しまもと観測

俺はフードコートに残り、イオンの入り口の棚で入手したタウンワークを開きながら、学校にバレないバイトについて考えていた。俺の通う高校は一応は進学校でお勉強校なので学業優先、アルバイト禁止なのだ。


接客業はダメなので、飲食店やコンビニやスーパーは無理。ソータがやっているコンビニ弁当の蓋にひたすらセロテープを貼るバイトは、拘束時間が長いらしい。ヨドやっている宅配便の仕分けのバイトは、上下関係がものすごく厳しいらしい。引っ越し業者は体力に自信がないのでできる気がしない。


いろいろ考えているうちにめんどくさくなって、さっき話題に出た麻倉ももについてググることにした。


なるほど。さっきはドッカンバトルに夢中でよくわからなかったが、確かに可愛い人である。ヨドが鑑賞用と保存用と布教用に同じCDを必ず3枚も買うのはちょっと理解できないが、この人に魅力があるということはよくわか……


「何見てるん?」


後ろから女子の声がした。このニヤニヤ声は最近イヤというほど聞いた。島本だ。


「他人のスマホ画面を覗くなや」


「ええやん、ちょっとくらい。ウチのも見したろか。待ち受けミニオンやねん。スチュアートが好きやねん」


「知るかいな」


「……ん?」


「あ、俺のスマホ画面見たやろ?声優の人らしいで?可愛いな」


「…………」


島本は、しばらく黙った。この前のこいつの雰囲気からすれば、本口くんってオタクなん?声優とか好きなんや、とか、面白がってきそうなものだが。


「……ウチ、アニメとか、あんましわからへんから」


どうやら、あまりそういうのは趣味ではないらしい。


「まあ、俺もあんま知らんけどな。ヨドがそういうの好きやから、なんとなく俺も名前とかぐらいは。……あ、うちのクラスの淀屋橋、知ってるやろ?あの、メガネかけた地味なオタク。あいつがこの、麻倉もものファンらしいねん」


「……ふうん。……ところで、後でLINE送るけど、今週の土曜は、夕方5時に、ここ集合」


「あ、はあ……。ここでええのん?」


問いには答えず、島本は去っていった。とりあえず、マイナビバイトに登録しておいた。

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