トンチキな夢をTwitterで呟くのはよくやることではあったのですが、まさか小説になって戻ってくるとは思わなかったです。
” 彼女が箸を止め、ゆっくりとこちらを向く。
「……あぁ。……今回は、違うのか」
「え?」
「……そうか、ようやくか」
それからしばらく、黙り込んだ彼女に従うように、僕も黙々と手を進めた。”
『僕』の知らない彼女。
彼女はきっと小説の主人公たちとは違う視座であの世界に生きていたのでしょう。消えゆく世界というものに対し、おそらく誰よりも実感を持っていたように思います。繰り返される世界の終わりを彼女だけが知覚していたのだろうから。
夢が往々にしてそうであるように、記憶の埒外から現れて極めて自然に主体へと絡んでくる少女。突飛で理解不能な展開を彼女自身が生み出していく。その真意は読み取れるものではないですし、無理に読み取るものでもないでしょう。何せこれは『夢』の物語なのですから。
当然の話なんですが、僕が実際見た夢とは全然違うんですよね、これ。
僕がTwitterに呟いたのは僕が見た夢の一部分たちを繋ぎ合わせて140字に詰め込んだ、まあ有体に言ってしまえば編集した内容です。流石に過剰に盛ったり嘘を盛り込んだりしてはいないわけですが(そも夢なんで幾らでも内容を吹けるので当然それを証明できるわけではないですけど)、逐一夢の内容を細部まで言語化したところで取り留めのない描写が続くだけになってしまいます。なんでまあ、Twitterに書き込んだ時点で実際の夢の質感とは別のものになってしまっていたわけです。そういう意味で本来の夢とは別物なのです。
夢で見た本当の内容はこうしている今も僕の中から失われつつあり、やがて本当に記憶の彼方へと消失する日が来るでしょう。夢の中の世界のように。この小説の描かれなかった先の世界のように。
僕だけが夢を見たのだから、僕のみが別の視座でもってこの小説を読むことができる――というのは我ながら牽強付会の感がありますけれども、事実僕はそう思ったというのは間違いないことです。「ああ、こういう世界もあったんだな」って思わされるだけの力がこの小説にはあったし、おそらくその読書体験は僕だけが味わえるものだと思います。
唯一無二の体験をさせていただき、望外の喜びです。
勢いだけで書いたのでどうにもまとまりのないレビューになってしまいましたが、まあ夢ってそういうものですし、どうか一つ、そういうことで。