第125話 VS勇者(その4)

一方、逃げる勇者達。

タクミ「ちくしょう、ちくしょう!ユイがユイが・・・・。」

泣きながら走るタクミ。


シレオマとシエットが隣を走る。

シレオマ「ユイさんの敵を討つのです!」

シエット「そうね。もっと強くなってリベンジよ。レベ上げしましょう。早く剣聖と合流した方がいいわね。」


シレオマ「待て。」

シレオマが突然立ち止まると、両手を開いてシエット、タクミを立ち止まらせる。

シレオマ「何者だ!」

シレオマは茂みに短剣を投げる。


短剣を投げた茂みから黒猫が飛び出した。

タクミ、シエットも黒猫を見る。


黒猫(ミサキ)の身体が、子猫からライオンの大きさに徐々に大きくなっていく。赤い目、尻尾が二本。

ミサキ「町に潜入して住民を殺しておいて、逃げられると思ったか?」


シレオマ「黒猫、赤い目、二本の尻尾・・・。深淵の魔女の使い、猫又のミサキか!」

タクミ「深淵の魔女?猫又?」


ミサキ「ほう、よく知っているな。」

シエット「深淵の魔女も樹海王の一味か?」


ミサキの周りに複数の黒い影が現れる。

黒い影からブラックドッグが出現した。


ブラックドッグ達はシエット、タクミに襲いかかる。

ブラックドッグ達の猛攻を必死に防ぐタクミとシエット。

タクミは聖剣で、シエットは杖でブラックドッグ達の牙や爪を受ける。


ブラックドッグ達は何時の間にか数がどんどん増えていく。

タクミ「クッ、大して強くはないが、この数は厄介だ。」


ブラックドッグ達は回りを取り囲む。

正面のブラックドッグが牽制し、タクミとシエットの死角から攻撃してくる。

その為、ギリギリで攻撃を避けるのがやっとで攻撃に移れない。

シエット「連携は大したものだわ。」

タクミ「このままではじり貧だ。」


シレオマとミサキは対峙している。

シレオマは踏み込みミサキを上段から切り落とす。

ミサキはヒラリと身を躱す。


ミサキの右前足の爪が伸びてシレオマを襲う。

シレオマは大剣で受ける。


ミサキは回転して後ろ足の爪で攻撃。

シレオマは避けきれず、浅く切り裂かれる。


シレオマは何とか防御して致命傷を避けているが、あちこち傷ついていく。

シレオマ「ダメだ、こっちは強すぎる。」


シエット「タクミ、呪文詠唱するから、盾になって!」

タクミ「分かった。」

タクミはシエットの前に出てブラックドッグ達からシエットを守る。

シエットは呪文詠唱後叫ぶ。

シエット「神聖結界!」

シエットとタクミの周りに結界が張られた。

ブラックドッグ達の攻撃は結界に弾かれる。

シエット「シレオマ、こっちよ」

シレオマはミサキの攻撃を大剣で受けながら、ブラックドッグ達を後ろから切り払い結界に飛び込む。


ミサキ、ブラックドッグ達は結界を取り囲む。

シエットは呪文を詠唱後叫ぶ。

シエット「転移!」

結界の中のシエット、タクミ、シレオマの姿が消えた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


シエット「どうやら逃げ切ったみたいね。」

シレオマ「ケルベロスやヘルハウンド、ブラックドッグ、ゴブリン、オーク等がいるなんて、まるで魔王軍みたいだ。」


シエット「そうね、どうみても魔王軍よ、亜人や魔物が町にいるなんて考えられない。人間もきっと洗脳されてるのよ。」

シレオマ「あの黒い鎧の奴らもなんかおかしかった。多分魔物だ。」


俺達は勇者達の会話を聞いている。


サクラ「不穏な事言ってるけど、どうする?

もうすぐ樹海王国を出て教国に入りそうよ。」

「うーん。どうしよっかなー。

殺すのも後味わるいしなー。」


ユイ「殺すのは止めてください。」

ユイは消え入りそうな声を出して俺の袖を掴む。


スパ「小蜘蛛が勇者達の身体に付いているので、この後の情報は収集は出来ると思います。」

「そっか。教国の情報も欲しいし、このまま泳がそう。」


サクラ「分かった。」

サクラは口に握った右手を当てる。

サクラ「ミサキ、戻っておいで。」

黒猫のミサキが子猫の形態となり転移で戻ってきた。


「ミサキって喋れるんだね。」

ミサキ「はい。にゃー。」


ヒナ「かわいいー。」

サクラ「そうよ、可愛いでしょ。そしてとっても強いのよ。」


サクラはミサキに両手を伸ばす。

ミサキはサクラの胸に飛び込む。

サクラはミサキを抱き抱えて頭を撫でている。

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