第301話 ヴァルキリー(その3)

ヒルドが目を覚まして、足が治っている事に気付く。


ヒルド「有難う御座いました。そして御無礼の程、申し訳御座いませんでした。」


スクルド「陛下は何のために王国へ来られたのですか?」


「観光だよ。」


ヒルド「こんなに荒れている時に?」


スクルド「こんな時だからこそ、状勢をご自分の目で確認しに来られたのですね。」


「そうだね。」


ヒルド「陛下自ら?」


「だから観光だって。」


スクルド「はぁ。こんな戦力が身近に居れば、散歩と同じ程度に気軽に来れるのだろう。」


「次の町まで馬車に乗せていくよ。道案内してくれ。」


ヒルド「いったい、いつの間に馬車を用意したんでしょうね。」


スクルド「余計な詮索は身を滅ぼすぞ。気が変わらないうちに次の町まで乗せて貰おう。ヒルドは御者席で道案内を頼む。」


ヒルド「はい。」


スクルドとヒルドを馬車に乗せて次の町に向かう。


「スクルド、次の町はどんな町だい?」


スクルド「港町です。ノガートで食べられてる魚介類はこの町から運ばれます。」


「へぇ。海は危ないってきいていたけど、漁をやってるんだね。」


スクルド「人間では先ず無理でしょうね。」


「人間は無理って言うことは魔物?」


スクルド「そうです。人魚と魚人の町です。」


ユイ「人魚と魚人!」


スクルド「人魚は女性、魚人は男性です。」


ユイ「ほうほう。それは楽しみ。スクルドはその町に何しに行くの?」


スクルド「前線への通り道というのもありますが、元人魚のヴァルキリーの部下がいます。その子を連れて前線に向かいます。」


ユイ「なるほどね。」


ーーーーーーーーーーーーーーーー


馬車で暫く進む。


「食事にしようか。ブラリリ用意してね。」


ブラリリ「はい。」


道から外れたところに馬車を止めて、昼食の準備を進める。


スクルド「お、良い香りだ。」


ブラリリは昨日のブイヤベースを更に発展させてチーズを入れる。


トマトとチーズは合うよね、しかもリゾットになっている。


ブラリリ「スクルドさん、ヒルドさんもどうぞ。」


スクルド「有難う。」


ヒルド「旅の途中でこんなに豪華な料理が食べられるなんて贅沢です。」


スクルドはスプーンでリゾットを口に運ぶ。


スクルド「旨い!」


ヒルド「これはなんて美味しいんでしょう。ノガートのスープより断然美味しいわ。」


ユイ「本当ね、昨日食べた物より更に旨さがアップしてる。」


ウィーラ「ブラリリやるなぁ。」


ブラリリ「有難う御座います。昨日お城で料理おばさんと食堂の料理ギルドメンバーで考案しました。」


スクルド「樹海帝国皇帝は食通と聞いていたが、本当だったのだな。」


ヒルド「専属の料理人を連れて旅するなんて羨ましいです。」


「食通っていうほどでもないよ。」


ヒルド「いえいえ、これ程美味しい料理は産まれて初めてです。」


「スクルド、港町には馬車でどのくらいかかるのかね?」


スクルド「港町スーオに行くのに3日はかかるでしょう。」


「野宿が必要だな。野宿の用意はあるのか?」


スクルド「テント程度なら用意しております。」


「ふむ。分かった。今晩はどの辺りで野宿をする?」


スクルド「もう少し進んだ先に川がありますので、その近くにしましょう。」


「了解した。」

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