第59話 精霊王

俺たちは世界樹を見上げる。


圧倒的な大木。

見ただけで崇拝してしまいそうな壮大さ。

天辺が高すぎて見えない。

葉が生い茂っていきいきとしている。


世界樹の下ではダークエルフ達が泣いていた。

悲願だったらしい。

エルフは世界樹の守り人。

ダークエルフは世界樹のもとを追われて長い年月が立つ。

初めて世界樹を見た者もいるだろう。

感動でうち震えている。


「レイ、世界樹と一体化してみて。」

何か分かることもあるかと、ちょっと思って試しただけのつもりだった。


レイ「はい。」

レイも軽い感じで一体化した。


レイが世界樹の中に消えていく。

レイ(ああああああ・・・)

突然念話で悲鳴をあげた。


<レイが世界樹に進化しました。>

<レイが精霊王になりました。>


メッセージが流れた。


「え!」驚く。

ハク「どうしたの?」

「レイが世界樹に進化して、精霊王になった。」


ハク「精霊王!?」

ルシー「精霊王は現在この世界で一番精霊力が大きい精霊がなるのよ。随分長い間、精霊王は代替わりしなかったのだけど。

ふ~ん。世界樹が精霊王ね~。」


レイが世界樹の中から出てきた。

「はあはあ。」と息を切らせて、疲れた様子で片膝をつけ俯く。


「大丈夫?」

レイに駆け寄り肩に手をおく。


レイ「世界樹の記憶が頭の中に流れ込んで来て混乱した。今は世界樹に進化したので整理出来た。」

おや?急に話し方が流暢になったぞ?

世界樹と一体化したからか。


「話し方が流暢になったね。」

レイ「今は世界樹の言葉で話している。レイの言葉に戻すことも可能。」


「取り合えず説明を聞くからそのままで続けよう。一体化は解除されたんじゃないの?」

レイ「世界樹に進化したので、解除は出来ない。本体はこの世界樹だが貴方のそばにいたいので、分身体を出した。」


レイは立ち上がり、姿を見せる。

分身体は進化前のレイの姿だった。


レイ「今、分身体はレイの姿になってるけど、こんな姿にもなれる。」

レイの姿は光に包まれ、変貌を遂げる。


精霊!まさしく精霊と呼ぶに相応しい。いや精霊の女王に相応しい出で立ち。


光り輝くエメラルドグリーンの長髪。

切れ長の目。

エメラルドグリーンの瞳。

肌は薄い黄緑。

ここまでは前と変わらない。

可憐な美少女は大人になっている。

神々しいオーラを身に纏う。

服は白い古代のチュニック。


「綺麗だねー。」


レイ「どっちが好み?」

「前の方が良いな。今の姿は神々し過ぎて、恐れ多い。」


レイ「分かった。」

レイはもとの姿に戻る。


レイ「世界樹になって、色々分かった。」

レイは精霊、エルフ、世界樹の事を話始めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

ここは多くの精霊が集う神聖な場所だった。

世界樹は精霊に安らぎを与える存在として精霊に好かれていた。


そこにエルフがやって来た。

エルフ達は初めは世界樹と精霊達を敬い良い関係だった。


ある日、精霊王が代替わりした。

新しい精霊王は自分が王の座から落ちるのを恐れた。


この世界で一番精霊力のが高い精霊が精霊王になるため、いつ自分以外の精霊が、レベルを上げ進化し自分より強くなるか心配で堪らない。


精霊王は精霊達がレベルアップや進化しなければ、いつまでも今の地位にいられると考えた。

精霊王は全ての精霊に命令出来る。


精霊王はエルフと約束し、エルフが精霊を使役させるようにする。

契約内容は、経験値は全てエルフが取得し精霊には割り振らない。


精霊王は精霊が逃げないように精霊の腕輪を造りエルフに渡す。

そうしてこの場所は精霊の狩り場に変わった。


エルフとその盟友である妖精が大勢押し寄せ、精霊達を捕まえていく。

世界樹はそれを見ている事しか出来なかった。


エルフは世界樹の薬効にも目を向けた。

世界樹の葉、枝、雫は素材となり、効果が非常に大きい回復薬を作成出来る事が分かり、独占し始めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「そうか。やっぱりエルフ達は許せないな。」

レイ「ヒロト様、お願いです。不当な契約に囚われている精霊の解放を手伝って。」


「勿論だよ。エルフ達に捉えられている精霊がいたら解放しよう。

一緒に悪いエルフ達を退治しよう。

そしてここを精霊達の憩いの場所に戻すんだ。」

レイ「有難うヒロト様。私もヒロト様の為に一緒に戦う。」


「それから俺達もここに住むことにしよう。レイがここにいるならここが俺達の住みかだ。」

レイは俺に抱きついてきた。

レイ「嬉しい。」


ヒナ「DPも貰い放題だしねー。」

レイ「分身体で一緒に居られるけど、やっぱりみんながここに居てくれると嬉しい。」


「しかし、そうすると魔族だけではなく、エルフも攻めて来るな。

俺達がいるときは迎撃するけど、居ないときが心配だ。

エルフの結界より強力な結界は無いかね。」

ルシー「四聖獣結界が一番強力だわ。四聖獣を探すか召喚して契約するのが難しいけけどね。」


「四聖獣結界!いいね。」

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