第六章 蚩尤

第391話 風伯

ヴァルキリーのスクルドと悪魔ベリトに進化したヴァンスは渾沌コントンを追い詰めていく。


「そろそろ、息も合ってきたから、止めの必殺技を放ってもいいんじゃないか?」


ヴァンス「なるほど、そうですね。」


スクルド「分かりました。」


ヴァンスの身体から邪気が涌き出て覆う。


スクルドは雷を纏い、聖槍に雷撃が付加される。


ヴァンス「行くぞ!」


ヴァンスは飛び上がり、スクルドの攻撃を待ち短く詠唱した。


スクルドも上空高く飛翔し聖槍を下の渾沌コントンに向け構える。


そして高速に落下し渾沌コントンを刺し貫く!


スクルド「サンダーボルトロンギヌス!」


ヴァンスの魔法も同じタイミングで渾沌コントンを包む。


ヴァンス「キラーインフェルノ!」


渾沌コントンの周りの空間は透明な薄紫。


「ヴァンスの魔法を嫌ったか。」


スクルドの聖槍ロンギヌスが渾沌コントンを貫いた。


聖槍から神気が溢れだし、渾沌コントンは薄皮が剥がれた様に切り裂かれ、中の闇が溢れた。


レベルアップのメッセージが流れる中。


渾沌コントンの皮は地面に広がる。


そして渾沌コントン内部の闇が皮の上に何やら妖しい模様にとなった。


そして、黒い光がドーム状に大きくなり弾けた。


漂う大いなる闇。


その中の何者かが上空高くあっという間に飛び上がり消えた。


渾沌コントンの皮の上に人影が一つ残る。


風伯「我は風伯ふうはく、名は飛廉ひれん。」


風伯。

鹿の長い胴体、豹柄。孔雀の頭。

奇妙な鋭い角が2本。蛇の尻尾。


黒い道士の服、道袍どうほうを着て。


頭には道士の帽子、古代の冠巾をかぶる。


左手に車輪、右手に広げた扇を持つ。


風伯「我らの願いは叶った!渾沌コントンが死する事で最後のピースが埋まり。渾沌コントンより100万の魂を貰い受けた、我らの神は降臨された。礼を言うぞ勇者ハーミア。この時より我らが神の軍勢がこの大陸を席巻する。我が神の大陸となるのだ。」


ハーミア「ど、どういうことだ!」


風伯「貴様が勇者になるために虐殺した、南の王国で暮らしていた100万の善良なる民の魂により、我が神である最強最大の戦神『蚩尤しゆう』様が甦ったのだ。」


ハーミア「ぜ、善良なる民?

あ、あれは魔王の先駆と言ったではないかああああ!」


し、蚩尤しゆう!!!

はぁ? 今度はよりによって蚩尤しゆうだってえええ。


風伯「渾沌コントンの手先であったオーダンが、その様な事を申してたな。だが、人間は魔王には成れんのだよ。」


ハーミア「え!」


風伯「渾沌コントンに騙されたのだよ。絶望の気持ちだろう。正義の味方が何の罪もない民達を殺して回ったのだからな。どうだ、そのまま闇に堕ちてしまえば楽になるぞ。そうしたら我らの仲間に加えてやろう。」


ハーミア「うるさああああああい。」


ハーミアは泣き崩れた。


風伯「さて、樹海帝国皇帝ヒロト。我は宣戦布告の為、ここに残った。今より我が神『蚩尤しゆう』様がこの大陸を貰い受ける。」


そう言って風伯がくるっと1回転したかと思ったら、暴風が吹き荒れた。


暴風は段々強くなり、草木や石も吹き飛ばす。


俺達、俺とヴァンス、スクルド、オニバル、バズは立ち尽くす。


横で泣き崩れるハーミア。


オーダン侯爵軍と渾沌コントンを倒した俺達の前に新たに現れた風伯が蚩尤しゆうの生誕を告げて消えた。

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