ミズイロ
TAKAFUMI
第2話
平日の朝。朝食後、瑞則は食卓でお茶をすすりながら新聞を読んでいた。
新聞を読むことは毎日の習慣だ。新聞には政治、経済、スポーツ、文化など、色々な情報が書かれている。テレビで放送されるニュースと違って自分のペースで見ることが出来る上に、自分の知りたいと思ったジャンルに関する情報にすぐアクセス出来る。そこが新聞の良い所だ。
「ミズ君って、いつも新聞読んでるね」
後片付けを終えた新太が、瑞則の向かい側に座りながら言った。
「ああ。新聞は情報の宝庫だからな」
「その割には国の情勢知らないし、一般教養も無いよね。ちゃんと読んでるの?」
隣から美空が本を読みながら会話に入って来た。
「政治や経済は飛ばして読んでる。知らない用語ばかりで全然分からないし。宇宙人来訪とか、面白そうな記事が出てないかな~っていうので読んでるのさ」
「ミステリーサークルって・・。そんなのあるわけないでしょ」
美空は飽きれて言った。
「あるかもしれないぞ。この世界は常に変化しているんだから」
「ミズ君は、もし宇宙人が出たらどうするの?」
新太が聞いた。
「それは決まってるだろ。俺のペットにして見せびらかして有名になって、取材料を取って大儲けするのだ!!」
(・・・・・・)
あまりにバカな発言を聞いて、二人は沈黙した。
「あれ?二人共どうしたんだ?」
「いや、あまりにもバカすぎてめまいがしただけ」
美空は右手で頭を抑えながら言った。
「なんだよ。金はあるに越したことはないんだから別にいいだろ?」
「そうだけど、考えが幼稚だから呆れているだけだよ」
「じゃあ他に大金得られる方法あるのかよ?」
「そもそも、何でミズ君はお金が欲しいの?」
「それは欲しいものとかいっぱいあるし、働くのが嫌だから一生分の金を一気に手に入れたいんだよ!!」
「働きたくないって・・。そんな情けないこと、お父さんの前で言う・・?」
「だって本当のことだもの。俺は普通に学校を出たら就職、なんてことしたくない!!何でやりたくもない労働なんざやらなきゃならんのだ!!これじゃあ刑務所と変わらんじゃないか!!」
瑞則は大声で叫ぶと、立ち上がった。
「いや、刑務所より自由は聞くと思うけど・・働かないでどうやって生活するの・・?」
美空は瑞則の方を見上げて言った。
「だから日本のシステムはおかしいんだというんだ!!働きたい奴や、優秀な人材だけ働けばいいだろうが!!なのに労働の義務とか作って働きたくもない連中まで無理矢理働かせるような決まりを作りやがって!!憲法改正しやがれ!!」
まるで政治家の演説みたいに叫んでいる。
(火がついちゃったよ・・)
新太と美空はお互いに思った。もうヒートアップしてしまっては、瑞則は人の話など全く耳を貸さない。普段もほとんど聞かないが。
ヒートアップ状態の瑞則を止めることは彩しかいない。しかし、彩は普段夜遅くまでゲームをしているため、起きてくるのは昼頃になる。つまり、現状、誰も瑞則を止めることが出来ない状況だ。
「そもそも利益出せない奴が働いたって何のメリットも無いだろうに。何考えてるんだよ。この国は。決まりを作ってる奴こそが真のバカじゃないか?」
完全に頭に血が上り、瑞則はさらに言葉を続ける。
「それに、人間、いつ死ぬかわからないだろ?だからいつ死んでもいいように欲を満たすことを第一優先に考えて動く。やりたくもないことに貴重な時間を潰したくない。自分のやりたいことだけに時間を使う。これが俺の考える後悔しない生き方だ!!」
言い終わると、瑞則は椅子に座った。
「あっ、今日はお台場でコンサートライブがある日だった!!行かないと!!」
瑞則は再び立ち上がり、猛スピードで家を飛び出していった。
「・・学校は?」
新太と美空は玄関の方を見て呟いた。
ミズイロ TAKAFUMI @takafumi1991
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