第86話 アラント辺境伯

暫く町の中を確認しながら領主の館に到着。

館の門番2名、ここも黒いフルプレートアーマーのオーク。

門番「王様、お待ちしておりました。お通りください。」


玄関の前で、コボ5、アリア、ライゾウが待っていた。

ライゾウ「遅かったなー。ん!くんくん、なんかいい臭いするぞ。」

「屋台で串焼きを買って食べたんだよ。」


アリア「え、お昼ご飯用意してたのですが、どうしますか。」

「食べる食べる。」

笑って答える。

リザ「食べます!」

リザはまだまだ食べたりないようだ。


領主の館に食堂で昼食を食べて、応接室でお茶を飲みながら伯爵の到着を待つ。

謁見に立ち合うのは、ガリア町に一緒に来たメンバー以外では、コボ5、アリア、ライゾウ、アキート、人化したデレイズ。

「デレイズ、やることがいっぱいで大変だと思うけど宜しくね。」

デレイズ「遣り甲斐のある仕事です。精一杯務めさせていただきます。」


オーク兵が辺境伯の到着を報せに来た。

「コボ5、領主の館に使用人を雇っていいからね。

お金はあるでしょ。」

そういえば、料理も紅茶もアリアが作ってた。

「はい、分かりました。」

コボ5は堅いなぁ。


みんなで謁見の間に向かう。

辺境伯を控えの間から呼び出す。

辺境伯登場。


短い金髪、貴族服、体格のいい厳ついおっさん。

アラント「この度は謁見をお許しいただき有難うございます。辺境伯のアラントと申します。」

「樹海の王ヒロトだ。」

アラント「まず、この度の謁見のお礼に、差し上げたいものがございます。この場にお持ちしても良いでしょうか。」

「許す。」


アラント「もって参れ。」

アラントの家来がお土産を持ってきた。

大量の『塩』だった。

デレイズ「ほほう、これはこれは。」

デレイズは塩を手で掬いひと舐めすると表情を崩した。


まだ樹海では塩の精製に目処がたっていない。

塩は樹海でとれないので輸入に頼っている。

だから嬉しい事は嬉しいがお土産が塩ですか。


だが、デレイズが喜んでいるところを見ると何かあるな。

アラント「この塩は我が領地で取れる岩塩から作ったものでございます。我が領地には良質の岩塩を大量に採取出来る事から、ガラード王国内で流通している塩の80%を占めております。」

ふむふむ。


アラント「前置きは無しとさせていただいて、二つお願いがございます。お話しても良いでしょうか。」

話すだけなら、特に問題無いよな。

「許す。」


アラント「おお、有難うございます。

一つ目は商売の事でございます。

この辺りがヒロト王様の領地になってから、現在我が領地と直接の交流がありません。

ヒロト王様の国からは、大量の素材やこの大陸では見た事のない珍しい魔物の素材がアキート商会から流れて来ますが、我が領地でも大人気の品が多ございます。

他の国、領地を経由した商売となっていますので、お互い不便なところもございましょう。

直接商売が出来るよう便宜をいただけないでしょうか。」


「うむ~。」

と腕を組んで考えているフリをして。

アキートに念話を・・・!

アキートは眷属じゃないから念話出来ないよ。不便だ。

まあ、商売だけならいいか。

その為の塩だったか。他を経由すると塩も高くなるぞ。

と言うことだね。


「許す。詳細はアキートとアキート商会のショーと詰めるように。」


アラント「有り難き幸せでございます。

もう一つは・・・、この岩塩ごと我が領地、私も含めて、ヒロト王様の配下にしていただけないでしょうか。ガラード王家は既に風前の灯。

ヒロト王様の領地はこれから明るい未来が待っています。

是非とも、配下にしていただき、一緒に繁栄させていただきとうお願い致します。」

「ふむ。・・・。町に入って見てると思うが、我の国は人も魔物も差別なく生活する方針だが、問題はないか。」

アラント「全く問題ございません。もし、配下にしていただければ奴隷も廃止して亜人の解放にも務めます。」


「うむ。この度の戦(いくさ)は、そなたの寄子であるアシュー男爵が原因だった事についてはどう思う。」

アラント「その事はお詫びのしようがございません。

申し訳御座いませんでした。

しかし内情を話させていただければ、アシュー男爵は王族より、無理矢理寄子にさせられた者であり、王族の言うことしか聞かない為、大変手を焼いておりました。

逆に感謝もしている状況でございます。」


「デレイズ、どう思う。」

デレイズ「アラント辺境伯様のおっしゃってる事は真実でございます。今回いただいた塩はアラント辺境伯の領地では最上級のもの。

しかも、この量。

辺境伯が現在手持ちで出せる最大最高の物を持ってきております。

恐らくヒロト様がゆくゆくは、塩を精製するであろう事を見越して、背水の陣でこの度の会談に望まれた事でしょう。

恐らくこの話が流れれば、本日ここに辺境伯が訪れた事は周知の事実ですので、王国内では危うくなることでしょう。

ヒロト様が領地の拡大を望んでいれば、またとない好機。

ですが、ヒロト様は特に領地の拡大を望んでおられないので、ヒロト様のお考え次第でございます。」


アラント「おおお、デレイズ様は、そこまで読んでおられたか。」

うん。デレイズ凄いね。

昨日会談に参加するように伝えてから、必死に調べたんだろうな。

寝てないんじゃないか?アンデットは睡眠不用なのか?


よし!決めた。


「許す。時期と手段についてはデレイズと詰めろ。」

アラント「有り難き幸せでございます。」

アラントは頭を下げた。

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