夕焼け
これは遠い日の記憶。
「エルお姉ちゃん!」
「ルシー、今日は何して遊ぼっか?」
「えへへ、来てきて、エルお姉ちゃんに見せたいものがあるんだ!」
「見せたいもの?」
首を傾げるエルレンシアにルシフォンは笑顔で頷いた。
「いーからいーから!」
幼いルシフォンは彼女の手を引いて駆け出した。
「ここは?」
「待ってね、もうすぐだから」
ルシフォンの言葉にまたエルレンシアは首を傾げた。
一体何があるというのだろうか。
そんなことを思っていれば隣から元気なルシフォンの声が聞こえた。
「見て!エルお姉ちゃん!」
「え…?………………ぅわぁ…綺麗……」
ルシフォンがエルレンシアに見せたかったもの。
それは山に沈む、美しい夕焼けの景色。
「綺麗?」
「うん。すごく綺麗。」
エルレンシアの言葉にルシフォンは笑みを浮かべて自分も夕焼けに見入っていた。
「覚えてるかな……」
16になったルシフォンは珍しく王立院の中を歩いていた。
目当ての人はすぐに見つかった。
「エ……!」
声をかけるのを躊躇ったのは先客がいたからだ。
「ディルバート」
「あ、お兄さっ……じゃなくて、シャルーノ先生」
「呼び方なんてどっちでもいいよ、いつもルシフォンのこと面倒見てくれてありがとね、」
「いえいえそんなっ…!」
ポンっと頭に置かれた手にエルレンシアは少しだけ頬を赤く染めた。
「エル、」
「?あ、ルシフォン…!」
「ルシフォン……兄よりも友人の名を呼ぶか…」
「シャル兄さんには用ないから」
「っっ…………」
「エルに見せたいものがあるんだ、今いい?」
「ぇ?あ…うん大丈夫、」
泣きそうになっている兄を置いてルシフォンはエルレンシアの手をとって駆け出した。
「そんな急いでどこ行くのー?」
「秘密!」
しばらく走って二人がついたのはエルレンシアがいつも天体観測をしている所より少し森に近い高い場所。
「ここで何があるの?」
「いいから。もうすぐだから見てて、」
「見ててって……」
ルシフォンとエルレンシアは静かに森を眺めていた。
「あっ!」
森を隠すように薄らと雲がかかり見えるのは沈んでいく夕日。
「覚えてる?小さい時にも見た……」
エルレンシアは夕焼けを見ながら頷いた。
「覚えてるよ、あの後どこ行ってたんだーってお兄さんに怒られたよね、」
「シャル兄さんはいつもうるさいからね」
「心配してたのよ、」
「わかってるよ……でも、星じゃなくてたまには夕焼けもいいでしょ?」
「そうだね、」
二人は美しい夕焼けを眺めて、子供の頃と同じ無邪気な笑顔を浮かべた。
アルヴィラッツストーリー らんこ @Linglan_xx
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