第100話 武道大会(その2)

大会会場に入り席に着いた。

ボックス席で大変良い席だった。


「この試合のルールって模擬刀で戦うんだね。」

ヒナ「そうみたいだね。

真剣だったら殺しちゃうからね。」

「でも、殺しちゃダメって書いてないよ。

このルールは、模擬刀で試合するけど

『結果死んでも知りませんよ。』って読めるな。」

サクラ「そうだよ。この大陸のルールはどこもそう。」


「ふーん。でも攻撃魔法は禁止なんだね。」

サクラ「手加減出来ないからね。

同じ魔法であっても、攻撃された方の能力や耐性によって、死ぬ場合と全く効かない場合がある。今まで会った事もない、初めて戦う相手に加減なんて出来ないよ。」


「魔道具では何とか出来ないの?」

サクラ「魔道具で威力を減少させたら勝敗は難しいわね。

本当は平気なのに、魔法の威力が強いと負けたり、

逆に本当はその魔法を浴びたら死んじゃうのに勝ちになる事も有りそう。師匠と弟子のようにお互いの事を良く理解出来てないと、魔法の模擬戦は出来ないでしょう。知らない人同士なんて、命を掛けた決闘以外無いわね。」


「う~ん。死ぬ程度の魔法を浴びても瀕死で生き残るとか。」

サクラ「そんな魔道具があったら戦争で使うだろうね。

回復魔法と合わせれば敵の魔法は無効に出来ると同義だ。」

「そうかぁ。」


サクラ「それ以前にそんな理論が成り立つなら、魔法の絶対防御も可能になる。研究はしてると思うけど、実現は難しいだろうね。

武道大会の為に研究することではない。」

「なるほどねぇ。」


「なんか生死を賭けてるのに、中途半端だね。

真剣で魔法有りにして生死をかけるか。

模擬刀で殺さず。

のどっちかにすればいいのにね。」

サクラ「そうだね。

真剣で魔法ありで生死を掛けると出場する人がいなくなるので、

模擬刀で殺さずじゃないと大会は成り立たないかな。」


みんなで座って試合を観戦する。

雷槍のラクトーはやっぱり欠場だった。

試合が進んでいく。

ライゴーの妹ライカは紅剣のシーズクアに負けた。


この世界には剣術が無い事に気付いた。

技が無いんだ。獣人国だけかな?

剣のスピード、力の有無で大体勝敗が決まる。

剣と剣をぶつけて力で吹っ飛ばして、

体勢が崩れたところ追撃する。

力任せ。

剣を避ける人はほとんどいない。

盾で受けるくらいだ。

技術がないなら、見る価値は無いな。



準決勝まで進んだ。


勝ち上がった4人は、


紅剣のシーズクア

疾風のライゴー

闇のクロニス

剣聖アバンニ


第一試合

紅剣のシーズクア VS 疾風のライゴー


シーズクアは人間。

女性の傭兵。

赤い大剣を持つ。

がっしりとした体格。

女子レスラーのように、かなり身体を作ってる。

大剣を持つぐらいだからね。


「模擬刀のはずなのに、あの赤い大剣はいいの?」

サクラ「自分の武器を真似た模擬刀よ。」


シーズクアもライゴーも中段の構え。


シーズクアはジリジリと自分の間合いまで近付いていく。

ライゴーは前後にステップ。

バネが有りそう。


ライゴーの剣は速かった。

シーズクアが剣を振り上げ、振り降ろす。

それより前にライゴーの袈裟斬りが決まった。



第二試合

闇のクロニス VS 剣聖アバンニ


剣聖アバンニの不戦勝。


クロニスは魔族の工作員だ。

準決勝までの試合中に鑑定で見た。

種族が魔族だったので間違い無い。


偽装の魔法で羊の獣人に化けてたんだね。


「サクラ、クロニスは種族が魔族だったんだけど、魔族って何?」

サクラ「人間とほぼ変わらないわ。

魔力が高くて肌が紫なだけ。

中には角が有ったり、

尻尾が有ったりする者もいるけどね。

クロニスは偽装の魔法で

姿を変えてたみたい。」

「そうか。有難う。」



決勝

疾風のライゴー VS 剣聖アバンニ


剣速はほぼ互角。お互い上段から振り降ろす。

剣と剣がぶつかる。ライゴーは舌を打つ。

アバンニの方が力が強い。

アバンニが押す。

ライゴーは体勢を崩す。

アバンニの追撃が決まる。


剣聖アバンニの優勝で幕を閉じた。


スパが俺の斜め後ろに現れた。

スパ「ヒロト様、獣人族がガランド軍を発見しました。」

「分かった、城に戻ろう。」

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