第52話 退院と勉強と
天が退院できたのは、さらに一週間経ってからだった。
体は良くなった。今では動かすのに支障はない。痛みもほぼ感じなくなった。
まだ激しい運動はするなと言われているが、気を付けるべきはそれくらい。病院から出られたことは、素直に喜ばしい。
明日の火曜日から、また学校に行く予定だ。まだテスト期間中なので、授業はない。他より勉強期間を貰えたので、悪い点数を取りそうにもない。
ただ、皆は午前中で終わるが、天はその後まで残る必要がある。受けていない分のテストを、こなさなければならない。
とはいっても、そのテストも今の天にとっては苦にならなかった。退屈だった病院生活よりも、ずっといい。
母と並んで、医者に頭を下げる。お世話になりました、と言って、病院を出た。
そこから十数分タクシーに乗れば、愛しの我が家である。自分の部屋が懐かしい。荷物を片付けるのもそこそこに、天は自分のベッドの心地よさを感じた。
このまま寝てしまいたくなるが、天はスマホを取り出して、Lineで連絡を入れる。
「退院したよ、っと」
『お疲れ様でした、天さん』
『よかったー。退院おめでとっす、天センパイ』
感謝のスタンプを送信して、天はスマホを傍らに置いた。
体を伸ばすと、まだいくつか痛む箇所があった。退院はできたが、まだ完全に治ったわけではない。しばらくは通院が必要らしい。
今までに負ったことのない大怪我だ。それも仕方ないと、納得している。
まさか、二度も
気が付けば、もう六月だ。
学校に怯えていたばかりの天も、気持ちが変わってきた。苦手意識が消えたわけではない。それでも、あの二人に会うためならば、学校に行きたいと思う。
とりあえずは、目先のテスト対策か。ベッドの誘惑を断ち切って、天は机に向かう。
ノートに書かれた文字を追いながら、教科書と見比べる。小テストのプリントを眺め、間違えた点を復習する。
テスト明けには、また
終わった後を考えると、心が弾む。天は、おそらく生まれて初めて、テスト勉強を楽しいと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます