第9話
ウサギ、ゾウ、イルカなど動物を象ったものや、白、赤、ピンク、ブルー、バイオレットなどの色とりどりのキャンドルがこの部屋に集まっている。全部で幾つあるか数えたことがないので判然としないけれど、おそらく四、五十はあると思う。でも灯りを燈したことは二度くらいしかない。
なぜかと言うと、ロウソクに灯りが燈っているうちはいいのだけれど、灯りを消したあとの黒く焦げた芯の儚さと、融け崩れて原型を留めない本体、そのみすぼらしくなった姿を見て灯りを燈したことを後悔したことがあるから。
それがあって、いまではカラーボックスの棚に飾ってあるか、整理タンスの上に並べてあるのを眺めるだけになっている。毎日朝起きてみんなの顔を見ているとなぜか元気が出てくる。少なくとも彼らが私のエネルギー源になっていることは間違いない。
私は散々黄色いキャンドルを眺め廻したあと、箱に入れたまま他のみんなとは別にドレッサーの左側にそっと置いた。そう言えば不思議なことに、これまでオレンジはあるが黄色のはひとつもなかった。亮太はそれに気づいていたのだろうか。
「ねえ、亮くん、晩ご飯何が食べたい? カレー? パスタ? 炒飯?」
「それおかしくネ。だってきょうは右花の誕生日なんだから、右花が食べたい物にすればいいじゃん」
「そうだけど、何か亮くんのために料理を造りたい気分」
「まあ、右花がそういうんなら、俺が口を挟むことないから……」
「じゃあ、もう少ししたら、スーパーに買い物に行こうか。とりあえずコーヒーでも淹れるから、待ってて」
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