第53話 そしてテストと向かい合う
テスト期間最終日にして、天にとっての最初のテスト日が来た。
「おはようございます、天さん」
「はよーっす、天センパイ」
会いたかった二人が、校門前で待っていてくれた。
「おはよう、
二人に会うと、自然と笑みがこぼれるようになった。本当に変わったものだと自覚する。
「お体は大丈夫ですか?」
「うん、大体良くなったよ」
「無理しちゃダメっすよ?」
「心配してくれて、ありがとう」
天の件について、どうやら全校に伝わっているらしく、他の生徒が様々な視線を向けてくる。そのどれもが複雑だったが、天は気にしない。
「テストの調子、どう?」
「私は問題ありません。余裕です」
「アタシは、まあ普通っすかね」
「そっか。じゃあ、後は俺がしっかりすればいいだけだね」
間違っても、赤点など取れない。補習があると、放課後にも休日にも響く。
「テストが終わったら、
「えぇ、約束ですから」
「えっ、ちょっ、天センパイ、アタシは!?」
「うん、それなんだけど、真波ちゃんも一緒にどうかなって。ほら、二人には心配させちゃったし。お礼、っていうか」
伝えると二人は真顔になり、
「断然二人きりを希望します」
「アタシも!」
予想通りの答えを聞いて、天は困り笑う。
「あはは……。今回は特別に許してくれないかな?」
二人の希望は承知しつつ、天はなんとか許しを請う。女性との約束は大切だと重々理解しつつ、
「俺の退院祝いってことで、頼むよ」
「……それを言われてしまうと断れません」
「……天センパイ、それ、殺し文句っす」
「ごめんごめん」
少々申し訳ないが、この手を使う。二人は互いを見て、仕方ないとばかりにため息を吐いた。
「今回だけですからね?」
「次は、二人きりでお願いしますよ?」
「うん、了解」
昇降口で別れ、久しぶりの教室へ。四階に上がるにつれ、周りの視線が濃くなってくる。事情を知っている生徒が増えてくる。
教室に入ると、明るい喧騒が一気に消えた。それを天は気にせずに、自分の席に着く。
今は、周りのことなど考えていられない。テストに集中しなくては。
休みの間に作って来たノートを見つめながら、天はホームルームまでの時間を過ごした。
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