第5話ラッキーボーイ
とてつもない落雷がドラゴンの体を貫く
俺は咄嗟に後ろへ飛び退く
ドラゴンの体は黒く焦げそのまま少し震えたかと思うと後ろへ倒れた。
やがてピクリとも動かなくなった。
ドラゴンが絶命した瞬間空はあっという間に晴れ模様に変わった。
……
俺は空に浮かび上がった虹を見てほっと息をついた。
ロゼリーヌは何が起きたのか理解出来ていないようだった。
……俺もだが。
その後ロゼリーヌを支えながら森を抜ける。
街のにぎやかな声が聞こえ始めた所で俺の意識は途絶えた。
「…さん?ミさん?」
声が聞こえる…… 少しだが聞き覚えがある声だ。
「大丈夫ですか?タクミさん!?」
ぼやけた視界はゆっくりと声の主を捉える。
「……ロゼリーヌ?」
視界と共にぼやけた記憶を頼りに名前を呼ぶとロゼリーヌは嬉しそうに
「良かった!!」
と嬉しそうに手を取った。
こんなに可愛い女の子に手を握られるなど普通の頃の俺ならありえなかっただろう。
恥ずかしくなった俺はゆっくりとロゼリーヌの手を剥がしてベッドから立ち上がる。
ん?
今気づいたが俺が眠っていたベッド とてつもないほどの装飾が施されている。
支柱のあらゆる所に綺麗に輝く宝石が埋め込まれている。
俺は慌ててロゼリーヌに問いかける。
「な、何このベッド!?めっちゃ高級そうなんですけど!?」
と語彙力の無さを表したような感想をこぼす。
「とにかく食堂に来てください!」
とロゼリーヌは嬉しそうに手招きをする。
俺は黙ってロゼリーヌの後をついていった。
食堂では何人もの使用人の人達が並んでいた。
俺は用意されていた椅子に座って机の上に並べられた料理を見て思わず息を呑む。
とても高級そうな料理からは馨しい匂いがする。
思わず涎が出そうになる。
「えぇっと……タクミ君……だったかね?」
俺の対角線上に座るロゼリーヌに対して奥の 言わゆるお誕生日席側に座る髭を生やした小太りの男の人が口を開いた。
「あっっえと……はい!」
おそらくこの人こそこの立派な家の家主だろう とするとロゼリーヌは……娘さん?
「娘を助けてくれた事を心より感謝する。」
男の人は深々と頭を下げる、 成程やはりそういう関係か。
しかし俺は感謝されるようなことはしていない。
「あの……俺はロゼリーヌさんに助けられた側です むしろ俺の方が感謝をしないと」
「そんな事ありません!!!!」
ロゼリーヌは慌てて否定する。
「まさにドラゴンが迫る直前 私の前に立ち、魔法であのドラゴンを一撃で仕留めてくれたじゃありませんか!!」
とロゼリーヌは豪語する。
「ま、魔法って……?」
身に覚えのない功績を語られ俺の頭の中は軽くパニックを起こす
「貴方が祈りを捧げた瞬間 天から放たれたとてつもない威力の雷……同じ魔法使いとしても感服しました!」
なんだかとてつもないすれ違いが起きてないか?
「とりあえず大変だっただろう 少しでももてなしをさせてくれ」
とロゼリーヌのお父さんは語る
そして再度料理を見た瞬間俺の腹の虫が盛大に鳴き声を上げた
「ハハッ心ゆくまで食べてくれ」
そういってロゼリーヌのお父さんは自分のステーキらしき物にナイフを入れ始める
それに合わせてロゼリーヌもナイフとフォークを持ちこちらを向いてにこやかにほほえむ
遠慮なく食べてくださいという意思表示なのであろう
ここまで頂いた厚意を無駄にするのは悪い
俺もスプーンを持ちポタージュの様なスープを1口さらい口に運ぶ
穏やかな味わいが腹の中を満たしていく
スープの味自体の主張はそこまで激しくはないがとろみがあって様々な野菜の味を微かに感じた
そのままステーキにも手を出してみる
ナイフで一口大に切り食べる
肉厚でジューシーだが柔らかくかんだ瞬間にじゅわっと肉汁が染みでる
先程のポタージュとは異なりすこし濃いめの味付けがまた今の腹にぴったり染みた
すぐに次の肉にがっつきたくなったがあわててゆっくりと食事を進める
こんな周りに高級なものがいくつもあるのだ 万が一こぼしたりしたら取り返しがつかない
俺はゆっくりと高級料理を噛みしめた
「私のお父様はジェリナルと言います」
食事を終えロゼリーヌに案内された部屋で話を聞いていた
「あんな体型ですけど一応国王なんです」
こくおう?
「タクミさんの国の国王はどんなお方ですか?この国にでは見た事がないですし……シェスタに来たのは初めてですよね?」
淡々と話を続けるロゼリーヌだったが俺はあまりの驚きに汗が止まらなかった
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