第6話お出かけ
俺とロゼリーヌは街に出向いていた
いろんなところを歩き回り、気になったものを見たりとぶらぶらと他愛のない時間を過ごした
ベンチに腰掛けて休んでいると隣に座っているロゼリーヌは俺に話しかけてくる
「どうですか アルベガの街並みは」
にこやかに話しかけてくる彼女に俺は若干顔を赤らめながら
「いい所だと思うよ 活気があって街の人達も親切だ」
と答える
それを聞いたロゼリーヌは嬉しそうな顔をする
少し経つとロゼリーヌは心配そうな顔を向けて
「記憶…戻ったりしないんですかね?」
と俺に言う
そう、今の俺は記憶喪失……という設定にしている
自分の名前を除いて出身も家族もなぜ森の中にいたのかも、全て分からないとロゼリーヌには食後に伝えた
転生のことを話してもきっと混乱させるだけだろうし神様にも迷惑がかかるかもしれない
「あ、心配しないで下さい!きっと戻りますよ!」
と俺が落ち込まないようにロゼリーヌは慌てて励ますように言う
「ありがとう 優しいねロゼリーヌは」
と言うとロゼリーヌは恥ずかしそうに俯く
騙す事に罪悪感も感じるが今はこう言うしかないのだ
それから王城への帰り道を一緒に歩いているとロゼリーヌの足がピタリと止まる
ロゼリーヌの視線の先を見ると何やらくじ引きのようなものをやっていた
「何か気になる?」
ロゼリーヌはこくんと頷き一緒に見に行ってみる
そしてくじ引き屋を見ると
「あの四等のネックレスが……その、可愛いので」
と言いながらロゼリーヌは財布のようなものを出して中から銀色の硬貨を取り出す
くじは1等から12等まである、1等は何やら高価そうな宝石で12等は古びたハンカチのようなものだった
1回引いてみる感じなのだろうか まあ確率はそこまで低くは
「あの、10回分お願いします」
サラッとロゼリーヌは言い放つ 王家の娘と言うだけはあるのだろうか
「おやロゼリーヌ様 ありがとうございます」
と恐らくくじ引き屋を運営しているのであろう老人が優しく微笑む
まあさすがにこれだけ引いたら……
盛大にフラグを回収するロゼリーヌ、7等が3つ5等と8等が1つそして6つの11等という悲しい結果である
ロゼリーヌは悲しそうに下を向く 老人も申し訳なさそうな顔をしている
へたりこんだロゼリーヌの財布から銅色の硬貨がするりと落ちる
それを拾ってロゼリーヌに渡す するとロゼリーヌはこっちをじっと見つめて
「タクミさんも……一回どうですか?」
と涙目になって俺に銅貨を差し出す
この銅貨が一回分なのだろうか しかしロゼリーヌの様子からしてこれ以上財布にはお金は入っていないのだろう。
俺は悩んだがロゼリーヌの押しに負けやらせてもらうことにした
そうしてくじを引く
引いた紙の上には4と書いてあった
老人はベルを高らかに鳴らし
「出ましたァー!!4等出ましたぁー!!おめでとうございます!!」
と高らかに叫んだ ロゼリーヌは驚愕の顔で俺を見つめる
そうして俺の手元にネックレスが置かれた
少し歩いた広場でネックレスをロゼリーヌの首に掛ける
慌ててロゼリーヌは
「いえ、これはタクミさんの……物ですから」
と苦い顔をしてネックレスを外そうとする
「だって、元々はロゼリーヌのお金でしょ?」
と俺が言うも
「いえ、私が渡したお金ですので…」
と1歩も引きそうにない
どうしたものか
少し悩んだ俺は笑顔でロゼリーヌに言う
「じゃあそれは俺からのプレゼントって事で、どうかな?せっかく渡したプレゼントだから受け取って貰えると有難いな」
それを聞いたロゼリーヌは顔を赤らめながら深々と頭を下げた
そのまま帰路に着いた俺は食事を頂いて部屋をあてがってもらいベッドに体を預ける
「明日から……なんか、こう勇者とか冒険家みたいな事やった方がいいのかな」
魔物を倒したり未知の宝を手に入れたりという王道の展開を想像した
しかし同時にあのドラゴンが頭によぎる
あんなラッキー、もう起こりえないであろう 俺は複雑な気持ちのまま眠りについた
「凄いのね、999って」
神様は1人呟いた。
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