なので、これはこれで良かったのかな?
ラジオの中の人が認識しているゾンビの特徴や生態については、目が赤い、血色が悪い、動きは緩慢、知能は低い、人を含む動物を襲う、中でも人は積極的に襲う、なんでも食べる、排泄する(排泄物の臭いがキツいところは注意)等々の僕も把握している情報も多かったが、知らなかったことで比較的衝撃的だったものを紹介しておこう。
●昏睡状態の感染者や動物について
ゾンビは人間の昏睡状態の感染者は生きてるうちは襲わない。ただし、犬や猫等は見つけ次第エサになるそうだ。
これは言われてみればそんな傾向はあるな、と気付かされた。何でだろうな?と思ったけど、その理由は次で理解できた。
●ゾンビに噛まれると大変!
ゾンビは動物なら何でも襲うのは知っていたが、僕はそれを食料を得る為と思っていた。それは動物に限定すれば間違いではないらしいが、人間が対象の場合はそうではないようだ。
ゾンビは生存者に噛みつくと、例え生存者が逃げれない状態だったとしてもそれ以上の追撃はしないそうだ。
噛まれた生存者というと、普通は数分~数十分以内には昏睡状態に陥るらしい。そして数時間~二日以内に目覚めればおめでとう、君もゾンビの仲間入りということである。
そのまま目覚めない場合、他の昏睡状態の感染者とは違って普通に数日内に衰弱死するらしい。そうなれば普通にゾンビの餌になって終わりとのことだ。
以上の習性から、ゾンビは食料目的ではなく仲間を増やすことを第一の目的として生存者を襲うという推察ができるということだ。
ギャーッ! まんまゾンビやんけ! おぞましい!
しかしながら、統計的に2割程度の者は昏睡状態にもゾンビにならずに済むということであった。その理由は耐性なのか相性なのか、何にせよ今のところ全く分からないとのこと。
ただ、ゾンビにならなくても噛み跡はゴッソリと肉を持っていかれてる場合が多いらしく、失血死や感染症で亡くなるパターンもあるので生存率は更に下がるし、生き残ったとしても不自由な生活を強いられる可能性があるということ。
要するに、ゾンビに噛まれたらほぼ未来は無いということだ。
もし僕がゾンビに噛まれた場合を想定しておかなければならないかもな。
一か八かゾンビにならないことに賭けて足掻くのか、可能性を諦めて人間であるうちに自決するのか。
まあ、いざとなったら自決なんてできないかもな。
とりあえずは茶々丸を逃がさなければならないだろう。部屋買いのぬるま湯生活してきた子だから心配だけど、餓死とかゾンビ化した僕に食べられるよりはマシだろうから。
ただ、逃がすまで意識が持てば良いんだけど……。
何にせよ、ゾンビに噛まれても多少の猶予はあるということが分かっただけでも収穫か。
●長距離移動を行うゾンビあり
はぐれゾンビの一種なのだろうか。
単身赴任していた夫が数カ月ぶりにゾンビになって帰ってきた!とかあるらしい。
このあたりはラジオの主と僕の推測はほぼ同じのようで、帰巣本能みたいなものが働いているのでは?と考えている。ゾンビ各個人において「巣」と認識している場所が実家なのか、現状の住処なのか、職場なのかとかによって行動が異なるのではないか、ということだ。
まあ実際はどうであれ、安全と思われる場所でもいつどこでゾンビに出くわすか分からないから注意ってことだである。
●都心部ほど生存者は少なく、ゾンビは多い
これは、人口密度が高いはずの都心に生存者コミュニティが無いことや、実際にドローン等で偵察活動をした自衛隊員等からの情報のようだ。
各生存者コミュニティの地域によっても割合は多少変わるようだが、だいたいがこの傾向にあるらしい。
この情報によれば、名古屋には生存者コミュニティが、少なくとも他のコミュニティと連絡が取りあえるレベルのものは存在しないということだ。
実際に僕が活動した範囲では生存者の痕跡は無かったので覚悟はしていたが、はっきり突きつけられると頭が痛い。
何故神さまは僕をハードモードの地に置き去りにしたのだろうか。……なんて運命を呪いかけたが、よく考えてみれば僕は「例外」と言える存在なのである。運命の良し悪しで言えば、幸運だったということかもしれない。
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