第14話A-5下山
私達は街へ来ていた。
今日は主人の仕事は休みだそうだ。
_嘘おっしゃい。逃げてきたんでしょ?
要するにサボりだった。
まぁ気晴らしも必要だよね。
ところで街の騒音はというとなかなか犬耳には五月蝿いもので、賑やかなのも良し悪しだなと思い辺りを見渡していると、
「あ、わんちゃんだ!」
人に指をさして駆け寄ってくる何頭かの躾の悪いガキ、、
「コラ、そんなこと言っちゃダメ」
どうせ聞こえてないんだいいだろう?
「お姉さんの犬ですか?触ってもいいですか?」
私はクミの犬ではない!
コラ、許可する前に触るな!
「大丈夫だよ?ソロ、怖くないからね」
私は怖がってなど、、、
束になって来られるとそうでもないな。
意外に怖い。
「こら、この子が怖がってるでしょ?やめなよ」
一番チビッ子いメスが一番しっかりしているのか。
_人間は不思議だな。
クミといいこの子といいなぜメスが優位に立つのだ?
犬の私にはわからないことか。
「だーれだ!」
わ。この子だと思って油断していた。
「ぅわん」
「ね?面白いでしょ?」
やっぱり仕込んだのはお前か?クミ!
「ごめんごめん」
全く悪びれた風はないな。
まぁそこがクミのいいとこなのかもな。
「ん?何か言った?」
どうせ聞こえているんだろう?
白々しい。
「バレちった」
「お姉さん?もしかしてソロの声聞こえてるの?」
ほよ?
まさかもう勘づかれたのか?
「そうだよ。ソロもみんなのこと大好きだってさ」
まだそんなことは言ってない!
嘘教えんな!うわ近寄るな!
ちょっ!主人!!
またも束になってかかってくる子供達の群れになす術なく私が頭を抱え、、、ようとしたところをチビッ子に抱え上げられて
「お姉さん手伝って。ソロを安全なとこに逃がすの。私抜け道知ってるから」
「え?あ、はい」
私はチビッ子からクミに手渡され近くの路地裏を渡り歩き、他の男衆をまいて家の近くまで帰ってきた。
「ソロ?どうしたのクミちゃんにおんぶされて」
主人は近くのコンビニエンスストアに寄っていたらしく、レジ袋を片手に下げていた。
結構恥ずかしいカッコになっているので、目を反らすがどうにも落ち着かず、
「わん」
一言だけ返した。
「エリィ私達追われてるの。
だいぶまいたけど、まだ追ってきてるかもしれない」
そんな神妙な表情で言ったら主人が信じちゃうだろ?
「クミちゃん相手は何人?」
ほらやる気出してる。
主人!相手は子供だから気にしないで!
聞こえてないよな。
「ソロ。安心してソロもクミもボクが守るよ」
きゅん
_カッコいい。
自分の胸の高鳴りを初めて聞いた。
これがときめきってヤツか。
導火線に例えた人がいるらしいが、天才だな。
っていくな主人!
社会的に死ぬことになるぞ!
「それ!捕まえろ!」
ガキが全員で主人を取り押さえた。
_負けんなよ。
主人は曲がり角に潜んでいたガキにあっという間に取り押さえられていた。
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