エロ本収集家の生活
どの授業のどの教師も、テスト1週間前だということをやたらと強調する。しかし、生徒のこちら側としてはどうにもやる気が起きない。このまえ島本に言ったことと矛盾するようだが、再来週もうテストかよ、と先週は思っていたのに、いざ1週間前になると、いやまだ1週間もある、と都合良く受け取るようになるのだ。
俺とソータは学校からまっすぐ帰らずに、近くにあるイオンモールのフードコード内のマクドナルドで悠々とハンバーガーを食べていた。「お前エグチやねんから、エッグチーズバーガーにしとけ」とか言われたが、「絶対イヤじゃ」と言って、いちばん安い普通のハンバーガーにした。ソータは320円のてりやきマックバーガー。こいつは学校に内緒で工場のバイトをしているので、お金に余裕があるようなのだ。だったらエロ本も自分で買えや。
てりやきマックバーガーで濡れた手でソータがスマホをいじり始めるや否や、その肩を誰かが片手で軽く叩いた。その誰かとは、これまた俺の中学からの同級生、淀屋橋哲平(よどやばし てっぺい)だ。もう片方の手には、青いビニール袋をぶら提げている。わかる人にはわかる。アニメイトの袋だ。ヨドは声優オタクなのだ。今日は麻倉もものニューシングルのフラゲ日だとか言っていたので、多分その用事だろう。
ソータはオタクというわけでもないのだが、麻倉もものルックスは好きらしく、胸がどうこうとかゲスいことを言った。全くこいつは。だから彼女いない歴17年なんだぞ。俺もだが。
ソータのエロトークを聞いていても何の得にもならないので、スマホゲームのドラゴンボールZドッカンバトルに集中したのだが、これが全くもって勝てない。無課金でやり続けるのには無理があるのか。やはり学校に内緒で宅配便の仕分けのバイトをしているヨドはすでに3万円は入れ込んだらしく、LR孫悟空ベジータを持っているのでかなり強い。ソータもこの前イベントでLRサタンを引き当てたのでそこそこ強いらしい。やっぱりお金がほしい。
俺もバイトしようかな。そんな話に切り替えた。
「接客系はやめた方がええな。いつ誰が来てバレるかわからん。先公やなくて同級生でも、どっかでチクられるかもしれへんからな」というのがソータのアドバイス。
「タウンワークの初めのページのとこはやめとけ。初めの方のページに載ってるのは常連で、つまりそんだけしょっちゅう人がやめる、っていうことや」というのはヨドのアドバイス。
バイトを始めるに当たってのレクチャーを、その後しばらく2人にしてもらった。電話のかけ方などを教えてもらったところで、「バイトがあるから」と、2人とも旅立っていった。
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