第157話 竜脈の魔女ウィーラ(その1)

俺達は『婆さん』の魔法屋に行った。

古めかしい木造平屋の店。


引戸を開けて店に入る。

店の中は雑然としていた。

謎の薬や魔物の素材が、ところ狭しと並べてあったり、吊るされていたりしている。


店のカウンターから、いかにも魔女って言う感じの鷲鼻で黒い三角帽子をかぶった婆さんが、声をかけてきた。

婆さん「いらっしゃい。どんなご用だい。」


サクラ「ウィーラ、久しぶりー。」

サクラは片手を挙げて親しげに声をかける。

婆さんの名前はウィーラと言うらしい。


ウィーラ「おや、サクラかい、随分まともな服を着てるじゃないか。分からなかったよ。」

サクラ「目立たない様に幻影魔法で変えてるだけよ。それより、地下の召喚の間を貸してくれない?」


ウィーラ「お代はいただくよ。」

サクラ「勿論お支払するわ。」


ウィーラ「どれ、ついておいで。」

ウィーラはカウンターから出てくると地下に繋がる扉を開けて中に入っていく。


長い階段を降りて重厚な鉄の扉を開けると召喚の間に着いた。

広いスペース。石壁。殺風景。

四隅に低い柱の様なもの。

地面には魔方陣。


そこには魔力が吹き荒れているようだった。

アリアがよろめく。ヒナが支える。

左手よりレイが現れる。


荘厳で華麗な精霊王の姿。

神聖で優しい精霊力が俺達を包む。

アリアはしっかりとして地に足をつけて立つ。


ウィーラ「何者じゃ!」

レイ「精霊王のレイよ。」


ウィーラ「精霊王じゃと!サクラ、お前は何を連れてきた!」

サクラ「ウィーラ、この人達は樹海王国の王とその妻達よ。心配しないで。ただこの場所を借りに来ただけよ。使い魔契約をしたいだけ。」


アスタロト「見事な竜脈ですね。」

ルシー「そうね。この魔力なら強力な使い魔が召喚できるわ。流石深淵の魔女サクラね。」


この場所に来た始めから、全く動揺も無く。

涼しい顔で立っている二人。

いやむしろ生き生きとなった二人の会話。


ウィーラの瞳が紅く変わり、俺達を見詰める。

ウィーラ「そこのよろめいた娘が人間なのは分かるが、他のものは鑑定出来ないし、鑑定できても人間と表示されるが明らかに違うじゃろ。」

俺は人間ですけど。


サクラ「そうね。強力な人達よ。

さて、召喚の儀式に入る前に、ウィーラが心配しだしたので、ヒロト様、ウィーラに私達の正体を見せても良いでしょうか?

いずれ召喚の際は姿を見せる必要がある者もいます。

ウィーラは、竜脈の魔女として、いにしえよりこの場所を守護しているもの。他言無用の約束をすればお互いに約束を破る事は無いわ。」


ヒナとユイのためだし、サクラが言うから問題無いだろう。

みんなが俺の方を見ている。

「いいよ。サクラに任せる。」

いつも人任せ。丸投げの俺です。

ウィーラ「分かった他言無用としよう。」

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