夢の中の夢
気がつくと、夕暮れ時だった。
人のいない生徒会室。そこに制服姿の私は一人いた。
ぼんやりと、している。
手持ちぶさたで、ぼんやりと。
「お嬢様……?、いえ、会長」
呼ばれてハッとする。呼んだのは宗一君だった。そう、私はここの生徒会長で宗一君は副会長。そして私の使用人でもある。
ここ――の? かい――ちょう?
ノイズがザザっと頭全体にかかる。ここってどこだろう。どんな――学校――だろう。
「どうされましたか、ぼんやりとして」
「ああ、うん、なんでもないのよ」
私は手を振ってそう言う。そうだ。制服を見ればわかるじゃ無いか。ここは私の通っている学校。通っている――学校――の、生徒会室。
「もしかしてこの間の件を考えていたのでは?」
「……。そう、そうかもね。あなたの返事をまだ貰ってないし」
私は言った。この間の件。そう、私が宗一君に告白したこと。その返事。
ええっ!
「……」
また頭に軽くノイズが走る。けれどすぐにそんな違和感は消えた。
「申し訳ありません、お嬢様」
宗一君は一礼して言った。宗一君がそう言うことはわかっていた。宗一君には好きな人がいて、私はだめもとで告白したのだ。
「そう」
だから私は寂しそうに呟くだけだった。
――こんな寂しい夢、嫌だな。ノイズがかかっていく。
――こんな悲しい夢、嫌だな。ノイズはさらに強く、かかっていく。
せめて、せめて――宗一君の好きな人の名前でも聞けたら――。
気がつけば私――片倉りーなは夢の中で見た夢から目覚めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます