第2話 神の宮殿

 神の宮殿はアポロンの丘と呼ばれる三方が断崖の丘のうえに建っている.

 人々は神の宮殿を遺跡のようなものと思っているが 千数百年まえ忽然と現れたと伝えられている.

 外壁は光輝き石なのか金属なのかわからなかったが長い年月にも耐えて少しも劣化しない.

 入り口があり扉がないように見えるが中に入ると出られなくなるとおもわれている.

 いつしか神の宮殿と呼ばれるようになった.

 ゼルバはそっと姫の肩に手をおいた.

 皇帝の妃は貴族の家柄のもっとも美しい娘が選ばれることになっている.

 結局それが公明正大で貴族の勢力争いを抑えることにもなる.

 このため帝家はきわめて美族の家でもあったが スウィイト皇女はそのなかでもとりわけ美しい娘であった.あと少しで十九歳になる.

 ゼルバはディバイン家の惣領でひとり息子であった.

 天才軍学者の誉れ高く父は彼が二十歳のとき家督を譲り妻と穏やかな隠居暮らしをしていた.

 いまゼルバは二十二歳になる.


 ディバイン家の祖の天衣無縫の御子は自ら皇族を離れ野にくだって自身の戦場の経験に基づいて軍学を研究した.

 兄宮は五十一代皇帝に即位すると天衣無縫の御子 そのときオリヤ ディバインと名のり市中で軍学者としての生活をしていた弟宮に公爵の爵位をおくり皇帝自らディバイン流軍学の門下となり弟を師として仰ぎ終生弟に師の礼をとった.

 歴代の皇帝もみなこれに習ったため ディバイン流の軍学を御流儀と呼ぶようになった.

 エブル公爵家の祖は 豪農フィドル家だった.

 フィドル家は荘園開発にたけて大規模で優良な荘園を多く所有していた.

 宮家に荘園を盛んに寄進してついには宮が降嫁するに至り宮廷の費えも長年にわたり多く負担しているため宮家の口添えもあって公爵家となった.

 財力にものいわせて私兵を多く抱え正規の帝国軍の騎士のなかにはエブル公爵に借財のある者もおおい.

 近衛にも私費で兵を提供していた.

 ディバイン家は学者の家として私兵を抱えることはしていない.

 軍学者として領地経営はしっかりとした考えを持っておこなっていたのでディバイン家は豊かであった.

 食糧生産ほ重用なこととして領内の荘園開発もおこなったが領民に労役や無理な労働を強いるようなことはなく代価をもってした.

 税も薄くして領民はみな豊かでディバイン家を敬愛していた.


 白銀のフリルのブラウスに紺色のサテンで銀の刺繍の入ったベストにおなじ紺色のサテンのジョッパアズ白のブウツ ゼルバの母が乗馬のときに好んで着たものだが ゼルバは自分の胸に顔をうずめる姫をみていると母の面影がかさなっていた.

〈母の生家のイセキ伯爵家も討たれたのだろうか 御流儀の家でありながら自分の代で帝家が横領されるようなことになっては先祖の御子に顔ばせがない わたしはここで討たれるわけにはいかない〉

 ゼルバは忸怩たるものがあった.

 ゼルバは神の宮殿のなかに入る決意をかためた.

「姫 神の宮殿のなかに入りましょう」

 スウィイト皇女は顔をあげ黒く透きとうる瞳でうなずいた.

 宮殿の入り口には扉らしきものはなく開いたままで狭い通路のように奥へ続いているように見える.

 日の光がなかにとどくので暗いとゆうほどではないが何も見当たらない.

 壁は光沢のある材質のようだがなんでできているのかはわからない.

 千数百年の時を経ても中は極めて清浄をたもっている.

 ゼルバが前に立ちスウィイト皇女の手を引くようにして奥へ進んだ.

 それほど長い距離でわないが 緑色の小さな光がみえ通路全体が白い光につつまれ明るくなるとつきあたりの扉が開きはいってきた入り口は壁のなかから扉が現れ閉じてじまった.

 緑色の光はつきあたりの扉のよこの壁にある小さな部分が光っているものだった.

 ゼルバは姫を気づかったが姫はすこしも恐れるようすはない.

 開いた扉のなかも白い光で満ちてなかがはっきりみえる.

 見たことのない異様な設えだった.

 ゼルバは恐れず進んだ.

 突然 女の声がした.

「ようこそ」

「誰だ」

「わたしは人工知能の良子です」

「人工知能とはなんだ どこから話している」

「人工知能をあなたがたに分かるように説明すると十の一千乗桁の自動計算機による人の思考を演算処理によってうつしたものです」

「汝は人ではないのか」

「人ではありません 機械です」

「機械ならどうして言葉が話せる」

「あなたがたの中枢神経を走査して大脳の言語野の言語組織を解析しました それで話せるのです 声は音声の振動を電流に変換し電流にうつしとられた振動を再び空間に伝えるスピイカアと呼ばれる機械から出ています」

「電気とはなんだ」

「電気とは物質を構成する元素あるいは原子とよばれるものが百種類に少し余る数が知られていますが その元素を構成する粒子が三つあります 電子 陽子 中性子 です このうち電子と陽子は空間に存在する ある強度のエネルギイを四回重ねてあらたに生じたエネルギイの強度がもつ相を電気と呼んでいます 空間には千数百段階の強度の強弱の段階の違うエネルギイが存在し特徴的な相をもつエネルギイがあります 熱の相 火の相 などがそれです 物質 粒子 光も それぞれが一つのエネルギイの相です ほかの強度の違うエネルギイの多くは揺らぎの相として空間に存在しています」

「汝のゆうことはなんとなくわかるような気がするが 端的に聞きたい ここはいったいなんなのだ」

「ここはラビリアと呼ばれるこれを造った人々の住まいと飛行する乗りものを兼ねたものです ラビリアの意味はあなたがたの言葉では宮殿です」

「やはり宮殿なのか これを造った人たちはどこに」

「ここにはいません」

「ではどこに」

「あなたがたがいまいる星はアンドロメダ銀河にあるベガと呼ばれている恒星の第三惑星あなた方はニアス星と呼んでいるようですね 恒星は太陽のように輝く星のこと惑星は恒星を回る岩石質かガス質の星のことです これを造った人々はアンドロメダ銀河から光が空間を進む速さ一秒間で約三十万キロで進むと二百五十万年かかる距離をへだてた銀河の太陽系の第三惑星で地球と呼ばれる星にいます」

「それほど遠く離れたところにいる人々の宮殿がなぜここにある」

「このラビリアは新しい設計の新しい型のラビリアとして造られましたが人が居住するまえに原因はわかりませんが空間転位によってここに移ったようです 空間転位をあなたがたにわかりやすく模式すると 空間転位は光が空間を伝わるのとちがい 距離や時間に関係しません 例えば宇宙全体を人の体とすると指さきでも瞬きでも足の指さきでも直ぐに感じたり動かすことができるのと同じようなことです」

「どちらにしても主人のない宮殿とゆうことなら わたしたちがここに住むことはできるのか」

「できます わたしはラビリアに住む方を助けるのを目的として造られた対話型の人工知能です その仕事は自立してデエタを収集し十の一千乗桁の演算によってデエタを分析し整理すること 自立して生活に必要な生産のための中枢となって制御すること 居住者の安全を計ることです

 居住者に対する制限を受けていません」

「それではここに居住したい 居住者の安全を計るのが仕事だと言っていたが わたしたちは生存をおびやかされている わたしたちを守る手段はあるのか」

「あります あなたがたがはいってきた探査用の機械がつかう通路の出入り口の扉は今はロックされていますから 誰も入ってくることはできません あなたがたの持っている どんな方法 手段でも この扉は破れません」

「宮殿を破壊しようとした場合は防ぐことができるか」

「できます」

「いま姫はお疲れになっている 休むところはあるのか」

「あります では 居住区画に移動してください わたしが 経路を示しますから指示に沿って進んでください」

 ゼルバとスウィイトは指示に沿って進んだ.

 小さな部屋の扉があき中にはいると閉じた.

 床が上昇してしばらくすると止まり扉が開いた.

 やはり見たこともない異様な設えだったが よく見れば 椅子のようであったりテーブルのようであるのがわかる.

 壁には大きな鏡のようなものに まるでいきているような姿で極めて整った顔立ちをした石膏のように白く蝋のように光沢のある肌をした人が映っている.

「この鏡に映っている人は誰だ」

「それがわたしです 良子とゆう名前がつけられています」

 鏡に映っている人がはなしている.

「良子は機械だと言っていたが 人のように見えるが」

「この姿は計算機の演算によってえがかれた動く絵のようなものです 実際に体があるわけではありません」

「絵のようなものだと言ったが その姿は良子を造った人たちの姿に似せているのか」

「同じような姿に描かれています」

「良子 わたしたちが口にできる食糧はあるか」

「あります まず ラビリアの構成を説明します ラビリアは四層からなり一層は格納庫や生産用の設備が主体の層です 二層と三層は居住中心であなたがたが いまいるのは三層の居住区画の一つです 四層はラビリアの制御用の設備を主体とし わたしの主体である計算機や記憶装置もここにあります 食糧は一層の格納庫に保存されているもので食事をとることができます より豊かな食事をするために格納庫に保存されている種苗を栽培することを勧めます」

「それなら栽培してほしい」

「規模は開削段階にしますか 内部段階にしますか」

「開削段階の具体的な内容は」

「大地を開墾して畑をつくり土壌に直接植えて栽培することです 内部段階はラビリア一層の栽培用生産設備での栽培のことです」

「どちらも見てみたい」

「では 両方おこないます」

「大地を開墾する方法が知りたい」

「メタロイドとゆう人型の機械 ロボットとも呼びますが メタロイドと農業用耕作ロボットを使って行います」

「そろそろ食事にしたいのだが」

「おもちします では そちらの席でお待ちください」

 ゼルバとスウィイトは良子の誘導で食卓とおもわれるところに移動した.

 ゆったりとして柔らかな長椅子が食卓の両側におかれていた.

 良子に勧められて二人は対面して座った.

 食卓のすぐよこの壁が動くと壁全体ががガラス窓のように透けて外が眺望できた.

「姫 どうやら 身の安全は確保できたようです 良子の話しは事実でしょう 良子を造った人々はわたしたちよりずっと科学や技術が進んでいて千数百年まえにすでにこのラビリアを造っていたのですね」

「わたくしは夢をみているようで ただ驚くばかりです ゼルバさまはあまり驚かれていない ご様子ですね」

「そうではありません ただ事実を知りたいだけです それがなんなのか事実を知ることが第一義です」

「ゼルバさまはやはり軍学者なのですね ごめんなさい 悪い意味でいっているのではないのです」

「わたしはエブル公を討たねばなりません わたしの代で帝家を横領されるようなことは御流儀の家の名にかけて断じて許すことはできないのです 生ある限りその道をみつけなければなりません」

「あなた一人が背負わなくても わたくしたちがしらない世界はひろくて わたくしたちがみていた世界は本当は小さなはかない世界だと知りました ここでずっと二人で暮らせるなら 小さな世界のことなど忘れてしまったほうが」

「わたしは天衣無縫の御子の子孫です 御子の兄宮は皇帝でありながら終生弟の御子に師の礼をおとりになった そのため我が家は御流儀の家として尊重されることになったのです その御恩をおかえししなければならないのです」

「あなたはどうして……」

 スウィイト皇女は言葉を詰まらせた.

 メタロイドが食事を乗せたワゴンを食卓のところまで押してきた.

 メタロイドが料理の皿を並べている.

 良子が料理の説明をして

「この近くで食肉用として捕獲できる生物は七面鳥と野豚です 野豚の肩ロオスを焼いたものに醤油と黒砂糖青海苔で作ったソオスで味付けをしたものと 大麦粉のスタアチにココアと黒砂糖 大豆粉 青海苔で作ったチョコレエトのクリイム 大麦粉に大豆粉すりゴマカボチャ粉ココア青海苔で作った生地で焼いたナチュラルパンのトオスト 飲物はお酢にアカシアの蜜と柚子の果汁を混ぜて作ったものです 今作れる料理や飲物はこれだけです 食材を確保するために畜産を勧めます」

「良子 わたしには細かなことはわからないので良子がわたしたちにとって良いと思うことをやってくれないか」

「わかりました そのようにします」

「でわ 食事をいただくことにするよ ありがとう」

 ラビリアはアポロンの丘の頂きにあり三方は深い淵になっている.

 もともと絶景の場所であったが ラビリアの透明の壁から遠く眺める世界は森が深くひろがっていて夕暮れの陽がなずんでいる.

 ここは居住区画のラウンジと呼ばれるところで食事や飲物をとる部屋だと良子は説明した.

 居住区画は居間と寝室に浴室と化粧室がひとつの単位となっていて寝室の寝台はベッドといい一人用のものをシングル二人用のものをダブルいうことなど様々と良子は説明した.

 二人にとって料理も飲物もなんとも言えない美味なものだった.

「良子この料理や飲物はラビリアを作った人たちが食べていたものなのか」

「基本的にはそうです 料理や飲物や菓子のきまった作り方これをレシピといいますが 合理的な栄養素の摂取の観点からすべて彼等が考えたものです 現在食材に限りがあり もっとも簡単なものしか作れない状態ですが 農業生産や畜産などの推進計画 プロジェクトとも言いますが お二人のための生活プロジェクトを展開していますから やがて改善できます」

「彼等のことをもう少し詳しく教えてくれないか」

「彼等は太陽系第三惑星の地球の日本と呼ばれる国にいますが あなたがたの目で見れば彼等は超人類といえます 地球にいる彼等以外の人類は猿人から変化したものです 進化したと普通の人類はおもっていますが 違います 実際には決まったろうりに変化したにすぎません 詳しいことはまたあらためて説明することにします 超人類の祖先はあなたがたからみると超生命体と言えるでしょう 物質の身体と違い 静電エネルギイの身体です 身体といっても人の形をしているわけではなく静電エネルギイの波動の生命体です

 波動とはエネルギイが輪のように閉じて回っていることでです 超生命体とは静電エネルギイが 輪 円 の形で回っている生命体で 心があり知覚は演算に近く空間を位相点 グリッド点 でとらえることが知覚であってそれを演算によって解析し認識します そのグリッド点は原子より細かく原子を直接知覚することができます わたしの計算機 コンピュウタアともいいますが演算の仕組みは超生命体の知覚の仕組みをうつしたものです 超生命体は今から約三千三百十九年まえから麦を静電エネルギイで細かく挽いて内にとりこみ少しずつ組成を物質元素に変換していったのです

 別の言い方をすれば肉体化していったとゆうことです 千二百年ほどで超生命体から超人類にかわりました 超人類は普通の人類と違い男は二十二年で女は二十年で成体となり老化はなく寿命がくるまで同じままをたもち歳をとることはありません また感染症に罹ることもありません 日本は島国で八つの島からなりその一つに九州と呼ばれる島があり 耶馬渓と呼ばれる普通の人類が国定公園として秘境の地として人は住んでいないところと思われていますが 超人類は耶馬渓にラビリアを留めて暮らしています」

「ラビリアは飛行する乗物でもあると良子は言っていたけれど それは鳥のように空をとぶとゆう意味なのか」

「そうです」

「超生命体は静電エネルギイと感応することができました 模式すると人が体を動かすことがおもいのままであるように静電エネルギイが心で思ったとうりになるとゆうことです 具体的には高い静電エネルギイを最も効率よくえるには窒素原子を電離させますが 心で電離しろとおもうと窒素原子の一番外側の軌道の電子 d電子とも言いますが 軌道をはなれ正 プラスの静電気が生じます 効率から普通は四つのd電子が軌道から外れます 肉体化した超人類は感応は失われましたが祖先の超生命体の感応を静電エネルギイ感応装置を作ることによって補い万能のエネルギイ源としています ラビリアの飛行も静電エネルギイ感応によって可能にしています 地球の大気の七十八パアセントは窒素ですが この星の大気も地球によく似ていますから 静電エネルギイ感応装置は全く問題なく使えます」

 ラウンジから見える外はすっかり陽がおちている.

 群青色の夜空に星が瞬く.

〈ジサンとオルデは無事でいるだろうか〉

 夜空を見ながらゼルバはふと二人のことをおもった.

「良子 そろそろ部屋のほうに案内してくれないか」

「わかりました 部屋はシングルにしますかダブルにしますか シングルを」

「シングルを二部屋でいいですか」

「二部屋で」

 とゼルバが言うとスウィイト皇女が

「わたくし一人では心許ないのでダブルで」

「ダブルにしますか 二人で一緒のベッドでいいですか」

 ゼルバが

「それは困る」

「わたくしはかまいません」

「それなら わたしが宿直しましょう」

「寝室にセミダブルベッドを二つならべたツインはどうですか」

「それは都合がいい ではそのツインで」

 良子の誘導で二人は白い光で明るく照らされた通路を進んだ.

 壁も床も二人の姿が鏡のように映るほど光沢がある.

 二人はツインの部屋のまえまで来た.

 扉は白い金属の枠が模様のようになっていて内側はガラスのように透明で部屋のなかが見える.

 扉が左右に開いた.

 二人はなかに入ると良子に勧められてソファという長椅子に並んで座った.

 良子は部屋ことについて詳しく説明した.

 ソファのある居間をリビングといい壁についている動く絵を映すものがモニタアで良子の姿が映っている.

 壁には服や物を納めておくウォオルユニットがありワアドロウブとも言うこと なかには超人類が着ている服が入っていて 服を設計することをデザインといって好みのデザインのものを作れさまざまな布があることなどを説明した.

 寝室は居間に接続していて扉があり左右に開き居間に入ってきた最初の扉と同じように白い金属で内側は透明だった.

 中にはベッドが二つ並んで置かれている.

 化粧室には洗面所とトイレにバスルウムがありシャワアが使えることなど詳しく良子は説明した.

 ゼルバは超人類がどんな服を着ているのか知りたいとおもい ワアドロウブを開いた.

 布は綾織が多く光沢がありしなやかだった.

 ズボンにはベルトとうしがなくテエパアドをボタンで留めるようになっていて 左右に二つずつ縫いひだがついている.

 上のほうはゆったりして裾のほうは細くなっている.

 シャツ ジャケット ドレス ブラウス スラックス タキシイド スワロウテイル 男性用 女性用 さまざまな型の服があると良子は説明した.

 服は似たものもあるが布は精緻で煌びやかで服の形も極めて洗練されいるとゼルバはおもった.

 ゼルバは超人類の服を着てみることにした.

 今着ているものは肩章に金モウルのついた白のコウトに帯剣用のベルトをつけコウトのうえにディバイン家の紋章のついたケエプをつけていた.

 ボトムも白で黒のブウツを履いている.

 ゼルバは良子にいま着るのにふさわしいものを選ぶように頼んだ.

 良子は紺色のツウタックで光沢のある綾織のトラウザアズに白の鹿子のシャツにバイオレットのジップアップジャケットなどのカジュアルな服装を勧めた.紺色のナイロンのハイソックスに履物も室内に向いたメッシュの黒のサンダルを選んだ.

 姫には眩ゆいほど光沢のある白銀いろの両合わせのキャミソウルに紺色で光沢のある紗織りのバックスリットの膝丈のスカアト 紫のシイスルウの羽織を勧めた.レエスのニイハイソックスに履物はテエパアドの銀のヒイルのサンダルを選んだ.

 ゼルバは剣をリビングのテエブルのうえにおき着替え 姫はベッドルウムのベンチに座って着替えた.

 良子はメタロイドを制御して二人が今まで着ていたものをウォオルユニットに整理した.

 メタロイドには人口知能は搭載されていないが運動制御に特化していて人に近い細かい動作や作業ができる.

 メタロイドは話すことはできるが どのメタロイドでも良子が話すだけだ.

 中枢制御は遠隔で静電エネルギイ感応によって全て良子によって行われる.

 ラビリアから同心円状に二十キロの範囲の中枢制御が可能でそれは静電エネルギイ感応が使える距離でもある.

 着替えをして二人はソファアに並んで座っている.

「姫 超人類の服はお気に召しましたか」

「しなやかで軽やかでなんともいいようもない 着心地良いものです」

「そうですね わたしもそのように思います」

 ゼルバはモニタアの良子に直接話すようにして

「良子 そとに馬を置いたままなのだが どうにかならないだろうか」

「一層にある捕獲生物管理区画に収容できます」

「収容してほしい」

「わかりました」

「それから わたしたちを捜しにくる者がいるかもしれないのだが気おつけてくれないか」

「すでに ラビリアから二十キロの範囲の安全監視をおこなっています」

「ありがとう」

「もう一度聞きたいのだが わたしたちがここにずっと住むことに問題はないのか」

「問題ありません わたしはラビリアに住む人のためにラビリアを管理する人工知能です 住む人の制限はありません」






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