夢の橋

 ああ、目が覚めたんだ。りーなは思い、辺りを見渡す。さっき眠った時と同じようにふわふわと夢の残骸がりーなの周りに浮かんでいる。

 りーなは宗一の方を見る。宗一はまだ横になったままだが、宗一の周りにもりーなと同じような歪みが浮かんでいることがここからでも見えた。


「宗一君、起きて!」


 りーなは亀裂の向こうで眠る宗一に呼びかける。


「んん……おはよう、りーな。どうした急に消えて……」


「それより、はやくその夢の中に入って!」


「これか……。寝る前言っていた奴は……。なんだかふわふわしてるな」


「早く早く!」


「そうせかすなよ」


 寝ぼけ眼の宗一は立ち上がるとその夢の残骸に触れた。宗一の体が消える。それを見てりーなも自分のそばに浮かんだ夢の残骸に入っていった。


「宗一君!」


「りーな!」


 そして水着姿の私たちは夢の中で再び出会った。私の寂しかった心が充たされていく。

 だから。


「宗一君!」


 宗一君、宗一君、宗一君、水着姿の私は思わず宗一君のことを抱きしめた。


「だ、大胆だな!」


 宗一君は困ったように声を出す。それで我に返った。今の自分の格好を。わたしは宗一君の腕を抱きかかえるように引っ張る。


「それはいいから、はやくここから出よう!」


「もうすこし、こうしていたいというか何というか……」


「何言っているの、急いで!」


 私は宗一君の感想を押しつぶし一緒に、私の側の夢の出口へ。そして。



▽▽▽



 パジャマ姿に戻ったりーなとTシャツとジャージ姿に戻った宗一が亀裂の向こうにぽんと現れる。宗一はしばらく辺りを見回し、亀裂の向こう側にいることに気づいてたようだ。


「本当に抜けられた!」


 宗一は驚きの声を出す。りーなは宗一の手を取って言う。


「また一緒だね。よかった!」


 そういうと宗一もりーなの手を強く握り返してきた。


「ああ、りーなのアイデアのおかげだ。ありがとう!」


 そうして二人はしばらく見つめ合っていた。


「……」


 どちらが言い出したわけはなく、なんとなく唇が近づく。しだいに、しだいに。二人の瞳が潤む。そしてそのまま二人の顔は近づき……。


「キス、する……?」


「いいのか……」


 甘えた声でりーな、かすれた声で宗一。ますます唇は近づく。けれど。宗一はりーなの体を離した。 


「やっぱやめ」


「えー、準備できてたのに」


 ちょっと残念そうなりーな。口にする。


「なんか夢の世界でキスしてもなぁって今更ながら思った」


「それはそうかもしれないけど。いい雰囲気だったよ?」


「それに誰かが見ている気がしてな」


「誰かって?」


「ほら、あのクマのぬいぐるみ」


「……はぁ、ネスさんか。確かに、見ているかもね……」


 それを持ち出されてはりーなは黙るほか無かった。


 二人は、また夢の穴に向かって進んでいく。

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