第297話 ハーミア(その5)

グレイアがアマゾネス国女王の部屋に転移してきた。


闇の触手でハーミアを拘束している。


ヒポリュテは椅子に座り、二人の従者が立っていた。


ヒポリュテはハーミアをちょっと見た後、グレイアを見つめる。


ヒポリュテの額から汗が一滴流れる。


グレイア「ヒポリュテ、返答によってはこの国を潰すよ。」


グレイアはヒポリュテを睨む。


真っ赤な瞳。怒りにあふれる眼力。


グレイアから強大で濃厚な魔力が溢れた。


二人の従者は立って入られず跪く。


ハーミアも恐怖で打ちひしがれる。


ヒポリュテは辛うじて椅子から立ちあがる。


ヒポリュテ「何の事でしょうか?」


グレイア「この女が陛下に言った言葉に、私達、陛下の妻と側室は全員怒ってるわ。属国の王女風情が陛下に向かって南の王国のモリーを無償で助けろなんて良く言えたわね。どう落とし前をつける!」


闇の触手がハーミアを投げ飛ばす。


ハーミアはバウンドしてテーブルにぶつかり頭から血を流す。


ハーミアは顔をあげてヒポリュテとグレイアを見比べる。


ヒポリュテは土下座した。


ヒポリュテ「申し訳御座いません。私の不徳の致すところで御座います。私の事はどうとでもしてください。国民とこの子の命だけはどうかお許しください。」


ハーミアは驚き、そして悔やんだ。


ハーミアも土下座する。


ハーミア「すいません。私が悪いのです。陛下のお優しさに甘えてしまいました。私を殺してください。どうか女王と国民の命は何卒お許しください。」


グレイア「ハーミア!お前には聞いていない。黙ってな!」


ハーミアはグレイアの迫力に何も言えなくなる。


グレイアはヒポリュテを向く。


グレイア「落とし前はそれだけかい?」


魔力が籠った冷たく低い声。


ヒポリュテもハーミアも背筋が凍る。


従者達は気を失う。


ヒポリュテ「今は思い付きません。何でも言う事はお聞きします。国民と娘の命だけは許してください。」


グレイア「ふん。まあ、良いだろう。陛下が優しいと思って図に乗ると次は無いよ。一つ罰は与えようか。」


グレイアは闇の触手を太くし頭上に勢い良く伸ばした。


王女の部屋の天井が吹き飛び大穴が空く。


ヒポリュテとハーミアは呆然と天井を眺める。


そしてグレイアを見ると居なくなっていた。


近衛兵達が轟音を聞いて駆けつけて来た。


近衛兵「女王様、どうなさいました!」


ヒポリュテは立ち上がる。


ヒポリュテ「ちょっとな。」


ヒポリュテは天井を指差し。


ヒポリュテ「天井を修理するよう手配しなさい。」


近衛兵は天井を見上げて驚愕。


近衛兵「こ、これはいったい。」


轟音で従者達も目を覚ます。

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