第5話夢うつつA

ザァァァァァァァァ


「くぅん」


ザァァァァァァァァ


 古い夢を見た。

 あれはまだ私がソロだった時、主人と出逢う前のことだ。


 前の主人から捨てられた私は「拾って下さい」と気持ちの籠らない文字が殴り書きされた箱に詰められ、商店街の軒先に置き去りにされた。


 どうしてもお腹の空いた私はその心ない箱から抜け出し、何か食べられそうなものを探して歩いた。

 誰も通らない商店街を抜け、縺れた足で探し続ける。


 だがそう簡単に見つかるはずもなく、


バシャッ


 遠くで、何かを投げたような音を聴きながら

 私は意識を失った。


 虚ろな視界に映ったのは、

「、、、丈夫?」

 中学生くらいの男の子の顔。

 その誰だかわからない男の子が、私を抱き止めてくれていた。


 その時のことはもう半分も覚えていない。


 覚えてはいないがそれでもはっきりとわかるのは、


ザァァァァァァ


 その子が泣きそうな顔をしていたこと。


ザァァァァァァ


 その子がドロだらけの私を力いっぱい抱きしめてくれたこと。


ザァァァァァァ


 その子が、今の主人であること。


_彼は私のために泣いてくれていた。

 誰かなんてとっくにアテになんかしていなかった。


_でも。

 温かい腕に抱きしめられて、熱い涙に触れて、

_この人は違う。

 ワケもなくそう思った。

 この時私は誓ったのだ。

_この人に全てを捧げると。


 商店街の破れた隙間から雨水が私に降り注ぐ、忘れもしない苦い記憶。

 私は運命の人に出逢った。


「あれ?エリィ、ソロが泣いてるよ?」


「そっとしといてやって」

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