しまもと回想
さて、今日はまだミッションが残っていた。さっき、3つめのミッションができてしまったのだ。激務の1日だ。
メイドカフェで、天使の愛が込められたやすらぎカルボナ~ら、とかいう名称の、たぶん普通のおいしいカルボナーラをいただいている最中に、山崎さんからLINEが送られてきたのだ。どうやら、今月の数字が足りておらず、少しでも人手が欲しいのでテレアポを手伝ってほしいとのこと。予定があるならば出勤しなくても良いそうだが、時間が空いている日はなるべく出勤したい。まだバイト2日めな上に、初日はロープレとかいう音読の練習だけだったのであまり自信はないが、とりあえずお給料はほしい。かといって週1の固定を週2とか3とかに増やすほどのやる気はないが。
というわけで電話をかけまくったものの、全く契約は取れなかった。午後8時になる少し前に、今日のテレアポはこれで終了です、と、マネージャーの方から合図があった。法律上でテレアポは午後9時までと決まっており、更にマナー上その1時間前の午後8時で切り上げるのが主流なのだそうだ。
全員で一斉に起立し、礼をした。学校の終礼みたいだ。もっとも、終礼をしたからといって、社員の方々はまだ帰れないらしい。山崎さんはそそくさと喫煙所の方へと向かった。いちおう「お先失礼します」とは言ったのだが、たぶん聞こえていなかっただろう。社長室では、何やら荒ぶった声が聞こえていた。少なくとも平穏な雰囲気ではなかった。
ビルの前に今日も黒い車が停まっていた。初日に山崎さんに教えてもらったのだが、あれは社長の車で、レクサスとかいうらしい。車に詳しくない俺でも、かなり高級そうだということはわかった。
まだ2日めではあるが、このバイトはもう辞めようと思った。どうせ俺は根気がないさとり世代なのだよ。ただ、バックレはやめておこう。契約書に保護者の電話番号を書く欄があって、勝手にオトンの携帯番号を書いているのだ(※真似してはいけません)。下手したら会社から親に通告が行ってバイトのことがバレてしまう。
少しだけ大人の世界を垣間見たが、なんだか大変そうだなあ。そうぼんやりと思いながら歩いていると、ふと、今日の夕方の島本の表情がよぎった。あの瞬間になんとなく沸いた感情は、なんだったのだろうか。
プロエロ本収集家として5年近くのキャリアを誇る俺だが、クラスの女子だとか知り合いの女の子をエッチな目で見たことなどは全くない。私はストイックな紳士なのだ。……というのは嘘で、そりゃあまあミウたその胸元の膨らみを見て期待(何をだ)したりとかそういうのはあるのだが(どういうのだ)、なんというか、そういうアレ(ドレやねん)ではない。
なんというか、うーん、……生物的に、かわいい、と思った。なんだこれ。
もしかして俺は、変態だったのだろうか。ちなみに生物学的に変態とは……、すみません、俺、文系クラスですから。わかりません。
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