第338話 千尋の洞窟(その12)

ラブリルは俺の方を見ている。


なんだろう?


どうして分かったんだ。


気になるな。


俺は姿を表した。


「俺が見えたのか?」


仲間も隠蔽魔法を解除して姿を現した。


迷宮都市ラビリスにある千尋の洞窟地下8階。


領主の娘聖騎士ラブリルを冒険者クラン『紅蓮の刃』から助けた。



隠蔽魔法で身を隠したまま、『紅蓮の刃』を倒してそのまま去ろうとしたら、呼び止められた。


俺達の隠蔽魔法は通常の隠蔽魔法をカスタマイズしている。


姿は見えない。


音を消す。


匂いを消す。


魔力を消す。


絶対分からないはずなのだ。


それが、ラブリルは俺の方を見て、「待って。」と言った。


俺がそこにいることを分かったみたいだ。


このまま逃げても良かったのだが、今後の隠蔽魔法の効果が不安になるので、理由を明確にしたい。


そう考えて姿を表した。


ラブリル「私は迷宮都市ラビリスの領主ラバガルの娘ラブリルです。


危ないところを助けていただき有難うございます。


貴方達のお名前を教えてください。貴方達は冒険者ですか?」


「俺達は旅人で、俺の名前はヒロトです。俺達がいることを何で分かったのか教えてください。」


ラブリル「旅人?旅人が何故ダンジョンにいるのですか?


私は『直感』と言うスキルがあります。多分このスキルで貴方達の事を何となく分かりました。」


「直感ですか?なるほど。

ダンジョンにいる理由はお話し出来ません。」


スキルは無警戒だったなぁ。


直感かぁ。第六感とかもあるのかな?


隠蔽魔法が完璧じゃ無いことを認識しないとな。


騎士「何!姫様が訊いているのに答えないとは、お前ら何様だ!」


魔法騎士がラブリルと俺の間に割り込んで来た。


「ほう、貴方達は私達と敵対したいのかな?」


ちょっとイラッと来た。


何で何もかも教えなきゃ行けないんだ。


あんたらこそ何様だ。


殺気を騎士に放つ。


騎士は少し後ずさる。


しかし剣を抜いて俺を睨む。


アンナが剣を構える。


ユイとウィーラは杖を構えた。


グレイアも臨戦態勢。


キュウも身構えた。


騎士「冒険者でもない旅人がこのダンジョンに居る事はあり得ん。不法侵入か?。」


騎士が剣を構えたまま前に出てきた。


騎士「領主の許可証か冒険者証を出せ!無ければ不法侵入だぞ。」


「そんなの無いよ。」


騎士「動くなよ、貴様等を捕縛する。」


「断る。」


グレイアから禍々しい魔力が放出した。


騎士「クッ・・・。」


騎士達は耐えきれず膝をつく。


ラブリルは気丈に立っているが若干震えている。


グレイア「お前らこそ何様だ!

助けてやったのに礼も言えんのか?

今すぐ殺してもいいんだぞ。」


「グレイア、まあ、待て。」


グレイアに掌を向けて諌める。


グレイアは魔力を放出を止めた。


ラブリルが騎士を押し退けて騎士と俺達の間に割り込んだ。


ラブリル「止めなさい。せっかく九死に一生を得たのに、ここで敵対して全滅したいのですか?」


騎士「しかし・・・。」


騎士は渋々剣を納刀した。

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