秘か浜行きのバス

Plane Psycho

バス

日が暮れ夕方になり始めていました。雲が薄く空を包む様にかかりながら、若い夫婦が仲良く歩いていました。

「今日は楽しかったわ。もう日が暮れ始めたし、帰ろっか。」

「そうだな、うみで夕日でも見ていくか。」

そう言うと、二人はバス停まで歩きました。すると、右から古そうなボンネットバスが走ってきました。行き先は「秘か浜」と書いてありました。

「あれ、古くない? 大丈夫なの?」

「大丈夫だ、行き先が浜なんだから海に行ける。ほら、昔のバスなんかめったに走ってないんだし。」

「そうかしら秘か浜なんて聞いたこと無いし、秘かの時点で、怪しくない?グーグルで調べたけどないわよ。おとぎばなしじゃないんだし、、、」

「ま、いいじゃないか。冒険だと思えば。二人いれば大丈夫。」

そう言いながら、彼はうれしそうにバスにかけ乗りました。よく見ると、古びたバスは、所々塗装がはげ、錆びていました。いつもの路線の色ではなく、単なる銀色のバスでした。

「小針でーす。次は、古町に止まりまーす。」

「あの、このバス、どこの会社のバスですか?」

嫁さんは言いました。

「新潟交通ですよ。W1系統の臨時バスです。乗りますか?旦那さんはもう乗ってますよ?」

嫁さんは心配そうにバスに乗りました。このバスの運転手は何かがおかしいのです。優しい人には聞こえるんですが、違和感があるんです。

「W1 秘か浜行き発車しまーす。」

バスはそのまま2,3時間走ってました。二人が寝てる間に、いつの間にか田んぼが広がっている農道を走ってました。最後の街は1時間ほど前に通り過ぎてました。

「このバス大丈夫、あなた?さっきから田んぼしか走ってないわよ。海なんて行かないじゃないの。暗いですし。」

「そうだな。流石に遠すぎる。次で降ろしてもらおう。」

「運ちゃん、次のバス停あとどれ位でつく?」

「あと、2,30分程で着きますよ。」

「なんかそこにあるんか?旅館や食堂ぐらいは。あと、なんていうところだ?」

「弥彦神社です。ちょっとした街で、家が数件ありますけど、降りますか?」

嫁さんはなにかおかしいと気づきました。意味ありげに含み笑いをしたような気がしたのです。

「折り返しのバスはあるんですか?」

「このバスが最後です。帰りたいのであれば一泊どこかで泊まるか、タクシーしか無いです。あ、でも電車があったと思います。そこから新潟駅に帰れると思いますよ。」

「それでしたら、弥彦神社で降ろして下さい。」

「はい、分かりました。それとももう一つ先でしたらもっと大きい街につきますよ。」「大丈夫です! 降ろして下さい!」

「分かりました。」

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秘か浜行きのバス Plane Psycho @planepsycho

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