第94話 VS妖精族(その3)

妖精を捕獲した妖精ホイホイは樹海に帰ってきた。

サクラの魔道具にて魔法を封印した妖精達。

世界樹の里の西にある『白虎の塔』に軟禁した。


長老の集落襲撃時に妖精族の戦死者は多かったらしい。

妖精ホイホイは数機残しているので、

逃げた妖精がいてもその内捕獲するはず。

今回解放した精霊達は喜んで

世界樹のもとに移り住んだ。


小人族はその後、アキートとデレイズが小人族長老ホビダンと外交交渉の末、属国となった。

脅していないとアキートが言ってたけど、謁見の間で会ったあのメンバーを見たら、ビビるよね。

従って、世界樹北西の小人族と妖精族の領地も俺の勢力の範囲となった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

妖精の一人が長老フェルリを見つけて走り寄っていく。

始めに捕獲した集落のおさだ。

長「長老様、どうなっているのですか?いきなり我々は変な飛行物体に吸い込まれた。

ここはどこですか?」

フェルリ「エルフに騙されて樹海の勢力と戦争したのじゃ。」


長「戦争!

我々には何の連絡も無かった。」

長が驚き大声を出す。

周りの妖精達がフェルリと長の方を見る。静かに二人の話を聞き入る。


フェルリ「こんなに相手が強いとは思わなんだ。

相手はゴブリンとコボルト。

我の魔法で脅かして、世界樹をエルフに還そうと思った。」


長「深淵の魔女様の結界や魔道具が一切使えなかった。

ゴブリンやコボルトごときでは無いですよね?

長老の集落の者にさっき聞きましたが、魔法が全く通じなかったそうじゃないですか。」


フェルリ「そうじゃ。

皆の者、よく聞いてくれ。」

フェルリは経緯を話始めた。


フェルリ「始めはオークの群れが樹海を襲った。

エルフの里がオークに奪われ、

エルフ達が我々の集落に逃げてきた。

それを我々が保護した。」

長「エルフは昔からの付き合いもあるし、世界樹の素材を手に入れる為のつて。保護は当然と思います。」


フェルリ「その世界樹が問題なのじゃ。」

長「世界樹はいにしえよりエルフの物。

何が問題か分かりません。」

フェルリ「まあ、最後まで聞くのじゃ。」


フェルリは聞いていた妖精族に向き直り話を続けた。

フェルリ「湿原の蛇王の勢力とダークエルフ、それとコボルトとゴブリンの勢力でオークの群れを倒したのじゃ。

その時はそう思っておった。


やがて、蛇王とダークエルフは領地に帰り。残ったのはコボルトとゴブリン達。それらを統べる『人間の王』。


エルフよりそう聞いたのじゃ。

そして世界樹奪還の要請があった。」


長「人間の王!」

長は忌々しげに呟く。


フェルリ「長よ。その反応は良く分かる。我もその時は同じ思いじゃった。


我々の隙を窺い仲間を拐う。

我々の領地を勝手に荒らし、

素材である草花や魔物達を無断で採取する。


忌々しい人間達が湿原の蛇王とダークエルフ達を言いくるめて世界樹を奪った。そう思ったのじゃ。


世界樹は我々妖精とエルフが大切に守ってきた。人間には渡せん。」


長「その通りです。

世界樹は人間には渡せません。」


フェルリ「それが間違いじゃった。」

長「間違い?」


フェルリ「我は世界樹をエルフ達に還すため、エルフの里にいる人間の王に会いに行った。


そこで人間の王は『樹海の王』と名乗った。」

長「樹海の王!なんて不遜な。」


フェルリ「我はそこで怒り、

世界樹をエルフに還して、出ていけと言った。」

長「それは当然でしょう。」

妖精達は皆頷く。


フェルリ「それが間違いだったのじゃ。」

妖精の男が割り込む。

男「なるほど、そういう背景か。

世界樹は我々妖精とエルフの物。

ここから逃げ出し、

深淵の魔女様に協力を仰ごう。」


フェルリ「話は最後まで聞け!

我々の主張が間違いだったのじゃ。」

男「え!」


フェルリ「世界樹は物ではない。」

男「物じゃ無かったら何ですか?」


フェルリ「精霊王が代替わりしたのを知ってるか?」

妖精達は首を振る。

長「薄々は気付いてましたが、

それが何か?」


フェルリ「新しい精霊王は『世界樹』じゃ。」

皆「世界樹!」


フェルリ「エルフの里は、

元々は世界樹と精霊達が住まう場所。

精霊王はエルフの里と言う言葉を嫌う。気を付けるのじゃ。

今後あの場所は『世界樹の里』と言うのじゃ。


我々妖精とエルフが精霊達を無理矢理捕まえて、精霊と世界樹からあの場所を奪った。


そしてエルフは長い間精霊達を奴隷として扱き使って来た。

妖精はエルフ側に立ってそれを進めた。


新精霊王の世界樹はの嫁じゃ。

世界樹は人間の王に『世界樹の里』を

エルフの手から奪還と精霊達の解放を依頼した。」


フェルリの孫である将軍フェアルがその話の後を続けた。

フェアル「悪者は我々だ。

世界樹と精霊から『世界樹の里』を奪い。長い間エルフと共に精霊達を虐げ。素材を得るために世界樹を切り刻んできた。」

長「・・・。」


男「エルフが悪いのです。

保護していた何処に行ったのですか?

奴等を差し出し赦しを請いましょう。」

フェアル「保護していたエルフは達は全て殺されたよ。」

男「・・・。」


長「何とかしてここから逃げて、

深淵の魔女様に匿って貰いましょう。

闇の王の100万の軍勢から

守ってくださった魔女様なら

どんな勢力でも何とかしていただけるはず。」


フェアル「それは無理だ。

深淵の魔女様も樹海の王の嫁だ。

我々を捕まえた魔道具も魔女様の力。

そして闇の王は樹海の王の配下だ。」

長「え!」

男「そ、それほどの勢力に戦争を仕掛けたのですか?」


フェアル「更に言うと、

不死王、四聖獣も樹海の王の配下。

それでも、樹海の王の軍勢のごく一部だ。」

話を聞いていた妖精全員唖然となり言葉もない。


それもそうだろう精霊王、深淵の魔女、闇の王、不死王、四聖獣。

この中の一人でも敵対すれば、

妖精族は滅びる。

それがこのメンバー全員を敵に回し、

しかもごく一部の戦力と聞けば、

その全体の想像も出来ない。


フェアル「何処にも逃げ場はないよ。

それに罪を償わないで逃げてどうする?」

長「・・・。」


フェルリ「我は精霊達と世界樹様に償う必要があると思うのじゃ。」

長「償うと言っても、いったいどうすれば?」


フェルリ「それを決めるのは精霊王様と精霊達、樹海の王じゃ。

我々はただ、頭を垂れ赦しを請い。

配下に入り全力で役目をこなすしかないと思うのじゃが。」

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