祭りのあと
@k-tonbo
第1話
昨日は君も僕もキラキラしていた。
僕は、生まれて初めて好きな子を祭りに誘った。心臓がバクバクしてはじけ飛びそうだった。本当は断られると思っていたけれど、その子は笑顔で僕に一言「いいよ。」と言ってくれた。ただそれだけで純粋に嬉しいと感じた。
それが一昨日のこと。それから昨日祭りがあった。
あの子は浴衣を着てやって来た。青色がベースの綺麗な浴衣だった。
まさにこの子のために作られたような、この子が着るために作られたんだろうか…。そう思ってしまうくらいぴったり似合っていた。
「おまたせ。待った…?」
「いっいや!そんなことないよ!?」
そんなやり取りをかわす二人もこの人混みの中ではただの石ころも同然なのだ。相手がどんなに、自分がどんなに綺麗にしていても。
その子は、キラキラしていた。後で聞くと、僕もキラキラして見えたらしい。
祭りとやらはいくつになっても人を自由にしてしまう。
射的をやって、金魚すくいをやって、スマートボールをやって、りんご飴を食べて…。
ふと自分の手に視線をやるとあの子は僕の手を握っていた。すると目線を合わせず僕におもむろに問いかける。
「私たちって…何なんだろうね?」
ううん…、少なくともまだ恋人同士とかそういうものではない。
ならば、僕らのこれはなんなんだろうか。
僕らの間に夏にしてはあまりにも涼しすぎる風が吹き込んだ。祭りの提灯がゆらゆら揺れる。
「そうだなぁ、僕らは…友達だなぁ。」
声が上ずる。あぁ…僕らは友達だ、友達なんだ。自分で言っておきながら残念な、寂しい気持ちになった。そんな姿を見せまいと、気持ちを押し殺して少し弱々しい笑みを向けた。
なぜかあの子は少し残念そうな顔をした。そして、少しばかり困った様子の笑顔を返された。
そんな僕を尻目に花火はどんどん上がっていた。
21:30を時計が指す。
「…そろそろ帰ろっか。」
あの子が僕の手を離してそう言った。終わったな…。祭りも、花火も……僕も。
それが昨日のことだった。
祭りのあと @k-tonbo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。祭りのあとの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます