第166話 魔法国家ソルセル(その5)

食事をしていると部屋に宿の支配人がやって来た。


支配人「この宿の支配人でございます。

この度はこの宿にお泊まりいただき有難うございます。」


「はあ。」

何しに来たんだ?


支配人はエルセラに近付き耳元でヒソヒソと小声で話した。


支配人「エルセラ様、実は王様の使いの者が宿に訪ねて来て、エルセラ様に王宮に来るよう命令されております。」


小声でも聞こえるんだよねぇ。

「断る!」

絶対、王宮に行ったら面倒な事になるだろう。


エルセラ「!」

エルセラは驚き、支配人は困った顔をしている。


支配人は板挟みになって困ってるんだなぁ。


王様には逆らえないだろうからなぁ。


「まあ、支配人にそんな事言っても困るだろうから、直接断るので、食事の後、ここに呼んでくれていいよ。」


支配人はホッとした。


支配人「有難うございます。

それでは後程お連れ致します。」


まだ食事しているが、少しするとうるさい声がエレベーターの方から聞こえてきた。


王の使い「おいおい!

王様の使いを待たせるとは何様だ!」


ダイニングの扉が勢いよく開かれる。


まだ、食事中だっちゅうの!


イラッとするな。


王の使い「エルセラ!

王様がお呼びだ、さっさと来い!」


エルセラ「・・・。」

エルセラは何と言って断るか考えている。


下手な事を言って面倒な事になりたくないしね。


「断る!さっさと帰れ!」


ちょっとイラッとしていたので、ぞんざいに言う。


王の使い「はあ?おい小僧何者だ!

言葉遣いに気を付けろよ!

俺を誰だと思ってる。」


「知らん!名前も聞いてないし、お前に名乗る気もない。」


王の使い「何だと小僧!

綺麗な女性に囲まれているからって、調子に乗ってるなよ。

ただじゃ置かないぞ。」


綺麗な女性に囲まれてる?

突っ込むのはそこかい!


「ただじゃ置かないって、どうするんだ?」


王の使い「しょっぴいて牢屋に入れてやる。後で泣いても許さんぞ。」


「ふーん。食事中にうるさいな。

グレイア、固めて影に入れておけ。」


王の使いの一番近くにいたグレイアに指示。


グレイア「承知しました。」


グレイアから黒い闇の触手が伸びる。


一瞬で王の使いを拘束すると影の中に引き摺り込んだ。


静かになったダイニングで黙々と食事を続ける。


エルセラ「え!宜しいのですか?

王の使いでしたよ。」


「何で王の使いと分かる?」


エルセラ「本人が言ってました。」


「ぷぷ。普通の王の使いは、その証拠に王の紋章とか見せるだろう。

言うだけだったら盗賊でも言える。

あんな無礼で弱くてそそっかしい奴が、王の使いである訳がない。」


エルセラ「確かに、・・・しかし。」


「ははは、多分本物だろうけど、今の言い訳は成り立つよね。

なんか言われたらそう言えばいいさ。

それでも納得しないときはやっつけてやる。」


エルセラ「はい・・・。」

エルセラは困った表情。


「いいよ。エルセラは俺の眷属だ。

この国の王に指図される権利は無い。

ましてや、戦時中の敵国の王様だ。

言うことを聞く義務は全く無い。

エルセラに指一本触れさせないから安心してくれ。」


エルセラ「はあ。有難うございます。」

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