第145話 VS連合軍(その4)

商業国家トレセル。


樹海王国を探っていた密偵が王宮に戻ってきた。

王宮の執務室では王と宰相が待っていた。


樹海王国とエルフ軍の戦争を監視していた密偵。

結界により今まで樹海王国と会話が全く出来なかった。


今回の戦争で結界の外に出ている樹海王国に、隙をみて会談出来ないか探る事も重要な任務として行動していた。


密偵「樹海王国の戦力は言語を絶します。

圧倒的な戦力です。

1万弱のエルフ軍は20人程度で殲滅されました。

その中には四霊獣、不死王、精霊王が居ました。

それらに勝るとも劣らない者達が他にも居ます。」


王「なんと言うことだ。

四霊獣の一体や不死王だと!

その中一人だけでも国は滅びるぞ。」


宰相「そんな国に宣戦布告してしまったのですな。」


王「それで会談は出来そうか?

何としても和解し停戦しないと国が持たない。」


密偵「樹海の王を魔王認定する国とは会談しないとの事です。」


宰相「なるほど、先ずは魔王認定を解除する事が必要か。」


王「樹海の王は人間だったのだろう?」


密偵「はい。お借りした国宝の鑑定眼にて確認しました。」


王「おお!人間は魔王にはならない。これで我が国の言い訳も立つ。早急に魔王認定を取り消せ。」


宰相「承知しました。」


王「これで1歩前進出来るな。」


宰相「魔王認定解除後は会談の申し込みを再度行うのだ。お前は密偵を続けて、会談申し込みの機会を探れ。」


密偵「はい。承知しました。」


王「買い占めた食糧と備蓄している食糧で持たせないといけないな。質素倹約の特例措置はまだまだ続ける必要があるな。」


商業国家トレセルでは、戦時の特例法により、質素倹約の特例措置を実施している。


何故ならば、自国では食料の生産はしておらず、他国に頼っている。


その流通により利益を上げている。


各国に派遣している自国の商人から買い上げる事で食料を賄っていたのだが、大陸の食糧庫として名高い食糧生産最大のガラード王国から全く食糧が入ってこなくなったことにより、食糧難が続いているからだ。


宰相「会談の道筋が見えただけでも、有り難いと思います。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


ステラド帝国。


皇帝の執務室で皇帝、宰相、将軍が話をしている。


魔王討伐の連合軍は大きくその陣容を縮小し、現在は1万に減らしている。

当初の十分の一だ。

討伐は既に諦め監視が主な任務となっている。

その為、将軍マシランは帝都に戻っていた。


皇帝「やはり樹海王国と戦争することは無理があるのだな。」


マシラン「密偵から報告があった陣容をみると全く勝ち目は有りません。魔王認定を解除して停戦協定を結ばないと帝国は滅亡します。」


宰相「食糧危機になる前に停戦協定を結びたいところです。」


皇帝「食糧危機も樹海王国の戦略なのだろう。」


マシラン「そう考えて間違いは有りません。樹海王国では全く食糧難にはなっていないようです。」


皇帝「うむ。魔王認定は取り消そう。元々樹海の王は人間だと分かっていて魔王ではないのだからな。」


宰相「それが良いでしょう。」


マシラン「密偵からの報告によると、魔王認定中は会話も出来ないので、早急の対応が必要でしょうな。」

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