第317話 暗黒街ミレース(その8)

半魔族A「俺達が案内してやろう。」


男達は更に近付いて来る。


エルソル「結構です。」


エルソルはキッパリ断るが、男は更に近付いてエルソルの手を掴む。


エルソル「止めて下さい!」


手を振り払おうとするが、男は強く握って手を離さない。


半魔族A「こっちだよ。」


男はエルソルを無理矢理路地に連れて行く。


エルソルは抵抗しようとするが、半魔族の男の力が強く、半分引き摺られながら歩いていく。


ミサキとフェンが無言でエルソルの足元を歩いて付いていく。


路地に入ると5人の半魔族が待ち構えていた。


半魔族の男達は下卑た笑いを浮かべる。


半魔族B「可愛いハーフエルフじゃねえか。」


半魔族C「高く売れそうだな。」


エルソル「私に何をするの?ハーフエルフの仲間が黙って無いわよ!」


半魔族A「勿論、奴隷として売り飛ばす。ハーフエルフ達は近々この町から居なくなるから大丈夫だよ。」


半魔族B「奴隷にする前に味見をするがな。」


半魔族Bがエルソルの両肩を掴む。


エルソル「止めて下さい!」


ミサキ「そこまでだ!」


ミサキは前足の爪で半魔族Bの男の首を薙ぎ払う。


男の頭が落ちて倒れた。


エルソル「きゃああああああ!」


エルソルの悲鳴。


半魔族A「何者だ!」


半魔族達はエルソルとミサキを睨み、武器を出して構える。


半魔族Aは1歩下がる。


7人の半魔族達はエルソルとミサキを取り囲む。


ミサキの身体が大きくなる。


尻尾が2本の黒豹のようだ。


怯えて震えているエルソルの前に立つ。


フェンの姿は見えない。


上空から火の玉が半魔族達に降り注いだ。


フェンが上空から火魔法を放っていた。


ミサキを見ていた半魔族達は上空のフェンに気づいていなかった。


その為、不意討ちとなって、火の玉を躱す事が出来なかった。


半魔族達は一瞬の内に燃え上がった。


火の鳥フェンの高温の炎は半魔族達を燃やし尽くした。


7人のいた場所には黒い煤が残った。


風が吹いて煤も吹き飛ぶと黒い跡だけが残る。


首を切られた半魔族の死体はミサキが吸収していた。


一瞬の出来事。


エルソルは震えている。


ミサキ「行こう。」


暗黒街ミレースの半魔族の集落。


ヴァルキリーのスクルド、ヒルド、スコグルとアマゾネスのハーミアが食後にまったりとしている。


ハーミア「スクルドさん、半魔族達と手を組んでハーフエルフを襲撃するのですか?」


スクルド「条件が合えばね。」


ハーミア「ハーフエルフは弱者です。正義の戦乙女ヴァルキリーらしくないと思うのですが・・・。」


ヒルド「正義?正義って何?」


ハーミア「悪者を倒す事です!今までヴァルキリーは南の王国に仇をなす敵と戦って来たと聞いてます。違うのでしょうか?」


スコグル「違わないわよ。今までは南の王国の王家に仇をなす敵を倒して来たわ。」


ハーミア「だったら・・・。」


スコグル「南の王国は既に無いわ。王家に連なる者は全員殺された。渾沌コントンとオーダンによってね。私達の今の目的は渾沌コントンとオーダンを倒す事。その為ならなんでもする。例え汚い手を使っても。目的達成の為、古代兵器は必要なのよ。」


ハーミア「だからと言って罪もない人達を倒すにのはどうかと・・・。」


ヒルド「私達も罪の無い国民を傷付けようとは思ってない。ハーフエルフは南の王国の国民では無い。無断で王国に住み着き税も払っていない。そして暗黒街に住んでる者はほぼ犯罪者。倒しても何の罪悪感もないわ。」


ハーミア「半魔族も国民では無いですよね。」


ヒルド「そうね。半魔族も国民では無いわ。」


ハーミア「なんか釈然としません。」

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