第13話A-4ディナー

 私のディナーは主人が作っている。

 当然クミと主人が知り合う前からだ。

「いいナ、ソロ」


ヴヴヴ


 流石にそれはクミでも怒るぞ?

 クミはそーっと私のディナーに手を伸ばしてくる。


「クミちゃんそれはやめた方が、、」


パクッ


「ッ」


「ウソ?美味しいじゃん!」

「わん!」

 おぃこら返せ!

「あ、ダメ」


 クミに馬乗りになった私は肉球でクミの胸を揉むような形になってしまった。


「あちゃぁ。クミちゃんが余計なことするから」


「助けて、腰抜けた」

 すまない。そんなつもりは。

「あと、ソロそこはダメ」


 あ、そうだな。

「ソロ!」

 主人の方向から見ると私がクミを押し倒しているように見える。


「それはダメだ「エリィ私のために?」

 あ、いやそれは違うんだ。

 私に毅然と叱りつけていた主人はクミに声をかけられて急に縮み上がり、

 真っ赤になってその場に腰を抜かした。

 ところで最近は私のモーニングをクミが作ってくれている。


 流石というべきか、慣れた手つきで作って躾までちゃんと、


「おあずけ、お手、おかわり」


 おあずけにはヨダレで、お手は頭に、おかわりはもう片方と。


 え?違う?


「どういう躾してんのエリィは。

ちょっと手伝って」


「あ、ごめん」

 この姿だけを見ていると、主人はクミより下だなと思う。

 クミは私とは同等か上。

 ということは序列はクミ、私、主人の順か。


「いい?やって見せるから覚えてね?ソロ」


 おぃそこまでしなくても。

 クミはいつの間にか、犬のパジャマを着ていた。


 全身に着込むタイプの着ぐるみパジャマだった。

 しっぽはなぜかフリフリと動いている。


 フードを被り耳はペタリとしていた。

 既に打ち合わせは済んでいたようだ。

「お座り!」

 わん!

「お手」

 クミはこの時に座っていた。


 ダメじゃん。

 満面の笑みでお座りをするクミ。


 おいクミ。

 手本はどうした?

「ダメなの。何かふざけたくなっちゃうの」

 マジメにやれ。


「は~い」

 しゅんとするクミ。するとその耳までそう見えてくる。


「お座り!」

 四つん這いの姿勢から手を足の間に、、アレ?

 間ではなく、揃えた手を両足の外についた。


_それ座りにくくないか?

 横座り?


「お座り!」

 やっとちゃんと座った。

「お手」

 クミは右手をグーにして主人の右手に置いた。

「おかわり」

 次は左手のグーを主人の右手に置いた。

「よしよしよし」

 やっぱり何か妬けつくような気持ちが沸き上がる。

「ぅわん」

「ごめんソロ許して」


 クミは私にウインクして私と場所を変わった。

 勿論四つん這いで私に駆け寄って。

_これなんてプレイ?

 クミがメスの犬に一瞬見えた気がした。


「ソロ。おあずけ」

 待った。

「お座り」

 普通に座った。

「お手」

 右手を乗せた。

「おかわり」

 左手を乗せた。

「おあがり」

 そう言って主人は今日のディナーを出してくれた。


 いつの間にか作り直してくれていた主人の手作りをクミが横からまたさらおうとしたので、クミの頭を手で押さえて、それから食べた。

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