第3話
それから、学校帰りと言ってたまに立ち寄るようになり、時には仲間とともに来たりした。
友達に「この街に小説家で画家の人が住んでいると言ったら、友達が見たい、見たいとと言うの」と、私はいつの間にか小説家で画家の見せ物にされてしまった。
私の家は寂しいものでなく、華やいだ雰囲気に変わった。あるとき、彼女が頼みごとがあるという。何かと聞けば「2階で間借りしたい」というのである。
確かに2階は使っていない。彼女の「もったいない」もわかる。でも、予想もしていなかったことだし、老いたるとはいえ、私も男性である。若い娘とひとつ屋根の下。やっぱり考えてしまう。
「すいません。突然こんなお願いして。そろそろ卒論にかからねばならないんです。それには今やっているアルバイトをやめねばならないのです。そうしたら、今の家賃は高過ぎて、3万円なら払えます。無理ですよねェ」
ああー、勉学を出されたら仕方がない。私も学生時代卒論で苦労した。家が農家なら早々無理も言えないのかも知れない。娘の性格はわかっているし、卒業までの1年弱である。私の人格さえしっかりしていればいいのだ。「いいでしょう」と許可をした。
「わー、嬉しぃー。前栽の見えるあの部屋ならいい卒論書けそう」と彼女は喜んだ。連休明けに彼女は越してきた。下の名前を紀子と言った。
若い娘が家に住み、出入りを始めた。ご近所から、「娘さんですか、綺麗な方ですね」と言われた。間借り人ですとも言えず、「ええー、まー」と曖昧な返事を返しておいた。実際、彼女は半端でなかった。顔が綺麗なだけではなかった。そのプロポーションも素晴らしかった。友人によると学校でもずば抜けて目立つという。
「じゃー、持てるでしょう」と聞くと、それがそうでもないという。その友人が言うのには
「あの天然のままの性格でしょう。それって、男性にとっては色気が足りないんでしょうね。付き合ってもすぐ壊れているみたい。もっともあの見かけでしょう、かえって声をかけづらいみたいですよ。私みたいに程々がいいみたい」であった。わからぬではない。
そして、一つ家での生活が始まった。家賃は彼女の言った金額。別に不動産業ではない。細かい取り決めなし、契約書もなしであった。これが間違った。一緒に住めばやはり問題が出てくる。
一つ、入浴後にパンツ一つ、手ブラで廊下を歩く
一つ、洗濯しょうと洗濯機を見ると下着が入っている。
一つ、食事は一緒にしようとなったが、あとの洗い物をしない。
これらは、一つずつ話し合って解決した。悪気はない。家にいたままなのである。まるで私を親爺か、祖父のように思っているのである。
感心するところは、家でもそうしていたのであろう。仏壇に毎日お参りするのであった。花を枯らして気づかなかったら、花を買ってきて差し替えてくれているのである。花代は取らなかった。
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