線路、あくびの日

海面の上 3cm浮かんで

赤茶の錆びた 心の線路

清閑として コトコトコトコト

小さな音で 電車は走る


薄い色の 海と空に

陽の光だって 水色でこの地に落ちる

遠慮は無いけど コトコトコトコト

自由な音で 電車は走る


誰も居ない 車両に一人

貴婦人が 綺麗に 腰をかけ

薄桃色の ドレスと まばたき

繊細な指の 膝に置く影

車両繋ぎの 不埒な扉が

嫌な音して 開かれた

「お嬢さんが乗るたぁ、珍しい」

甚平姿の 浮浪風の男は

彼女の斜め前 あぐらをかいて

妙に長すぎる 箸を器用に

使って 湯気立つ 支那蕎麦を啜る

「いやぁ、いつ食べても美味ぇよ」


どこに向かうのか コトコトコトコト

海の波の色 電車は走る

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