一緒に住みませんか?
夏の暑さはすっかりと影を潜め秋の風が吹く頃。
私とロクくんが恋人同士になってから2回目の冬がやってくる。
高校生だったロクくんも来年の今頃には立派な大学生になっていることだろう。
隣を歩くロクくんをチラッと見て私はそんなことを思う。
「どうかしましたか?」
「ううん、何でもないよ」
「そうですか」
付き合いだした頃から変わらない丁寧な口調。
それもそれでロクくんらしいといえばらしいのだろう。
晩御飯の買い物を済ませて部屋へと帰る。
そうそう、ちょっと変わったことと言えば、私がロクくんの部屋に転がり込んだんだ。
すっかり毎日のようにロクくんのところに来ていたのでいっそのこと一緒に住みたいなぁって言うと意外にもあっさりとオッケーが出た。
どうせなら広い私の部屋にって言ったんだけど、ロクくん的にはこのくらいの広さがいいらしくそこは却下されたので私がこっちに来ることになった。
うん、所謂同棲ってやつだ。
同棲だよ?同棲。
大事なことだから3回言っとく。
お互い学校が終わってから待ち合わせをして買い物をしたり、たまに外食をしたり……一緒に同じ部屋に帰ってご飯を食べてお風呂に入り、夜はロクくんに愛してもらう。
やばいよね、幸せすぎてどうにかなりそう。
「ね?ロクくん、どうかなこの新作?」
「いいんじゃないですか?それなりに」
「く……相変わらずの適当な返事」
「もう見慣れましたからね、今更ですよ。今更」
「もうハダカエプロンでもいいんじゃないかな……」
「それだと新作の出番がなくないですか?」
「……それもそうね」
我ながらおバカな会話をしていると思いつつもこうして戯れている時が本当に大事に思う。
しかし……本当に全く動じなくなったよね?
う〜ん、もっと際どいやつの方がいいのかな。
こう、ぐわっとくるような……
で、ムラムラっとしたロクくんに襲われたりなんかして……ぐふふふ。
「先生?せんせ〜?戻って来てください」
嫌よ嫌よも好きのうちって言われて、いやいやする私を無理矢理……
手とか縛られたりして?
ぐふっ!は、鼻血でそう。
「……先生!」
「え?ん?はっ!私は何を….…?」
「あのですね、先生は僕を何だと思ってるんです?襲ったりしませんし、縛りもしませんから」
「……口に出てた?」
「はい、最初から最後まで全部」
えっと……ね?
いやいや、そんな目で見ないでぇ〜!
「全く先生の頭の中はいつもお花畑ですね」
「だってぇ〜」
「だってぇ〜じゃないですよ、部屋だからいいですけど外でもたまにトリップしてるんですから気をつけてくださいよ」
「あれ?外でも?」
「はい」
うぐわっ!そ、それはマズイ、非常にマズイ。
往来の真ん中でそんなことになったら通報ものじゃないかっ!
「反省します……」
「反省してください」
「はい……」
そう言ってロクくんの顔が近づいてきて……
「ん……」
恋人同士の営みという暫しの休憩の後、いつも通り下着エプロンで晩御飯の支度をしている私。
ソファに座りゲームの画面をしているロクくん。
「晩御飯遅くなっちゃったね」
「先生が離してくれないからじゃないですか」
「ええ〜っだって……」
普通ラウンドは第3ラウンドまであるよね?
「そう言えばそろそろ受験の合格発表なんじゃないの?」
テーブルに晩御飯を置きつつ尋ねてみる。
「合格発表ですか?それならもうありましたよ」
「は?」
「ですから発表、もう終わりました」
「え?ちょ、ちょっと?終わったの?発表?合格?」
「はい、問題なく」
おいおい、それって結構重要案件じゃありませんこと?
今サラッと流したよね?普通はこう、合格発表見に行ってきゃーって盛り上がったりするんじゃないの?
「えっと?合格おめでとう?」
「ありがとうございます」
…………
大学の合格発表ってこんなあっさりしたものなの?
いやいや、ロクくんがちょっとズレてるんだよね、多分。
推薦だったし特に落ちそうな感もなかったらしく、いつもの3人でそれぞれの発表を見に行って見事に全員合格していたらしい。
因みに会長さんは彼氏である檜山君と同じ大学に、ナナミンはモデルさんになるそうだ。
「言ってくれたら一緒に見に行ったのに〜」
「そうは言っても先生も学校があるじゃないですか、平日でしたし」
「学校よりロクくんだよっ!」
「教師の言葉とは思えませんね」
「彼氏の晴れ舞台を一緒に見に行くのは彼女の特権なんだよ〜」
「そうですか、申し訳なかったです」
素直に謝るロクくん。
仕方ないといえば仕方ないんだけど、何かハブかれた感があってちょっと残念。
「じゃあ、先生。今度の休みに少し付き合ってくれませんか?」
「うん?いいけど何?」
デートのお誘いかな?
そういえば最近忙しくてあんまり遊びに行ってないもんなぁ……
冬休みになったらどこかゆっくりと旅行でも出来たらいいんだけど。
「まだちょっと先ですが住む所を探しときたいんですよ。流石にここから通うのは遠いですから」
「あ、そっか、言ってたよね。向こうに引っ越し考えてるって」
「はい、どうせなら一緒に見に行きませんか?まぁ、その……一緒に住むかもしれませんし」
あまり照れたりしないロクくんが少し照れくさそうに私を見つめて言う。
……ある意味プロポーズよね?
これって。
「うん、行こう!一緒に見に!私も何とかしてロクくんの大学の近くに転勤してみせるから!」
「そんなんで転勤出来るものなんですか?」
「さあ?多分いけるんじゃない?」
「また適当な……」
こうして次のおやすみに2人で部屋を見に出かけることになった。
お互いに収入もそれなりにあるし、ある程度の広さがある部屋がいいなぁ。
ワンルームで2人は狭いし荷物が置けないからね。
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