第9話 女より友情?
「ほう、気に入りの神がいるのか。俺が取り持ってやろうか?今は祭なことだしな」
『よいのか!?』
「いやまあ、うちの子もアレだったようだし、これでチャラな」
オーセカムイ――「オーセでいい」というのでオーセさん――は小さいことにこだわらない、大らかなタイプらしい。すぐに狽と仲直りした。
だが神の名を聞いてとたんに曇り顔になった。
「山の女神はだいたい怖いぞ。お前にはあまり薦めたくないが……ま、今日この領域くらいなら大丈夫か……」
オーセは多少渋ったものの、さっそく神々の宿場へ連れていってくれた。秋穂たちだけでは入れないが、オーセが顔パスで門をくぐりぬけ、巫女さんが応対してくれた。
「では山姫神様にご連絡致しますので、今しばらく庵でおくつろぎください」
指し示された場所にはわたぐものような座布団。台には不浄祓いの薄茶とお菓子がすでに用意されてある。その他色とりどりの生菓子ビュッフェ、全国の摘みたて茶ドリンクバー、暇つぶしの雑誌や通信機器も。なんと完璧な応対、お客様はほんとうに神様な場所なだけある。
オーセたちは堂々としてるけど、秋穂はちょっと緊張しながらちょこんと座った。するとつんつんと腰のあたりに触れてくるものがあった。
振り向くと、小さな……子犬?が三匹。ぶっとい足にくるんくるんな毛……好奇心いっぱいのくりくり目で秋穂を見上げている。犬…じゃない…オオカミ…でもない……?
「お、南の獅子神様じゃん」
「獅子神様……?」
栄太も気づいて手を差し出すと、小さな獅子神様たちはその手にじゃれついた。
「わあ、かわいい。犬さんさすが、すぐにお友達なんだね」
「こいつらこう見えて俺たちより偉いし強いんだぜ」
「ほんと?どれくらい強いの?」
「風神雷神と張り合えるかもな」
「ちっちゃくてもすごいんだね」
「でっかいのもいるけど……おいおい」
気づくとどんどん増えていく。周囲が獅子神様たちで埋め尽くされた。オーセや狽にもじゃれつき、秋穂の膝にも数匹乗っかってきた。
「わあ、すごいいっぱいー」
「獅子神たち、今は遊んでやれん。またあとで……あっこら」
帽子を持って行かれたオーセは幾匹かの獅子神様たちとおいかけっこしながら、どこかへ行ってしまった。狽はまだ残っている獅子神様3匹ほどによじのぼられ下敷きになりながら、ぶへーっとつぶやいた。
『……結局あの親子は肝心なところで我を放っておくのだ…どーせどーせ……』
「セッティング完了だしあとは自分でなんとかしろよ。あ、お邪魔だから席を外すか」
「そうだね」
『まてまて二人とも我を一人にするでない!』
「ヘタレんなよ……。お前だって一度くらいリア充目指せ」
『できる奴の上から目線は子々孫々なのだなあ~カムイよ~』
「カムイじゃねえ栄太だ。俺だってフラれっぱなしだからここに来てんだろうが」
『それもそうであるな。どちらかといえば聖の奴めだな。あやつ、我らの敵っぽいな』
「まー確かに、昔っから俺が気に入った女の子は皆あいつに向くな。こないだだって……」
「女の人にもてるもてないってそんなに大事なの?」
秋穂の言葉に栄太と狽はハッとした。年端もいかない少女の「みっともないよ」と言いたげな目はストレートに刺さった。
「あー秋穂、これはさ……」
「山姫神様のおなりです」
巫女さんの声。3人はちょっと緊張した。
「そなたらか? わらわを呼んだのは」
山姫神が現れた。秋穂と栄太はいすまいをただし、狽はぎくしゃくした。
『よ、呼びたてて申し訳ない、我が、お友達で、散歩で、お見かけして、』
「ぬ?ヤギよ、具合が悪いのか? これ獅子神たちよ、それはファーラグではないぞ。あまり上で転がるでない」
獅子神様たちはそう言われると、狽のたてがみの間にもぞもぞ隠れて、離れないよーと意思表示。
「南から来たからか少し寒いらしいっすよこいつら。それに重くはないから大丈夫」
「そうか。……おや?」
緊張のあまり上手く話せない狽に代わって答えた栄太に山姫神は眼を止める。そして大きな目をさらに広げる。
「そなた……!カムイにそっくりだな!あやつの子孫か!男版か!まじか!あーっはっはっはっはっ!」
山姫神は栄太を見て大笑いする。ぽかんとする一同をよそに彼女は腹を抱えて笑いつづけている。またもや先祖の関係者か、だからこの縁じゃなくて……と栄太は肩を落とした。やがて山姫神はなんとか笑いをおさめて言った。
「あやつはなかなか芯のある奴であった。少しつまんだが美味であったぞ」
は、い!? 全員混乱した。
「そなたはどうかの。どれ」
そう言って栄太の頬をそっと挟み――口づけした。
狽は硬直し、秋穂は衝撃が大きすぎた。
が、当の栄太はなんだか具合が悪いだけでキスの良さが感じられないので、じたばたし続けた。
ようやく解放されて栄太は、秋穂の教育に悪いもの見せつけやがって、と怒りをぶつけようとしたが、ぜーぜーしてうまく言えない。
やっとで「あんたいちご飴くせえ……」と山姫神につぶやいた。山姫神は少女に似合わない妖艶な笑みを返す。
「犬さんの不潔!ばかあ!」
走り去る秋穂。
栄太は(なぜこっちが被害者と思ってくれない)と心で泣いた。こんな具合が悪くなるありがたみゼロのキスがあるか。
山姫神はクスクスと笑う。
「カムイほどの味ではないのう。だが生きのいい若い男はこれまた……」
……山は時に男を喰う……。栄太は(この神やべえこれは良縁の対極…)と直感した。
「どうじゃ、わらわが召しあげようぞ? 霊獣として生きぬか?」
「いーや、骨までしゃぶられそうだ。行こうぜ狽、怖すぎだ……」
『栄太のばかー!絶交だー!』
栄太が、は?と思っていると、狽は秋穂のようにダッと走り去っていった。正確には獅子神様たちがみんなで担いで楽しそうに運んでいった。
「なんなんだよ、二人とも……」
「おや友情に亀裂を入れてしまったかの。すまぬのう、山は時に友情を試すものよ。ザイルで運命を分ける等々いいものじゃ。生にあがく生き物の姿は愛しうてのう。あーっはっはっは」
高らかに笑って立ち去っていく女神。
あの女あー…。見た目は少女でも十分女だ。オーセがお薦めしないのがよく分かった。
とにかく走り去った二人を追いかけようとした栄太だが、ガクッと膝をついてしまった。くらーっとする。貧血……いや精気を吸われたのか。
その時、紙がつんつんと栄太の額をつっついた。受験票だ。
『じかんダヨー、じかんダヨー』
……なんつータイミングだよ。考えてみれば山姫神にお近づきになる為の受験だった。じゃあもうやめて帰るか……どうするか……。
***
秋穂はがむしゃらに走っていたが、あまり離れて迷子になってはいけないと思って立ち止まった。狼狽の鬣はちゃんと細く巻き付いているが、切れたりするかもと心配になった。
ふと、オーセが獅子神様たちとごろごろ転がって遊んでいるのが見えた。
「おう、秋穂と言ったな。狽の奴はフラれたか」
「……犬さんも狽さんも女の人の事ばっかり……大人の男の人って……」
むうっとした顔の秋穂にオーセは頭を掻き、「ふーむ。大人の男はいやか。よし、宿主、あとは任せた」とつぶやく。そして上着の毛皮を脱いだ。
とたんにオーセは頭を抱えてうつむく。秋穂がどうしたんだろうと近寄ると、「あんの野郎、勝手に……」とオーセはだるそうに顔を上げた。
「オーセさん?」
「俺はもうオーセじゃないよ。長谷部和樹12才。小学6年。オーセの子孫」
「ええっ!?」
つまり栄太とははるか遠い親戚になるんだろうか。和樹と名乗った少年は6年生にしては小柄だけど、雰囲気が栄太より落ち着いて見える。
「この毛皮、うちで代々保管してんだけど、オーセが宿ってるんだ。着たら憑依される。俺も神様集会って一度見てみたかったから、あいつに体を貸してやったけどさ」
膝に寄ってきた獅子神様を撫でながら、ため息をつく小学6年。
「楽しみにしてた豪華海鮮バイキングはあいつが代わりに味わうわ、浮かれて船から落ちかけるわ、他の客に毛皮マントの恰好撮られて『変な子供』でSNS拡散されまくるわ……あいつのマイペースはいつもいつも……」
うわあ気の毒だなあと痛ましく思った。この気苦労が、ため息の似合う小学生を作り上げたのだろう。
「ところで女のケツばっか追いかけてるお兄さん方はどうしたの?」
『もう追いかけはせん……』
どろどろしい狽がいつの間にか秋穂の隣にいた。
『秋穂ーっ、もう栄太など置いて帰るぞーっ。ぱぱと母君が待っている家へ帰るのだーっ』
ああ、狽からすれば想い人を栄太にとられた事になるのか。かわいそうになって秋穂は獅子神様たちと一緒に狽をぽんぽんした。和樹という少年は腕を組んで首を傾げる。
「人狼とヤギとあけび……人成分少ない三角関係だなあ。あのお兄さん軽そうだもんな。見た目綺麗なら簡単についていきそ」
「犬さんは軽くないっ。そう見えるだけだものっ。あと狽さんはヤギじゃないからっ」
秋穂は必死に訂正を入れた。そんな彼女を和樹は思案げに見つめる。
「……うちのとーちゃん曰く女の子は3才で女になる、だってさ」
「? 女の子は生まれた時から女でしょ?」
「まーいーや。めんどくさいや。秋穂ちゃんだっけ、がんばりな」
何をだろうか。
「……みつけたぞ……おまえら……」
栄太がフラフラと現れた。驚いて秋穂は栄太に駆け寄った。狽も首を伸ばして栄太を見る。
『どうしたのだ!? 真っ青であるぞ!?』
「犬さん!折り紙食べ……あっ犬さんは違うんだった!」
『とりあえず合体するぞ。それであれば体調も戻るであろう』
狼狽になったことで、気力も増えるだろう。だが巨体になった狼狽はぐったりとしてしまった。おかげで獅子神様が20匹ほどよじ登れた。
『ぐへー……これはかなり精気を吸い取られておる……完全復活まで半刻はかかる……』
「そんな……! 犬さん、犬さん!」
『秋穂、心配すんな、だいじょーぶ……狽、試験会場に行く時間だ……。もうよい、栄太よ、我は家に帰ってぱぱと遊ぶ……。うっせえ……あの女に一泡ふかせてやる…友情破壊だのなーにが愛しいだ……』
傍で見ている和樹は「口が一つって大変だよなー」と感想をもらした。
「だめだよ犬さん! またそうやってムリしたら、パパみたいになるんだから!」
秋穂は必死になって止めた。以前も父の会社の金を盗んで逃げた犯人を追いかけて数日起きられなかったのに。自分の体を無視して無茶をする犬さんが父とだぶった。
どうやら秋穂の訴えは栄太にも効いたらしい。歩きかけていた狼狽の足が止まった。
『栄太よ…山姫神様にやられたのだな。我の中で休んでおれ』
「狽さん」
『秋穂よ案ずるな。今無理矢理休ませておる。……だが栄太の為にも我は試験に出ようかと思う……』
「え?」
『こやつは我の為に怒っているらしいのでな。それに我も栄太をこのような目にあわせられて黙ってはおれん……秋穂、祈りをくれぬか』
「狽さん……」
狽がヘタレ脱出した。
***
「遅れたので五点減点でございます」
試験会場に入ってそうそう言われた。会場は四方が客席となっている。秋穂は巫女さんに案内されて客席に座る事ができた。
狽さんがんばって、と秋穂はとにかく祈り、終わったらいっぱい食べさせようと、持ってきていた紙を折りまくった。手元を見なくても折れることは折れる。
でも一泡ふかせるつもりって、どうするんだろう。客席を見渡すと、山姫神様は神々の高座でゆったりとしている。
「それではまず、力を見せて下さいませ」
試験官の指示が出る。まさかこの会場の人たちを狼狽させるんだろうか。心構えをしておかないと、と緊張していると。
狼狽はぶわっと鬣を広げた。それはものすごいスピードで伸び、そしてある一点に向かった。先には――山姫神様。
バチンッ! 植物の蔓で鬣は払われた。山姫神様の出した蔓だ。
「なんぞ。試験ではなくわらわが最初から目当てであったか? 愚かなけだもの風情が」
『けだもの風情でけっこう。試験なぞもうよい。この愚かなけだものの体が我らのザイルよ。栄太の精気を返してもらう』
周囲がざわつき、試験官たちが相談しあっている。山姫神様は片眉を上げ、フッと微笑んだ。
「ほう……めげずに向かってくるけだもの、これもまた愛らしいのう」
蔓がさらに増え、狼狽の体を締め付けていく。だが狼狽の鬣も次々と伸び、無数の腕のようになり、蔓をちぎっていく。
いつの間にか隣にいる和樹が「ガレー船ていうよりムカデ…」と不気味そうに見ていた。そうか腕がいっぱい生えている船をガレー船というのかと秋穂は考えながら、はらはらする感情が高まる。
とうとうすべてを払い、自由になった狼狽は飛び上がり、山姫神様のすぐ目の前まで迫った。
が、巨大なあけびの実が上空に突然現れ、狼狽の体を会場に落とした。
「狽さん!!狽さん!!」
飛び出しそうな勢いで秋穂が叫ぶと、狽は巨大あけびの実の下からこっちを見た。
『大丈夫だって秋穂…今終わるからな……こら出てくるでない…あほ、お前一人でやれるかよ……』
「犬さん……!」
秋穂は和樹に向き直ると、「あのっ、お願いがあります!これ、投げてくれませんか!?」と、掲げた。それは栄太の買ってくれたりんご飴、いちご飴、さくらんぼ飴、折り紙。
「飴をあっちに、そのあとで折り紙を犬さんたちに……お願いしますっ」
和樹はすぐに察し「いいよ」と気前よく引き受けた。
投げ入れられた飴は狼狽と大分離れた場所におちた。
「……あれは!!」
山姫神の顔は妖艶さが消え高揚し、ときめきを見せている。案の定、彼女は飴に目がなかった。そして思った通り、蔓が飴へと向かっていく。
「気がそれた、あとはこっちにも!」
和樹の大きい踏み込み投法で、沢山つくった折り鶴の塊が見事に狼狽の元へ。
「食べて二人とも!」
秋穂の声で狼狽ははっと顔を上げ、ぱくっと一気にすべて口の中へ入れた。
『うまいぞ秋穂!どれデザートといくか!』
そう言って狼狽は――ガバリと口を大きく開いた。赤ずきんちゃんを食べた狼のような、巨大な口。
ぱくっと自分を下敷きにしていた巨大あけびを丸呑み。むぐむぐごっくんすると。
あおおおおおおおおおおおおおおおん!!
喜びの雄たけびは会場中に振動した。
『精気は返してもらったぞ!』
静まりかえった会場。そして一寸おいて高らかな、山姫神の笑い声。
「あーっはっはっはっ、まこと気に入った! 試験官よ、こやつ、わらわがスカウトしようぞ!」
「まあ、それはようございます」
よくあることなのだろう、試験官は淡々と受け応える。
スカウトって……。秋穂と狼狽がきょとんとしていると、巫女さんたちがそそそと現れ、桶を狼狽の前に置く。
「それでは狼狽様。これから山姫神様の眷属霊獣となる儀式に入らせていただきます。この場にいる方々全員が立ち合い、介添え役となります。いえ5分とかかりません、御面倒な手続きは一切ございません、して少々血をいただきとうございます」
『むぐ……はへ…?』
霊獣になる……。秋穂は唖然とした。狼狽も突然のことに唖然としている。
その時。
ぴろりろりん。
音が鳴った。どこに隠しているのか、狼狽から聞こえている。鬣がもぞもぞと動きそして、『しまった!秋穂帰るぞ!』と言うが早く、鬣が秋穂に絡まった。
「ど、どうしたの!?」
狼狽の背中に収まりながら訊ねると、狼狽は狼狽して答えた。
『母君からだ!夕飯があと10分でできる!』
「ええっ、もうそんな時間!? どうしよう!ママに叱られる!」
『急ぐぞ! 神々殿、邪魔をしたごめん!今度な今度!』
「あのっお邪魔しました!失礼します!」
会場にそう言い残して狼狽は慌てて駆けだした。
あっというまに狼狽たちがいなくなり、試験官たちは「お止めしなくてよろしいのですか?」と山姫神様にたずねた。
彼女はいちご飴とりんご飴を片手にさくらんぼ飴を舐めながら
「まあ、母親がこわいならしかたあるまい」とつぶやいた。
「あらもしかして山姫ちゃんも母親がこわいの?」
後ろから声がして山姫神様は青ざめた。この声は大地母神様。
「またお菓子ばっかり食べて!だめっていったでしょ!」
「かか様ごめんなさいゆるして!いやー!」
彼女が母親にお尻をたたかれるのはいつものことなので、周囲はかまわないでおいた。
***
「あらあ、せっかくごちそう作ったのに、食べられないのー。そうー」
にこにこと母。
「マ、ママ、私が全部食べるよ。あとね、お土産あるの」
「おばさん、ごめん、どうしても食わなきゃならなくて、そんで……」
『……うぐー……食いすぎた後の全力疾走はきつい……』
秋穂と栄太がお土産のお守りを出すと、なんとかおだやかになった。
「栄太くん、一日ありがとう」
栄太はタッパーに詰めたたくさんの料理を母から手渡されて帰ることになった。
道路まで見送る時、秋穂は栄太に言わずにいられないことを言った。
「いいのかな帰ってきちゃって。狽さん、神様になりたがってたのに」
「いいに決まってるよ。あいつこの家が見えると幸せ気分になるんだぞ。なーんにも心残りないってことだよ。それに俺は絶対ごめんだ、あの女のしもべは」
秋穂はほっとする。色んな意味で。 栄太は逆に少し笑顔が減っている。
「それより……おっちゃん、元気か?」
「あ、うん。元気。狽さんといつも通りだよ」
「そっか……ならよかった」
父は栄太のことを忘れている。それ以前にあまり栄太に会いたがらない。栄太のいる客間に来ることはない。栄太には寂しいことだろう。
じゃーなと帰っていく栄太の後ろ姿は、そんな感じに思えた。
家の中に入ると、狽がはしゃぐ声が聞こえてきた。そばに父がいて狽を見下ろしている。
『秋穂! 見よ!』
狽がタタッと秋穂の方に向かってきた。えっ犬さんと合体してないのに走ってる!
よく見ると胴体が小さな台車に乗っており、ベルトで固定されていた。これが後ろ足の役目になっている。
『ぱぱと母君が作ってくれたのだ!どうだどうだ!』
「ふふーん、パパがDIYしたのよ。狽ちゃん驚かそうと思ってね」
母が得意げになって胸を張る。秋穂は「パパが作ったの!?すごい!」と駆け寄ってきた狽を抱きしめた。
(パパはぜったい元に戻る。そしたらまたちゃんとまた遊べるよ、犬さん)
秋穂はさっき見た栄太の寂し気な後ろ姿を思い出して、心でそう呟いた。
狼狽物語 黒川晶 @rinriririn5
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