考察

 今回頂いたコメントの中で非常に興味深かったのが『人間の脳は夢を見る事が出来るのだから、無意識化の映像を脳内で見る事は可能だろう』というご意見です。


 これには目から鱗が落ちました。誰もが一度くらいやけにはっきりとした、ストーリー性のある夢を見た経験があると思います。実際私は、このアンケート実施中に見ました。


 嵐の中沈んでゆく船の船長(艦これのように船そのものだったかも)と、TV電話のような通信装置で最期の会話を交わすシーンでした。『マスター、自分はベストを尽くしました。次の方にたくします』。私は『ご苦労。私は君を誇りに思うよ』と返します。


 吹き荒れる雨風の音や雷の振動、会話中の胸が熱くなる気持ちまで感じられるリアルな夢でした。


 目覚めた私は思ったのです。


『コレか? コレなのか?! 自動映像再生派の人たちは、こんな楽しいものを見ているのか!? ずっっっりぃ!!』


 もう、とんでもなく楽しかったのですよ! あの船はどこに向かい、何を成そうとしていたのか。『マスター』『次の方』、意味深な言葉の先が気になる。


 こんなものを脳内で意図的に見る事が出来るとしたら、それは創作へと向かうでしょう! アンケートで『勝手に動く派』の方が圧倒的に多いのは、そういう事なのかと、納得してしまいました。


 物語を作る人の中に『キャラが勝手に動く人』が多いのではなく『キャラが勝手に動く人』の多くが創作者になる。なるほどです。動く派の人の方が、積極的に投票やコメントを寄せて下さった事も考えられます。


 ねたそねみのたぐいの話になりますが『動く派の方々』は若干皆さんマウントを取りにくる。


『ちょっ! おま、キャラ動かないとか、どーやって小説書くの?』みたいな……ね!


 そりゃあもう、必死で資料集めて、動画や画像眺めてうんうん唸りながら描写して、キャラになり切ってセリフをひねり出して、分岐パターンを書いちゃ消し書いちゃ消しするんですよ?


『キャラが勝手に動かない人が羨ましい。設定通りに進まなくて困る』という方が結構な数おられました。本当に羨ましいですか? 本当に困ってます? その技、使わなくても小説書けますよ?


 見たもの聞いた事をただ描写するだけでは、物語を創作するとは言えないんじゃないですか?


 はい! 言葉が過ぎました。まぁ持たざる者がひがんだ上でのボヤキですよ。そのくらい言わせて下さいな。


 皆さんのコメントを読んでいて、だんだん居た堪れない気持ちになりました。異世界のお城にクラス召喚されて、みんながチートを手に入れる中、一人だけ『無能』を言い渡されたような気持ちです。失意で城を追い出されて、いつか『ざまぁ』できるんですかね?


 失意じゃねーし、出て行かねーけどなぁ!


『勝手には動かない派』の投票数が伸びなかったのは、私と同じように居た堪れない気持ちになってしまったからではないでしょうか?


 大丈夫です! 動かなくても小説は書けます! 私は今のやり方でも充分楽しんでいます。むしろそんなチート能力無しで小説を書いている自分を、高く評価しています。私の書いた文章に、意図しない展開やセリフは一切ありません。私の小説の一言一句は、全て私だけのものです。


 ああ、もう――。何言っても負け犬の遠吠え的に感じてしまうのは、書いてる私だけですか? 読んでる皆さんもそう思う? そうですよねー。だって、実際羨ましくて仕方ないです。


 自動筆記の方はまぁアレだけど、チートの異能持ちの皆さんも、取捨選択はできる訳ですよね? だったら確実に物語の幅が広がるじゃあないですか!


 訓練とか練習とかしてみようと思いました。


《明日のキャラが勝手に動くために》


『勝手に動く派』の方で、訓練法や勝手に動くようになる条件を、詳しく教えて下さった方が何人もおられました。


・好ましい相手と『自キャラ』についてたくさん話す。

→これは言葉にする事で、イメージが具体的になる事を促す感じですかね?


・TRPGを発動条件やイメージトレーニングに良いと提案して下さる方がたくさんおられました。

→私自身に全く経験がないため、イメージが湧きません。


・とにかく情報をインプットしまくる。ストーリーに関係のない、生い立ちや好きなもの嫌いなもの、毎日の日課、口癖や座右の銘。情報が多くなればなるほど、動きがダイナミックになったり、セリフに迫力が増したりする。

→『劇場の肥やしになる』と表現されていました。脳内劇場を持たない私でも、肥やしになる気がします。


・映画やアニメを見たあと、頭の中で鮮明に思い出す練習をする。そしてそれを文章に書き起こしてみる。

→それは文章を書く練習にもなりそうですね。表現力が広がりそう。


・自分のキャラと一緒に過ごす。

→これは実際にやってみて、非常に効果的だと思えたので、ご本人の承諾をもらい原文のまま記載させて頂きます。


『最初いきなり、意味なく横歩いてるとしんどいので、イメージのキーになりそうなものを。

はなまるさんのところのお子さん、知らないところにきてしまい(・_・ ) ( ・_・)とかして、知り合いであるはなまるさんを見つけて近寄ってくる。帰り方を相談してきて、一緒に帰り方を探して散歩する』


 私の現連載小説の主人公は身長13センチなので仕事に向かう道すがら、草むらから顔を出し『はなちゃん! はなちゃん! 助けて!』と声をかけられた場面を想像してみました。


 そうしたら、ブワッとその後の会話が頭に浮かんだんですよ! 『カナちゃん、どうしたの? クロマルは?』と言いながら、急いでポケットに入れました。


 キャラを物語から引っ張り出して、現実に持ち込む事が、こんなにも現実感を伴うとは思ってもみませんでした。


 もしかして、脳内にキャラが住んでいるという方は、こんな状態の発展系でしょうか? だとしたらごめんなさい。ヤバイ人だと思ってました。



 さて、そろそろこのエッセイもおしまいです。現状私の脳内には、映像自動再生装置もありませんし、劇場の建設も進んでおりません。脳内にキャラが住んでいるという自覚もなく、以前と同様に四苦八苦しながらセリフをひねり出しています。


 今回のアンケートで強く感じたのは、皆さん自分のキャラにとてつもなく大きな愛情を注ぎ、楽しんで創作されているという事。少なくとも日々11万人の方が、それぞれの物語を情熱を持って紡いでいる。びっくりしますよね。


 アンケートに投票されていない方、ツイッターをやっていない方を含めると、いったいどれくらいの数の方が、創作にたずさわっておられるのか。


 裾野が広い山は高いのでしょうか。方法や目指す場所が違っても『読んでくれる人に何かを伝えたい』。その気持ちは同じであるように思います。


 私もまだまだ人生、読んだり書いたり楽しませてもらえそうです。


 最後まで読んでくれた方、アンケートにご協力頂いた方、皆さんに私の『ありがとう』が届きますように。



▽△▽


《異能持ちのみなさまへ》


チートも異能も使えない筆者が、ただひたすらに魂を込めて書いた小説を読んでみませんか? 映像自動再生装置で、脳内劇場を見ながら書いたご自分の小説と、比べて頂きたい。そして、どこが違うのか、筆者に伝えて下さるとありがたいです。


・非日常系日常の現代ファンタジー

『私は毎日二ミリずつ小さくなっていくらしい』

→だんだん小さくなる主人公と飼い猫クロマルの日常。そして……!


・完結済み長編ファンタジー

『お父さんが異世界ではぐれた嫁を探しています』

→情緒と人情の旅物語です!



『脳内劇場』を持つ方の小説を読んでみたい方は、こちらもどうぞ! アンケート実施のきっかけとなった、豚ドンさんの時代小説です。


・血風舞う平安アクション伝奇!

『異聞平安怪奇譚』

→歴史書に載らない、日ノ本の裏に蠢く魔との闘い!


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あなたのキャラは勝手に動きますか?〜ツイッターで11万人が投票したアンケートのまとめ〜 はなまる @hanamarumaruko

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