第8話 北の森の呪われた洞窟
洞窟の中は湿っぽくて暗く、めちゃくちゃ分かれ道が多かった。
ソフィアとロアンがいなければ完全に迷子になっていたと思う。
他には大したトラップもなかった。
ロアンの魔力感知とソフィアの直感で、まるで知っている道のように次々と道を選んでいく。
何時間も枝分かれした道を来てもう帰れる気がしなくなってきたし、本当に正しい道を選んでいるのかも僕には定かではない。
「どうやらここで当たりのようだなロアン。」
「今回はほとんど迷いませんでしたね。アルバート様、暗いので足元にお気を付けください。」
ひんやりした石造りの最後の部屋には、外見は十歳くらいの女の子が
栗色の瞳と同じ色の髪。整った顔立ちだが、無表情なのが不気味に感じられる。 女の子が単調な声で話しかけてきた。
「ようこそ。あなたたちの願いを叶えましょう。不老不死とか、世界征服などは私の力が及びません。ですが、ほとんどの願いは叶えます。願いによっては、リスクもありますが、その場合、前もってお伝えします。」
おお、金銀財宝、財政再建、結婚日和、家内安全などの四字熟語が頭に浮かぶ。一つ変なのが混じったけど。
「しかし、いくつか制約があります。三人で三種類の願いをして下さい。一つ目は、自分の欲望のみを願い、二つ目は自分と他人の両方が願うことを。三つめは自分に関係のない、他人の願いを願ってください。タイムリミットは十五分です。」
えっ、一つ目は誰でもすぐ思いつくだろうけど、二つ目と、特に三つめが難しいな。
「アルバートとロアンはどんな願いを叶えたい?」
ソフィアが尋ねたので、心にホイと浮かんだ願望を口に出す。
「僕、金髪碧眼になりたいな。」
「却下だ!身体を変化させる魔法はリスクが大きすぎる。必ず大切な何かを失くすことになる。私の好みは黒目黒髪のアルバートっていう名前の、今私が首元を締めあげている目の前の男だって、何回聞けば気が済むんだ!」
珍しくソフィアが怒っている。息が苦しいが、なんだか幸せな気分だ。
「強大な魔力、最強の杖、封印されし
「……ロアンは放っておこう。」
「いいのですか、ソフィア。」
いつも理性的で僕がいつの間にか兄のように慕っていたロアンが、えらいことになっている。
「彼にはずっと世話になっている。ここでロアンの欲望を叶えてやるのもいいだろう。魔力が少ないことをずっと気に病んでいたからな。アルバートは二つ目の願いを考えて。私が三つ目の願いを考えるから。」
将来、僕とソフィアが幸せになるためには何を願ったらいいのだろう。
二人だけが幸せじゃだめだな。リチャード殿でも、ちゃんと領地を治めていたし。あ、いいのあった。
「ソフィア、決まりました。」
「もうそろそろタイムリミットだ。ロアン、自分の欲望のみを願うんだよ。では、願いを叶えてもらおう。」
「「「お願いします。」」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます