第6話ソロ?A

 我輩は犬である。

 猫などではない!断じて!

 違うよね?


 違うといってよ主人!

 最近よく目を反らされてる気がする。


チリン


 そもそも猫でもこういうことしたら怒ると思うんだけどな。


 鈴やリボンはまだわかる。

 しかし、服ってどうなのよ?


 一応ウチら服着てるんだよ?

 こんなガマン大会みたいなカッコでまだ笑えと?


 一応主人に、、、無理か。


_クミに操られてるしな。

「ソロ?どこいくの?」


 ひ!


 こ、こっちにくるな。

 じりじりとにじり寄るクミ。


 その分後ずさる私。


「わ!」


 !!!

「うぅゎんわん」

 後ろから主人が近づいてきたことに気づかず、私はその場で気絶した。

 変な悲鳴を上げて。


「あぁあエリィやっちゃった」

「やっぱりダメじゃないか!わぁソロぉ!」

 何を泣いている主人。


 私は別に死んでないぞ。

 ただちょっと上から見えてるだけだ。

_ダメだこれ臨死体験か。

 我ながらメンタル弱ぇな。


 と思った時には体に戻っていた。

 そして、目を覚ますと同時に私はその場を飛び退いた。


 クミの顔が近づいてきたことに気づいたからだ。


 何かされると直感した時には体が動いていた。


 野生の勘は鈍っていなかったようで、私のいた場所にクミが頭をぶつけていた。


ガンッ


「いっっったぁぁい!!!」

「あぁクミちゃん大丈夫?」

 大丈夫。でもだいぶ痛い。

 ソロ?やっぱり嫌だったかな?


 当たり前だ。

 何を好きこのんでこんなロリロリしたカッコをさせられねばならん。


 私が何であるかより以前にオスであることを考えて欲しい。

 まぁこの衣装のできは素晴らしいとは思うが。


「えへ、やっぱり」

 喜ぶから言いたくなかったんだ。

「何だって?」

「衣装のできは素晴らしいとは思うが。だって。誉められちゃった」

 やってしまった。


 黙ってりゃ何てことなかったのに、なぜ黙ってなかった。


 ?いや、喋ったワケでもないのに、黙ってなかったはおかしいな?


 ん?ところで今さらだが、クミはなんで私の言葉がわかる?


 主人は普通に犬の言葉がわかるスゴい子としか思ってないけど、それもう人間じゃなくない?


 先祖が獣人とか?

 何で急にそんなファンタジーなの。



「ソロはわりと失礼だね。ブリーダーだよ?」


 マジですか!?


「知らなかっ「言ってなかった」


 言わない方が気遣わないかなと思ってさ。

 即バレしてんじゃん?

「ソロぉ!」


 山を越え谷を越え私を追っかけ始めたクミを主人が後ろから抱きしめた。


ひゃん


 腰より少し上の、、もぅこれ胸でいいな!


 ところに抱きついたもんだから走り出しの勢いと相まって思いっっっきり揉むような形に!?


 って私は何を言ってるんだ!


 ってか言わせないでくれ!


 そもそも私はブリーダーというものがどうにも信用ならない。


ぽろぽろ


 振り向いた先、クミが思いきり泣いていた。


「エリィ、どうしよ私ソロに嫌われちゃった」


 いや、別にクミのことだとは言っていないが、、私か私が悪いのかこれは。

「くぅん」


ペロペロ


 甘えた声はやはり難しいな。

 主人以外の人に使ったことないから。


 下手くそな甘え声を使いながら私は慰めるつもりで、クミの涙を拭いとった。

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