第89話 獣人国王ライガン(その2)

ライガンは頭を下げて挨拶をした。

ライガン「俺は獣人国王ライガンだ。」

「樹海の王ヒロトだ。」


ライガンは挨拶もそこそこにカインに話しかける。

ライガン「おお!カイン様。お久し振りです。」

カイン「久しぶりよのう。」

ライガン「息災でしたか。」

カイン「かわりないのじゃ。」


後ろからガネーシャが近づき、ライガンとカインの会話に割り込むように、ガネーシャはいぶかしげにライガンを見ると、ヒロトに話しかける。

ライガンは舌打ちしたような顔をする。


ガネーシャ「ヒロト王様、ご無沙汰しております。その節は助けていただき有難う御座いました。」

「息災そうで何よりだ。」


「それでライガン殿、本日どんな用事で来られたのかな?」

ライガン「おうおう、それがだな。我が領地がオークどもに荒らされて領民達が飢えている。食料支援を頼みたい」


リザ(失礼ですね、斬り捨てましょう。)

ムラマサ(斬り捨てる。)

ハク(うん、失礼だ。ぶっ飛ばす。)

ハピ(ぶっ飛ばすぞ。)

ルシー(消し去ります。)


(そうだねー。ちょっとお願いする態度ではないな。)

アキート(おお!こんな風に念話で会話出来るのですね。)


「我が国に何かメリットはあるのですか?」

「おいおい、かなり稼いでいるみたいじゃないか。貧しい隣国に食い物ぐらいくれたってバチは当たらんだろう。」


(駄目だなこいつ。国のトップの意識ないな。)

ハク(ダメダメです。)


「お断りします。お帰りください。

謁見は終わりだ。」

周りに言う。


アスタロトがライガンの後ろに出現し、ライガンの襟首を掴み引きずる。

アスタロト「王様が終わりと言ってますので、お帰りいただきます。」


ライガンは踏ん張ろうとしているが全く敵わない。

ライガン「おい!ヒロト勝負だ。俺が勝ったら食料を支援しろ。」

(こいつ馬鹿か?いきなり勝負って。何言ってんだ。)


ライガン「カイン様なんとか言ってくれ。樹海の民が飢えてるんだ。」

カイン「儂はここでは、何の力もないのじゃ。」

ライガン「なに。」


従者「おい!王に対して無礼だぞ!」

従者達がアスタロトの肩を押さえるがびくともしない。


ルシー「お前らの方が無礼だ!」

ルシーは魔力と邪気を放出。


謁見の間に禍々しく濃厚な魔力と邪気が満ち溢れる。

同時にレイの精霊力が仲間達とガネーシャを包む。

ライガンと従者達が苦しくなり、力が入らない。


ケルベロスのコボ2が、黒いフルプレートアーマーのオーク兵2匹をともなって現れる。

オーク兵達は従者達を肩に担ぐ、コボ2はライガンを加えて謁見の間を出ていく。


時間の無駄だったな。


ガネーシャ「申し訳ありません。ここまで酷いとは思いませんでした。」

「ガネーシャのせいでは無いさ。主は選んだ方がいいな。」

ガネーシャ「獣人国とは縁を切ります。配下に加えて下さい。」

「いいよ。時期と手段はアキートとデレイズと相談してくれ。」


サクラ「カインの馬鹿が悪いんじゃない。」

カイン「何を言うのじゃ。」

「どういう意味?」

サクラ「カインは王様、王様っておだてられると、善悪関係なく乞われた方の味方をしてやっつけちゃう。自分にお金や食料があると後先関係なくあげてしまう。頼まれるとイヤと言えない。馬鹿なんだよ。」


カイン「助けを乞われれば助けるし、欲しいと言われれば持っているものをあげただけじゃ。住民が困っているのを解決してあげるのが王様じゃ、馬鹿ではないのじゃ。」

サクラ「ほらね、こいつがここにいるから、同じ奴だと思ったんじゃない。頼めば断らないだろうとね。もし断ってもカインなら何とかしてくれるだろうと思ったんだよ。カインを樹海の外に捨ててくるかい?」


カイン「なにー。酷いこと言うなー。」

サクラ「私が何もしてないのに、泥棒に騙されて襲撃しに来たのは、忘れないよ!」

カイン「我に嘘をついた泥棒が悪いのじゃ」


サクラ「今カインが食料を持ってたらあげたでしょ。」

カイン「飢えそうな住民がいれば食料をあげるのが当然じゃ。」


「カイン、例えば領主が沢山食料を隠し持ってて、住民が飢えているとして、領主が住民が飢えるから食料をくれ!て来たらあげるかい?」

カイン「あげるのじゃ、領主が食料を持ってるか、持ってないかは分からんのじゃ。」


「おれは違う考えだ。」

カイン「何でじゃー。」


「カイン、自分で考えな。

考えた結果、もし俺の考えに反対するなら、眷属化を解除するから、ここを出ていけ。

考えは人それぞれだから否定はしないが、一緒に行動は出来ない。」

カイン「むむむ。」

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