第123話 VS勇者(その2)

勇者達の様子を俺達は念話で見ていた。

いつものリビング。

いつものメンバー。


「消えちゃったよ。」

ハク「そうねー。小蜘蛛ちゃん達は追えないよね。」

スパ「そうですね。小蜘蛛達に探索スキルは有りません。」


コボミ「闇魔法が使えるコボルトを派遣して探しましょうか?」

サクラ「ダンジョンスキルで位置は分かるはずよ。」

ヒナ「本当だ。屋台の近くにいるわ。」


屋台の映像が念話に表示される。

屋台の店主が顧客と話してる隙に焼き鳥が2本空中に浮かぶ。

勇者達が盗み食いしているようだ。


ヒナ「ドロボーだね。」

「うん。あれはひどい。お金ないのかね。」

スパ「お金は持ってるはずです。」

サクラ「戦争前はアラント領と取引があったからねー。」


屋台の近くに人間の小さい女の子。

その女の子に後ろから近付くゴブリンがいた。


その時。急にファイアーランスが歩いていたゴブリンに放たれた。

ゴブリン「ギャー」


ゴブリンは火だるまになり転げ回る。

女の子は後ろを向くとビックリして泣き出した。


女の子「ゴブさんがー!」

集まってくる人達。


その中には、亜人や人形の魔物達がちらほらといる。

この町は他の町より人間以外の種族の数は少ないようだ。


ユイが姿を現し、女の子を庇うように立つ。

タクミ、シレオマ、シエットも姿を現す。

シレオマは転げ回るゴブリンに止めを差す。


シレオマ、シエットは人間以外の種族を見て露骨に嫌な顔をする。


ユイ「危ないわ!近づかないで。」

ユイは近寄ってくるゴブリンやコボルト達を警戒する。


女の子「お姉ちゃんがゴブさんを攻撃したの?」

ユイ「ゴブさん?そうよ危ないところだったわ。」


女の子は泣きながら急に走り出す。

女の子「おかあさ~ん。グスン。あのお姉ちゃんがゴブさんに魔法を放ったの。ゴブさんが、ゴブさんがー。」


タクミ「ゴブさん?どういう事だ。」

シレオマ「この町は魔物どもに支配されてるようだ。」


遠巻きに、勇者達を見ている住民の中にいたコボルト。

シレオマは素早く踏み込み切りつけた。

コボルトは咄嗟に避けられず、首を斬られた。


「キャー。」

住民達の悲鳴が上がる。


黒いフルプレートアーマーを着たオークの衛兵達が走って来た。

衛兵「何があった!」

オークの衛兵達はハルバートを構えて勇者達と対峙する。

住民「こいつらが行きなりゴブさんを殺した。通り魔だ。」


衛兵「何!貴様ら!住民に手を出しやがって、ただで済むと思うなよ!」

タクミ、ユイ「住民?」


女の子とその母親が勇者達から逃げるように衛兵元に走りよる。

そして、衛兵の後ろに隠れた。

女の子「助けて!」


衛兵「こんな小さい子までこんなに怯えてるなんて、許さん!」


ユイはファイアーランスを衛兵に放つ。

衛兵はファイアーランスをハルバートで切り裂く。


勇者の回りには赤い目の黒い大きな犬ヘルハウンドが現れ、勇者達を囲む。


ヘルハウンドはユイの右側からが飛び出し、ユイの首に噛みつく。

タクミ「ああああ!ユイいいいい!」


タクミはヘルハウンドに剣で攻撃するがヘルハウンドは剣を躱す。

ヘルハウンドが喋った。

ヘルハウンド「お前ら、仲間を殺しやがって。次はお前らの番だ!」


シエット「え!犬が喋った?それよりユイ!大丈夫か!」

タクミはユイを抱き起こすがユイは首を噛まれて死んでいた。

タクミ「ゆいいいいいい!」

タクミは衛兵達、ヘルハウンドと、その回りにいる赤い目の黒い小さな犬ブラックドッグ達を睨む。

シエットが慌てて走ってくる。

回復魔法をユイにかける。

肉体の損傷は回復し首も元に戻るが、ユイが生き返る事はなかった。


シレオマは衛兵達と戦っていた。

シレオマ「こいつら強い!」

オーク兵はオークソルジャー、オークジェネラル達だ。

身体はフルプレートアーマーに隠れているが強力な魔力は隠せない。

黒いフルプレートアーマーのオーク達は、教国一番のシレオマの斬撃をハルバートで難なく受ける。

その上、強力なハルバートで追撃してくる。

シレオマはハルバートを辛うじて受けるがバランスを崩す。

ハルバートの更なる追撃を転がりながら避ける。

シレオマが大剣を構え息を切らす。


ブラックドッグ数匹がタクミの死角に回り込み、タクミに飛びかかる。

タクミは何とか躱すが、ユイの遺体を手放す。


そこに不気味で濃厚な魔力が満ち溢れてきた。

ケルベロスのコボ2が現れた。


コボ2「おい!お前ら覚悟しな!」

タクミ、シレオマ、シエットはコボ2を見て恐怖して震えている。


シレオマ「こいつには勝てない。」

シレオマは懐から魔道具を出す。

シエットは呪文を唱える。

シレオマ「退却だ!」

地面に魔道具を叩きつける。


閃光が目を覆う。


閃光が収まると町からタクミ、シレオマ、シエットの姿が消えていた。

ユイの死体だけが倒れている。

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