第6話 夢と希望。

「タカナタ君、全然降りてこないね~。ごはん冷めちゃうよ~。珍しく私が作ったのに」


「ちょっと様子見てきます」


俺はその頃、食い入るようにパソコンの画面と向き合っていた。昼間に聞いたイラストの講演会がきっかけでなんとなくイラストを描いてみることにしたのだが、納得いくものが全く描けずかれこれ五時間ほどこうして画面の前で座っている。


「奏多さん、とっくにごはん出来てますよ」


「ああ、今いく」

目線をずらさず答えたが水瀬が部屋から出ていく気配がない。


「どうしたんだ?そんなに俺を見つめて……」


「いえ、見つかったんだなと思いまして。一生懸命になれるものを」


確かに俺は何事も極めてこなかった。飽きたらやめてを繰り返していた。今度はちゃんと続けられるのだろうか。途中であきらめず最後まで走り抜けられるのだろうか。そんな不安が急に脳内に立ち込めてきた。


「根を詰め過ぎても長続きしなくなっちゃいますよ。地道にやってみるべきです」


「……そうだな、下いくか」




「ようやくきてくれたのかいお二人さん。今日は私の自信作だよ!さぁお食べ!!」


「先輩……待っててくれたんすか。ありがとうございます」


「まぁね、大勢で食べたほうがおいしいしね!!!」


テーブルにはから揚げや刺身、コロッケなど俺の大好物に加えてなぜか赤飯が炊かれていた。


「なんで赤飯があるんすか?」


「そりゃめでたいことがあったからでしょ」


「なんかありましたっけ?」


そういうと先輩と水瀬は顔を見合わせ、笑いあった。よくわからないけどつられて俺も大笑いした。

その日の夕食は世界で一番暖かかった。


「はぁ~、食った食った。明日はなんも食べれんわ」


ピンポーン。

インターホンが鳴った。修羅子先生は飲み会のはずだからあまりにも早すぎる。


「はいは~い。どなたですか」


ドアを開けるとそこには昼間に会った真面目委員長、大西七海がいた。


「今日からお世話になります、大西七海です。お見知りおきを」


なんだか既視感。でもまさか本当に来るとは……。しかも急すぎないか?」


「さっそく部屋に案内してくだる?タカナタ君」


「うげ。なんでそのあだ名を知ってやがる」


「あぁ~オオナミちゃんじゃん!!ど~したの?」


この二人知り合いだったのか、なんか意外だな。てか先輩、オオナミって……。

将来はサーファーの嫁にいかなきゃだな。



「ここが委員長の部屋だよ」


「どうもありがとう、追加で申し訳ないけど荷物の片づけ手伝ってくれる?」


これまた既視感。しかし俺は英国紳士なため「もちろん」と答えてあげた。

しかしよく考えると委員長も加えたら美少女四人と同棲ってことになるのか。

そう考えると青春を謳歌してるほうじゃね、俺。


「そういえば奏多君、宿題やってる?」


「俺がやるわけないだろ」


俺は当然のように言い放った。犬派か猫派かと聞かれ、どっちも好きですと答えるように。

しかし目の前にいる委員長こと大西はそれを許さなかった。頬をふくらませ、高らかにこう宣言した。


「私が来たからには宿題をせずに二学期を迎えるなんて許しません!!!!!」




さらば俺の夏休み。

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