第2話僕の恋人?A

 何、、だと?

 こんなのが主人の恋人だというのか!


「ヴヴ」

 何だこの焼けつくような気持ちは。


 私がこんなメスに妬いているというのか。


ぽんぽん


 うぅ、ちくしょーこんなことって、、

「こんなのって言わないの」

 え?


 わ、、わかるのか私の言葉が。

「ナイショだよ?」


 大変だ!

 主人ではなく、彼女の方に私の声が聞こえてしまった!?

「色々悩んでるんだね?」


 違うそこじゃない。

 撫でる場所は間違っているけど、指先から優しさは伝わってきた。


 自然と尻尾が動き始め、、


ゆら ゆら


「珍しい。僕以外にソロが尻尾を振るなんて」

 主人、、恥ずかしいから言わないでくれ。

 こ、これは、その、勝手に動いてしまうものなんだ。


「そう?じゃあこれくらいで」

 あぁやめないで!


「こんなに困ってるソロも初めてみる」

 主人が楽しいなら私は構わないが。


「ね?私フリスビー持ってきたんだけど、ソロで遊んでいいかな?」

 ん?でって言わなかったか今?


「いいよ?向こうに広い場所があるからそこでやろうか」

 主人気づこうよ?

 あぁ私はこれから遊ばれるのか。


「いっぱい遊ぼうね?」

 言葉に含みを感じるな。

「いいな。ソロ」


 羨ましがらないでくれ。

 特に嬉しくもないんだから。


「じゃあエリィも一緒にやる?」

「うん!」

 コラ仕事はどうした?尻尾を振るな主人。

「ちょっとだけ」


 私に視線の高さを合わせて主人は言ってきた。

 私にダシになれって?あぁそんなら付き合ってやるけど?

 その代わり終わったら仕事だからな。


「これでよしっと」

 おぃこらメス。私が主人と話している隙に私の尻尾に何をした。

「別に?可愛いかなぁと思って」


チリンッ


 明らかな異物の匂いがした。

 しかも先の方につけられたので自分で取ることもできない。


 まぁとりあ、、コラやめろ!

 頭にリボン。


くぅぅ


 涙目で主人を見るが主人は謝るような仕草で頭を下げてくる。


 仕方ないな。

 ひと肌脱いでやるか。


「そーれ!とってこーい!」

 投げすぎだって!

 しかも何か変化球かかってないかアレ?


ガサッ


 あ、茂み入った。

 えっと、こういう時は

「わ、わんわん」

「全部聞こえてるゾ」


 !

 すぐ行きます!

 急いで探さないと!

 どこだどこだどこにある!

「あぁエリィ、実はソロがね?」


 バカヤロウ!

 ルールくらい守れよ!?ないけど。

「そんなはずはないよ?」

 主人ナイス!


 フリスビーを咥えてトップスピード。

 私はすぐさま主人の元へ走った。

「ソロがこういうの得意そうだなんて」


ズザァァァッ!


「ソロおかえり。ほらね?」

 わ、わた、私がグチ、ってる

の、を、チクった、ワケじゃ、ないんだな?


 息が上がってまともに話ができなかった。

 すまない。もう大丈夫だ。


「そんなことするワケないでしょまだ」

_あぁコイツいずれ言うな。

 ヘッドスライディングをかました姿勢の私の耳に耳打ちする形でメスは言った。


 くそぉお前が主人のつがいじゃなければ。


「いいでしょ?別に話したって。エリィもきっと知りたがってるよ?

本当はソロがどう思ってるのか。

それとも主人には本音を晒せないの?」


 く!

 いいだろう。もっともな意見だ。

 その代わり私は主人に嫌われたらここを出ていくからな?


「大丈夫だよ?主人を信じて。私は大丈夫だと思ってるよ?」

「二人だけで何の相談?」

 わ、こっちにくるな主人!

「わ、こっちにくるな主人!だってソロが」


「え?クミちゃんソロの言葉がわかるの!?」

「うん。来てからずっと聴こえてる。主人を取られると思ってるみたい。

三人で暮らすってことは考えてないのかな?」


 あ、いやただのヤキモチですごめんなさい。


「だってさ。良かったねエリィ?私もエリィ大好きだからね?忘れないでよ?」

「あ、うん」

 顔が赤いぞ主人?

「そりゃ好きな人からこんな直接言われたら」

 だそうだ。

「なるほどね。エリィの口から聞けるまで聞かなかったことにしてあげる」


 ふふっとそれでも幼い顔を綻ばせてバレバレなのは問題ないんだろうか。


 それから三人で山の中を散歩して私が清流を飲もうとすると、

「あぁ待ってソロ。ほら」

 クミが手で掬ってくれた水を私が飲むのを見て主人が


「わん」

 人間をやめていた。

「エリィにはこっち」

 私がいるのも構わずに口移し。


ちゅちゅちゅ


 長くないか?

 おぃ少しは私の目を気にしてもらおうか。

「いいじゃん。大自然に囲まれてするの気持ち入るし」

 わかるが、いきなりすぎて対応できん。

 それは主人もみたいだぞ?


「あぁあ」

「エリィ?どした?」

「いきなりはダメだよ?」

「いきなりじゃなきゃできないでしょこんなこと?」

 もっともな意見だ。

 こういうことは勢いに任せるに限る。

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