第347話 迷宮都市ラビリス(その5)

俺はアキルイの前に移動する。


「止まれ!それ以上進むと容赦しないぞ。」


右手をムラマサの柄に手をかけ鯉口を切る。


右足を半歩だし半身になり構える。


騎士達は俺の様子に気をかけず歩みは止めない。


居合いの間合いに入る。


刹那の抜刀。


居合い斬り。


刀は峰打ちになっていた。


前を歩く騎士を横薙ぎに打ち払う。


騎士は吹っ飛び宿の壁にぶつかり止まる。


返す刀でもう一人の騎士を、袈裟斬りでうち据える。


此方も峰打ちだ。


ラバガル「な、何をしている!平民風情が。我は子爵だぞ。」


ラバガルはそう言いながら後退り宿を出ていく。


ラブリルは慌てている。


「ヒロト。何をしているのか分かっているのか?領主に逆らうということはこの国で犯罪者として指名手配されるのだぞ。行き場が無くなるぞ。」


「ふん。そんな事は問題ない。」


俺は刀を構えたまま前に進む。


ラブリル「騎士団長になった後、ゆくゆくは私の婿にしてやろうと思っているのだ。さあ、アキルイを差し出し父上に詫びを入れろ。」


俺は無言で刀を構えたまま進む。


ラブリル「ひ、ひぃ」


ラブリルも慌てて宿を出る。


迷宮都市ラビリスにある宿屋『小鳥の宿』。


宿泊していた商人アキルイを、領主ラバガル子爵とその騎士団が捕まえに来た。


冤罪。


領主の都合。


俺達が迷宮で採取した素材が目的。


俺達を配下にして直接素材を採取させるから、商人は必要ないらしい。


配下になる気なんて全く無いよ。


だから断った。


密漁を許すから、騎士団長になれって。


馬鹿じゃない。


密漁?


今や迷宮『千尋の洞窟』のダンジョンマスターの魔神パズズは俺の眷属だよ。


これって、迷宮は俺の物だよね。


宿に入ってきた騎士達をぶっ飛ばしたら、領主とその娘は宿から逃げ出した。


魔力探知で宿の周りを調べる。


宿の前に領主と娘。


その近くに騎士。


それから宿を包囲していた騎士達が、宿の前に集まって来た。


俺達は『小鳥の宿』の出入口から表に出る。


領主と娘、騎士団達が待ち構えていた。


ラバガル「貴様ら、我に歯向かうとはいい度胸だ。この国で指名手配にしてやる。今ならまだ間に合うぞ、土下座して我の配下になれ。」


「断る。」


きっぱり断りました。


「ところで、密漁と言ってたけど、『千尋の洞窟』はあんたの物なのか?」


騎士「何を言ってる。ラバガル子爵の領地にあるのだから、子爵の物に決まってるだろう。」


「ふ~ん。ここに有るからあんたの物だと言うんだな、分かった。」


ここに迷宮が無ければいいんだな。


ラバガル「不法侵入、密漁、騎士団へも暴行、我への不敬罪。弁解の余地は無い。」


「不法侵入と密漁と言っても、素材は全てアキルイ経由であんたらが入手したはずだけどな。」


ラバガル「なんと言っても不法侵入と密漁は変わらん。」


「しょうがないなぁ。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る