第149話 傭兵国家マナセル(その2)

俺は妻達と傭兵国家マナセルに来ていた。

観光ですよ。

特に何かするつもりはありません。


「次は武器屋か訓練所かな?

傭兵ギルドは行かなくてもいいや。

冒険者ギルドみたいに面倒な事になりそうだ。」


アリア「ギルドに行かないのですね。

ちょっとホッとしました。

知ってる人と会ったらどうしようかと、ドキドキしてました。

ここから近いので先に武器屋に行きましょう。

こっちです。」


アリアに案内されて武器屋に着いた。

とても大きな3階建て石造り。

大剣が店の看板になっている。

中に入ると、武器が雑然と置かれている。

カウンターから店員のおばさんがこちらを見る。


店員「いらっしゃいませ。」


武器の殆どが大剣、ハルバート、盾。

力任せに使うものばかり。

その材質は多種に渡る。


「大きくて重い武器が多いね。」


アリア「そうね。傭兵の戦い方によるからだね。

傭兵は力任せの攻撃が多いわ。」


「うちで造ってる武器の方が性能が上だな。」


サクラ「そうねー。

付与も大部分が攻撃力UPだわ。」


アリア「なんかごめんね。

昔来たときは凄い憧れの武器がいっぱいあったと思ってたけど、今見るとそうでもなかった。」


「いいよ。世間のレベルが分かった気がするし。」


店員に聞こえないように、こそこそ話をしながら武器を見ていく。


一回り見て、収穫はほとんどなかった。


「帰ろうか。」

サクラ「そうだね。」

武器屋を出た。


「次は訓練所だ。」

アリア「訓練所はこっちよ。」

アリアに案内されて訓練所に向かう。


訓練所も石造り。

円形闘技場だな。

観客席もある。

勿論屋根は無い。


観客席の出入口から訓練所に入る。


大声と金属同士がぶつかり合う音が響き渡る。


大剣と大剣、大剣と盾。

力任せに叩きつける。


剣は叩き切るものだからしょうがないけど、相変わらず技は無いなぁ。


周りで見学している見知らぬ人達は、憧れの表情で見惚れている。


掛け声、気合い、力強さや迫力はあるんだけど、恐くは無い。


冷静に訓練風景を見ていると、訓練所から声が掛けてくる者がいた。


男「おい、そこの女連れの坊主。」


声の方を見る。

いかにも傭兵って感じの大男とその取り巻きがいた。


「俺の事ですか?」


男「そうだ、この訓練を目にして白けているようだが、傭兵を嘗めてるんじゃねえぞ。」


「別になめてませんが何か?」

あら。こんな奴ら多いね。


男「俺が直々(じきじき)に相手してやるから訓練所に下りてこい。」


取り巻き「傭兵ギルド副ギルド長のパラダグ様が声を掛けて下さってるんだ。すぐ下りてこい。」


「お断りします。」

男「何!生意気言うな!」


「帰るか。」

男達は何か騒いでいるが、無視して皆と観客席の出入口に向かった。


訓練所の出口に向かって歩いていると、駆け足で先程の男達が追い付いてきた。


男「おい!逃げるなよ!」


「逃げてませんよ。帰るだけです。」


男「屁理屈言うんじゃねえ!その綺麗な女達を、置いていくなら逃がしてやってもいいぞ。」


そっちか。全く妻達が綺麗過ぎるからだね。


「お断りします。彼女達は妻なので、妻を置いて行く訳無いでしょ。」


男「何!ふざけるなよ。

お前をぶっ飛ばせば周りの女も目を覚ますだろう。」


男は大剣を抜いた。

「武器を出したら殺されても文句は言えないよ。」


ムラマサに手を添え、妻達に念話を飛ばす。

ムラマサの魔力が身体を覆う。

(みんな、手を出すなよ。)

みんな(はーい。)


男「そんな細腕で俺の大剣を受けられるのか?」


男は上段から大剣を降り下ろして来た。


見え見えなんだよね。

神眼の未来眼使うまでもない。

右に躱しながら抜刀。

降り下ろして来る両手の手首を、峰打ちで打ち上げる。

大剣が宙を舞う。

返す刀で首に峰打ちで袈裟斬り。

男は勢い良く倒れて、ピクリともしない。


まあ、峰打ちなので、死んでも知らんよ。

取り巻き達は驚き、唖然としている。


ムラマサを納刀しながら妻達を見る。

「帰ろう。」


現場を後にして、妻達と都市の出口に歩いていく。

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