第85話 ガリア町(その3)

今日はアラント辺境伯と会談する事になった。


会談の場所は城ではなく、ガリア町で実施する事にした。

まだ人間の国に樹海王国の内情を知られたくないから。

あとはガリア町の状況を確認したいって事もある。

会談は午後だが、午前中から町に行く事にした。


ということでガリア町の門近くに転移し歩いて来た。

一緒に来たのは、

右手ハク、左手レイ、左目アイ、

身体にスラオ、腰にムラマサ。

リザ、ルシー、ハピは人化。

コボミ、スパは隠蔽。

ヒナとサクラは忙しくてパスらしい。


はたから見ると俺とリザ、ルシー、ハピの4人で歩いているように見える。


「おお。並んでるね。」

ハピ「盛況だねー。」

リザ「人間とコボルト、ゴブリン、オークが混ざって並んでいるを見ると不思議な気分ですね。」

ルシー「人間の国では見られない光景よ。」


列を無視して門に歩いて行く。

魔物達は俺達に気付くと頭を下げる。

人間達は。

「おいおい、横はいりするなよ。」

っていってるけど無視。

その人達も魔物達が頭を下げるのを見て、察したらしく口をつぐむ。


黒いフルプレートアーマーを着たオーク兵2体が門番をしていた。

門番「王様、お疲れ様です。お通りください。」

「ご苦労様。問題はないか。」

門番「問題はございません。」

「うむ。宜しい。」

右手をあげて偉そうに門を通り過ぎる。

威厳も大事なのだ。多分。


ガリア町に入った。


この町を占領した際、町から逃げた住民は少ない。

一度逃げた住民達も、住んでいる人達の状況を聞いて戻って来ている。

税金は安くなったし、樹海から入ってくる食料は美味しい。

住みやすい町になったと評判だ。


昨日の今日だが、ガリア町はダンジョン化しているので、既に冒険者ギルド、鍜冶ギルド、錬金術ギルド、商人ギルドの支部が出来て、建物もダンジョンの機能で建てられてる。


みんな仕事熱心なので、各領地から人材も派遣されて業務も開始している。眷属間は念話が出来るので、必要に応じてすぐ相談出来る事から距離的な問題は少ない。召喚や転移出来る眷属も増えて移動も速い。


冒険者ギルドは旧ギルドの跡地に二回り大きい建物を建てたようだ。

狩り用ダンジョンの入り口を冒険者ギルドの敷地内に設置していた。

現在人間の冒険者はいないので、魔物の冒険者が各領地から派遣されて来ている。なかなか盛況だ。


樹海の眷属以外の魔物は、各領地の者が狩っているので、人間が狩る分は残らない。従って、狩り用ダンジョンの素材、魔石が必要となる。


今までは領地の集落まで買いに行くか、集落から売りに来ないと入手出来なかったが、狩り用ダンジョンが出来たので町で入手出来るようになった。魔物以外の各種草花、果実、木材、鉱石。ありとあらゆるものがダンジョンで採取出来る。宝の山だ。


魔物の冒険者がダンジョンで狩ってきたり、採取してきたりした素材で潤っている事から魔物と人間の交流があることは納得出来る。

魔物達にも『種族の差別はしない』俺の方針が浸透していて、人間に優しい筈だ。俺の眷属だから、命令は徹底されるのだ。


輸送が不用になった事で、値段も下がっている。耳の早い他国の商人達がガリア町に訪れているが、今後更に商人の数は増えるだろう。

宿屋や飲食店も殖やす必要があるかもなぁ。なんて考えながら歩いていると、見覚えのある屋台があった。


以前ヒナと食べた事があるボアの串焼き屋だ。

屋台のおじさんも替わらずだ。


おじさん「おお、坊主。息災だったかい?」

「元気だったよ。」

おじさん「この町は大変だったんだよ。樹海の王って言う人が来てな、町の領主と兵士をぶっ飛ばして領主が替わった。それからは平和で住み易い町になったよ。」


「そうかぁ。ボア肉は順調に入荷出来たの?」

ちょっと苦笑いしながら訊ねる。


おじさん「それがな、ボア肉は入手出来なくなって、また店を閉めようと考えていたら、『魔豚の肉』というエリュマントスの肉より上等の肉が樹海から入手出来るようになった。それが旨いのなんのって、食べてみな。銅貨3枚だ。」

「良かったねぇ。

1人2本で8本ちょうだい。

はい、銅貨24枚。」


銅貨24枚渡して、串8本受け取った。

それぞれ2本づつ、リザ、ハピ、ルシーに渡す。


「旨い!」

みんな美味しくいただきました。

ルシー「このタレってうちのに似てるね。」

「うちのタレは、以前ここで貰ったタレをベースに、料理おばさんが改良したんだよ。」

ルシー「なるほど。」

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