夢の中の夢

  気がつくと、夕暮れ時だった。

 人のいない生徒会室。そこに制服姿の私は一人いた。

 ぼんやりと、している。

 手持ちぶさたで、ぼんやりと。


「お嬢様……?、いえ、会長」


 呼ばれてハッとする。呼んだのは宗一君だった。そう、私はここの生徒会長で宗一君は副会長。そして私の使用人でもある。


 ここ――の? かい――ちょう?


 ノイズがザザっと頭全体にかかる。ここってどこだろう。どんな――学校――だろう。


「どうされましたか、ぼんやりとして」


「ああ、うん、なんでもないのよ」


 私は手を振ってそう言う。そうだ。制服を見ればわかるじゃ無いか。ここは私の通っている学校。通っている――学校――の、生徒会室。


「もしかしてこの間の件を考えていたのでは?」


「……。そう、そうかもね。あなたの返事をまだ貰ってないし」


 私は言った。この間の件。そう、私が宗一君に告白したこと。その返事。


 ええっ!


「……」


 また頭に軽くノイズが走る。けれどすぐにそんな違和感は消えた。


「申し訳ありません、お嬢様」


 宗一君は一礼して言った。宗一君がそう言うことはわかっていた。宗一君には好きな人がいて、私はだめもとで告白したのだ。


「そう」


 だから私は寂しそうに呟くだけだった。


 ――こんな寂しい夢、嫌だな。ノイズがかかっていく。

 ――こんな悲しい夢、嫌だな。ノイズはさらに強く、かかっていく。


 せめて、せめて――宗一君の好きな人の名前でも聞けたら――。


 気がつけば私――片倉りーなは夢の中で見た夢から目覚めていた。


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